コラム 暮らしを彩るワンポイント人工知能(AI)研究者・黒川伊保子さんの
女の人生のトリセツ

第3回 
「デキる女」のレベル3

普段の暮らしの中で、つい、トゲトゲした会話をしてしまっていませんか? 相手に「愛しいひと」と思われるひとはここが違います。

あなたのレベルは?

コミュニケーションの成熟度には3段階ある。
自分の気持ちを垂れ流す「子どもレベル」、自分の事情を言い募る 「まだまだ青いレベル」、相手の事情や気持ちを慮る「大人レベル」である。
たとえば、家族に小言を言われて、「うるさいなぁ」「ムカつく」「……」は子どもレベル、「言われなくても、わかってる」「○○だから仕方ない」「後でやろうと思ってたのに」は青いレベル、「心配かけてごめん」「嫌な思いをさせたね」「気がつかなくて悪かった」が言えて初めて大人レベルである。
何かが思い通りに行かなかったとき、「ひどい」「傷ついた」は子どもレベル、「してくれるって言ったよね!?」「だから言ったじゃないの」は青いレベル。「あなたも忙しかったから」「私も○○してあげればよかった」は大人レベル。
――あなたは、大切なひとと、どのレベルで話していますか?
女性のレベル1はカワイイけれど、ときにはレベル3を使うべきである。プライベートなら「かけがえない愛しいひと」と思われ、職場なら「デキる女」と言われる。
大人になったつもりで、レベル2に行っちゃう女性が多いけれど、女性にレベル2は得策じゃない。レベル2は、男子がよくするダメ手段。可愛くもなければ、デキる印象も残せない。 

韓流ドラマの秘密

最近、韓流ドラマを観ていて、気づいたことがある。韓流ドラマのレベル3比率はうんと高い。
たとえば、男性に、女性に言えない秘密があって、それが露呈したとき。女性は「ひどい」となじったのち、「あなたもつらかったでしょう」と、男性のために泣いてやるのだ。
母親が、息子の恋人に「別れてほしい」と頼みに行って、息子は命を懸けてもいいほどの恋人を失ったのに、それが露呈したとき、彼は1ミリも腹を立てずに、母の心情を思って、ことばを紡ぐのである。母さんにそんなつらい思いをさせたのが悲しい、と。
どちらも、間違いなくその瞬間、「かけがえのない愛しさ」を感じさせている。相手のみならず、視聴者にまで。
韓流ドラマは、レベル1(感情のぶつけ合い)がうんと強烈で、レベル2(事情の確認)がなく、いきなりレベル3で着地する、ジェットコースター脚本(微笑)。これこそが、日本のみならず欧米でも視聴率をぐんぐん伸ばしている韓流の強さだと私は思う。
一方、日本のドラマに登場する会話は、レベル2で着地するセリフがほとんど。大丈夫か、日本の家族。
第3回 「デキる女」のレベル3/人工知能(AI)研究者・黒川伊保子さんの【女の人生のトリセツ】
イラスト・いいあい

息子との会話にヒントあり

というわけで、私は、男女脳差理解セミナーの度に「相手の気持ちをことばにしよう」キャンペーンを、ずっとやっているのだが、「そんな、歯の浮くようなセリフは言えない」と言う男子がけっこう多い。
それは、たぶん、日本の母たちが、息子と大人レベルの会話をしないからじゃないだろうか。
たとえば、保育園のお迎えに遅れてしまったとき。「今日は、早く帰るって言ったじゃない」となじる幼子に、母たちは、なんて言って答えるのだろう。「あ~、ごめんごめん」と言って黙らせたり、「お母さんは忙しいのよ」とぴしゃっと言ったりするのでは?
私は、こういうとき、「心細かったよね。心配させてごめん」と言って、息子を抱きしめていた。だって、母をなじる子どもは、きっととても心細くて、傷ついているから。
こうして育てているうちに、子どもも自然に「相手の気持ち」をことばにするようになる。脳は、入力されたとおりに、出力してくる。コミュニケーションの手法については特にそうだ。
息子は、中学3年生のとき、大事な受験書類を失くして愕然とする私に、目くじらを立てることもなく、「あ~、あの朝、ハハ(彼は私をこう呼ぶ)は、出張前でバタバタしていたよね。もっと落ち着いたときに渡してあげればよかった」と言ってくれたのである。

愛される人の会話術

男性と女性がどちらもレベル3で会話をすると、「悲しい思いをさせてごめん」「あなたもつらかったでしょう」のようになる。「ひどい」「しかたないだろ」(レベル1に2で返す)に比べて、どんなにかけがえがなく、愛しいか。並べてみれば、明らかなはず。
仕事でも、自分のしたことにダメ出しされて、「そうすればよかったんですね。気が利かなくてすみません」と言えたら、超カッコイイ。ムカついた顔(レベル1)で「すみません」なんて謝ったり、「だって、○○って言ったじゃないですか」(レベル2)と自分の事情を言い募ったりしている同僚を(いや、先輩までも)軽やかに追い越して、出世できる。
人生最強の「魔法の杖」、レベル3を使える女性になろう。
黒川伊保子
黒川伊保子(くろかわ・いほこ)さん
脳科学・人工知能(AI)研究者の黒川伊保子さんが、女性がトクするコミュニケーションアップ術を紹介します。
脳科学・人工知能(AI)研究者。株式会社感性リサーチ代表取締役社長。感性アナリスト。随筆家。奈良女子大学理学部物理学科を卒業後、コンピューターメーカーで人工知能エンジニアとなり、ことばの潜在脳効果の数値化に成功。感性分析の第一人者として、さまざまな業界で新商品名の分析を行った。また、男女の脳の「とっさの使い方」の違いを発見し、その研究結果をもとに著した『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(講談社+α新書)はベストセラーに。新刊『息子のトリセツ』(扶桑社新書)、『家族のトリセツ』(NHK出版新書)、『娘のトリセツ』(小学館新書)も話題。
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