プレコンセプションケアにおける栄養
PRECONCEPTION CARE
プレコンセプション期においても、「食事や栄養」はとても大切なテーマです。
適切な栄養摂取は、今の心身の健康を保つだけでなく、妊娠と出産のリスクを減らし、未来の赤ちゃんの発育にも大きな影響を与えます。
監修
産科婦人科舘出張 佐藤病院
院長 佐藤 雄一 先生
プレコン期の栄養状態について気をつけること
バランスの良い食事の摂取
まずは、主食、主菜、副菜を取り入れて、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。また1日3食、しっかりとることも心がけましょう。現在、日本では若い女性の中に「低栄養」の状態にある人が多く、葉酸、鉄、カルシウム、ビタミンD、タンパク質などの不足しやすい栄養素を特に意識的に摂る必要があります。

不足しがちな栄養素の摂取
特に女性が不足しがちな栄養素として下記のようなものがあります。
食事から十分な栄養が摂れない時には、栄養補助食品やサプリメントなどを活用して栄養バランスを整えましょう。



葉酸の摂取
葉酸は水溶性ビタミンであるビタミンB群の一種で、赤血球の形成やDNA合成に関わるため、男女とも全ての世代の人にとって必要な栄養素です。特に妊娠初期に葉酸が不足していると、赤ちゃんの先天異常である神経管閉鎖障害のリスクが上がることがわかっています。私たちは自身で葉酸を合成できないため、適切な摂取が重要です。

●葉酸の摂取する時期/量/方法
葉酸は、普段から必要な大切な栄養素ですが、赤ちゃんの神経管形成に必要な成分であり、妊娠が進むと赤血球を作るためにも必要となります。そのため、必要な時期に適切な量を適切な方法で摂取することが重要です。



赤ちゃんの神経管は妊娠初期に形成されます。そのため、必要な濃度を保つには、少なくとも妊娠1カ月前から摂取を始めることが推奨されています。

18歳以上の男女における葉酸の一日の摂取の推奨量は240㎍とされていますが、妊娠計画中から妊娠初期には、サプリメントなどで400μgを追加摂取することで、合計一日640μgの摂取が推奨されています。

葉酸は食事だけでは推奨量を補うことが難しく、また食品由来の葉酸は吸収率が低い事や加熱調理で失われやすいことから、食事に加えて、栄養補助食品、サプリメントなどからも摂取することが推奨されています。
※神経管閉鎖障害の原因は葉酸の不足のみではなく、複合的なものです。葉酸のサプリメントや強化した食品の利用だけで発症予防ができるものではなく、また記載量を摂取すれば必ず予防ができるというわけではありません。
体重管理
日本においては成人女性の10人に1人、20代女性に限ると5人に1人が「やせ」という状況が続いています。また肥満の方も減っていません。
「やせ」と「肥満」の指標として、BMI(Body Mass Index)という指標が国際的に使用されており、18.5以上25未満が標準の範囲とされています。

「やせ」や「肥満」は自身の病気のリスクだけでなく、不妊や妊娠・出産のリスク、赤ちゃんの健康にも関連しているため、適正体重の維持、体型管理はとても重要です。


体重・体型・栄養管理のポイント
日ごろからバランスの良い食事と適度な運動を心がけ、筋肉量を増やして、健康的な体型を維持しましょう。

- ⚫︎健康的な高カロリー食品を摂取しましょう。栄養価の高いアボカドやナッツ、チーズなどの食品や栄養補助食品なども活用しましょう。
- ⚫︎1日3食だけではなく、補食も取り入れることでカロリー摂取量を増やします。
- ⚫︎筋肉を増やすためには、肉、魚、豆製品などのタンパク質が必要です。
- ⚫︎筋肉を増やすためには、適度な運動も重要です。
- ⚫︎代謝を良くするためには、タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルなど5大栄養素をバランスよく摂ることが大切です。
- ⚫︎1回の食事量を少なめにし、小さな食事を頻繁に、よく噛んで摂ることで満腹感を得やすくします。
- ⚫︎食物繊維が豊富な野菜をたくさん摂ることで、満腹感を得やすくなります。
- ⚫︎汗をかく程度の運動や、日常生活での活動量を増やすことも重要です。散歩やジョギング、階段の使用などを心掛けましょう。
- ⚫︎筋肉をつけることで基礎代謝が上がります。簡単な体操やスクワットから始めましょう。
- ⚫︎時間があるときに一度に多めに料理を作り、冷蔵や冷凍保存しておくと、忙しい日でも手軽に栄養バランスの良い食事を摂取できます。
- ⚫︎朝が特に忙しい場合は、野菜やフルーツのスムージーで栄養補給をするのも良いでしょう。また、食事から十分な栄養が摂れない場合は、栄養補助食品やサプリメントの利用も一つの方法です。
- ⚫︎補食を摂る際には栄養バランスの良いものや、低GI食品などを活用しましょう。
プレコンセプションにおけるバランスの良い朝食の重要性
忙しい毎日の中、朝食を抜いている若い世代が増えています。
朝食は栄養バランスを整えるだけでなく、脳の活性化、代謝の促進、体温上昇、自律神経の調整などさまざまな役割があります。また、体型管理においてもとても重要であり、朝食を抜くことはやせの原因にも肥満の原因にもなります。
1日3食からバランスよく栄養を摂ることが大切ですが、健康管理を始める1歩として、朝食べる習慣が無い方は、まずは毎朝、手軽に何かを口に入れる、ということで習慣づけをしていくことから始められると良いでしょう。

産科婦人科 舘出張 佐藤病院
院長 佐藤 雄一 先生