第1回
「花の国」の秋の森でベリーやきのこを楽しむ
9月のフィンランドは収穫の季節。仲間や家族と森に入り、ベリーやきのこを摘み、おいしく食べ、自然の恵みに感謝します。やがて来る厳しい冬に向けて、家族みんなで蓄えを作り、冬支度をすることで、絆はより深まっていきます。
秋の楽しみはベリー摘み
北欧フィンランドは、花の国でもあり、森の国でもあります。9月。初秋の森では、日の沈まない真夏の白夜(6月~8月)の太陽の光をさんさんと浴びて、ビタミンたっぷりに完熟したブルーベリー、リンゴンベリー、ラズベリー、ワイルドストロベリーがいっぱい実をつけます。私はこの時期になると、ワクワクしながら森に入って、甘酸っぱいベリーをほおばりながらベリー摘みをしたものでした。ぷっくりとふくらんだ赤い実は、ブーケやフラワーアレンジメントを彩る華やかな花材にもなるのです。
甘いものが大好きなフィンランド人にとって、ベリーのケーキは秋の楽しみ。ケーキに見立てたフラワーアレンジメントにもベリーをたっぷり彩る。
専門家と歩くきのこ狩り
フィンランドには、自然はみんなのものという独自の法律「大自然享受権」が定められていて、だれでも自由に森の中の恵みを楽しむことができます。ベリー以外には、きのこ狩りも楽しみのひとつでした。白樺の樹皮で編んだ手作りのバスケットを持って森の中へ。澄んだおいしい空気にそよぐ風、森林の癒しの香りに包まれながら歩くのです。かわいい姿で育っている毒キノコや、食用と見分けがつかないきのこもたくさんあるので、きのこ狩りは必ずきのこ専門家と一緒に行きます。
カンタレッリ(あんずたけ)をかごいっぱいに。料理を考えるのも楽しい。
採れたてはタルトやパイ、サラダに
収穫したベリーやキノコは、タルトやパイにふんだんに入れてオーブンで焼いたり、ソテーやサラダに入れて、仲間や家族とおいしくいただきます。ほかにも、フレッシュのハーブを摘んでハーブティーを楽しむなど、オーガニックの天然素材から作る料理はヘルシーで贅沢。私のいちばんのお気に入りは、ブルーベリーやラズベリー、イチゴ、スグリがたっぷり入った、甘酸っぱくて温かいホットベリーのスープ。口の中でそれぞれのベリーの甘さと酸っぱさが混ざりあって、何とも言えない幸せを感じる瞬間です。
バケツいっぱいに収穫したコケモモは、甘く煮詰めて保存。
冬に備えた保存食づくり
20年近く前のことになりますが、10月に出産を控えていた私は、9月には産休に入り、湖畔のサマーコテージに移っていました。窓辺につるされた真っ赤なゼラニュームの花や、生垣に大きく伸びて絡みついた紫のクレマチスの花を眺めながら、ハーブティーを飲む。産まれてくる子を楽しみにゆったりとしたときを過ごしていました。
実は9月、10月は、フィンランドの人達は大忙しの時期。長い冬に備えて収穫した自然の恵をドライにしたり、冷凍したり、ジャムにしたり……。大きなお庭を持っているおうちには、ヒメリンゴ、洋ナシ、グーズベリー、スグリ、ブラックカレントなど、たくさんの果樹やベリーがあります。お肉料理にはかかせないリンゴンベリーはジャムに。庭で採れたリンゴはジュースにしてくれるお店に持ち込み瓶詰にしてもらったり、子どもたちと一緒にアップルパイを焼くなど、家族で忙しくも楽しい毎日を送ります。森の恵みは、フィンランド人の生活を豊かにしてくれる自然からの贈り物なのです。
実は9月、10月は、フィンランドの人達は大忙しの時期。長い冬に備えて収穫した自然の恵をドライにしたり、冷凍したり、ジャムにしたり……。大きなお庭を持っているおうちには、ヒメリンゴ、洋ナシ、グーズベリー、スグリ、ブラックカレントなど、たくさんの果樹やベリーがあります。お肉料理にはかかせないリンゴンベリーはジャムに。庭で採れたリンゴはジュースにしてくれるお店に持ち込み瓶詰にしてもらったり、子どもたちと一緒にアップルパイを焼くなど、家族で忙しくも楽しい毎日を送ります。森の恵みは、フィンランド人の生活を豊かにしてくれる自然からの贈り物なのです。
完全無農薬、自家製のりんごは子どもたちも大好き。
ヘンティネン・クミ(へんてぃねん・くみ)さん
北欧デザイン発祥の地・フィンランドでフラワーデザイナーとして活躍してきたヘンティネン・クミさん。自然を何よりも大切にするフィンランド人から学んだ暮らしの知恵は、忙しく生きる私たちの心に安らぎを与えてくれると言います。
北欧フラワーデザイナー。13歳より池坊生花を学び、国内大手百貨店内のフラワーショップに10年間勤務。イギリス、オランダへ花留学したのち、1998年からフィンランドへ。北欧フラワーデザインのパイオニアであるヨウニ・セッパネン氏の専属アシスタントを務めながら、フィンランド国立KEMPELE花卉園芸学校マスターフローリスト科を卒業。ヘルシンキ市内でフラワーショップとスクールを経営後、2007年に帰国。東京・新御徒町の「LINOKA Kukka」を拠点に北欧フラワーデザインの普及に尽力している。著書に『森の植物が教えてくれた 北欧フィンランドのフラワーデザイン』(六耀社)がある。