齋藤薫のエクエルダイアリー

Vol.02イタリア貴族の邸宅に
信じられないほどの価格で泊まる。
それも旅ならではの感動体験!

人間は、どんなことにもすぐに慣れる生き物である。楽しいことにも、辛いことにも。
それを痛感させられるのが、じつは旅……。
旅をしていて特に思うのは、人間は感動にもすぐ慣れてしまうということ。
それも旅はなんといっても、自分を感動させるためのもの。感動がなければ意味がないと言ってもいいくらい。しかしそこが問題で、感動というものは今までに経験したことがない素晴らしさに出会うからこそ生まれる感情。すぐにいろんなものに慣れてしまう人間は、だからなかなか厄介なのだ。
もちろん、癒しも1つの旅の醍醐味。だから毎シーズン同じ場所に行って、同じホテルに泊まって、それで心が落ち着き芯から癒される、それこそが感動だという人はそれで良い。しかし常に新鮮な感動を求めるならば、常に違うところに出かけていくしかない。何らかの驚きがなければ、心が動かないというタイプの人もいるはずなのだ。
ちなみに私は、まさしくそっちのタイプ。一度行った場所にはあまり興味が湧かず、毎回新しい刺激を求めてしまう厄介な生き物なのである。

ただ、サプライズ的に感動を与えてくれる場所は世界に無限にあると言って良い。何回人生があっても、到底回り切れないくらい。しかし問題はホテルである。素敵なホテルに泊まるのももちろん旅の醍醐味の1つ。ただ、これがまた厄介で、ホテルそのものにどんどん慣れてしまうということに気づいてから、もう久しい。部屋に入った途端、わーっと歓声を上げてしまうケースがだんだん減ってくることに気づいたのだ。
いかにゴージャスなホテルにも、いかに美しいホテルにも、またいかに広いホテルにも、どんどん慣れてしまうことはあって、そこが問題なのである。

いや厳密に言えば、ホテルという形式自体に飽きているといっても良い。内装のスタイルは金額にかかわらず、グローバルスタンダードにも匹敵するくらい大体決まっていて、当然のことながらベッドがあって、ソファーがあって、後は水回り、違いはテラスのあるなし、ダイニングテーブルのあるなし、広さ、眺望、でもそれ以外はなんとなく一緒。だからもっともっとと、新しい刺激を求めていってもそこにはやはり限界があるのだ。

そんな中で出会ったのが、アパートメントホテル。といっても、例えばイタリアなどでは、いわゆる貴族の邸宅がアパートメントホテルとして貸し出されていて、それが、今時はとんでもなく高騰している"ちょっと名のあるホテル"の狭〜い部屋の、半額くらいの価格で泊まれたりするのである。

実際泊まったことがあるローマの邸宅ホテルは1泊¥50,000台なのに、何部屋もあり、広さも140平米を超えるほど。リビングルームには暖炉があり、ダイニングルームが別にあり、広々ベッドルームに書斎、キッチン。そして何よりも、まるで美術館に泊まってるような素晴らしい調度品に、高い天井、19世紀の重厚なインテリア。当たり前だが全て本物! まるでルキノ・ヴィスコンティの世界に入り込んだように貴族性が満載で、見事にタイムスリップできて感動以上のものを感じたのだ。

同じくイタリアのフィレンツェで泊まった邸宅ホテルも、部屋は美術館、天井が10メートル以上あり、最初の夜は興奮して眠れなかった。そして噴水のある広い中庭付き。そんな邸宅がとても便利な街中にあるのだ。

これだけで独立した1つの旅をしたような、満足感と充実感、そこで過ごす一瞬一瞬に感動があった。実際にそこで人が生き、想像を絶するようなドラマチックな人生を営んでいたわけで、そうしたものを感じながら何泊かを過ごす感動を、どうか想像してみて欲しい。
海外から日本に来る観光客も、より和風な日本家屋に泊まりたいと望んでいることから和風モダンな高級旅館が増えているように、やはり宿泊でもその国のリアルな歴史に触れるような設えの中に身を置きたいと思うものなのだ。だから、それも1つの新しい体験であり、新鮮な感動の手段として、宿探しに心を尽くしてみて欲しい。

今や円安の影響で日本からの海外旅行客が極端に減っている。確かに海外のホテルの価格はびっくりするほどだけれど、まだまだそうした抜け道でありながらも、想定外の感動をもたらしてくれる宿もあることを知って欲しい。宿泊でも感動ができる、そんな旅もあることを知って欲しいのだ。
常に新しい体験をすることは、重要なアンチエイジング。だからこそ、どんな時間も無駄にせず、驚くような新しい体験に浸って欲しい。驚き感動するほどに、人は細胞を生き生きさせるのは間違いないのだから。

美容ジャーナリスト/エッセイスト
齋藤薫

女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『Yahoo!ニュースエキスパート』でコラムを執筆中。『大人の女よ!清潔感を纏いなさい』(集英社文庫)他、『年齢革命 閉経からが人生だ!』(文藝春秋刊)など著書多数。

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