住友ファーマ株式会社
大塚製薬株式会社

医療関連事業
2023年7月31日

ulotarontの統合失調症を対象とした
フェーズ3試験(DIAMOND 1試験およびDIAMOND 2試験)の
解析結果の速報について

 住友ファーマ株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:野村 博、以下「住友ファーマ」)および大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:井上 眞、以下「大塚製薬」)は、セロトニン5-HT1Aアゴニスト活性を持つTAAR1(微量アミン関連受容体1)アゴニストであるulotaront(一般名、開発コード:SEP-363856、以下「本剤」)の急性期の統合失調症患者を対象とした、本剤1日1回投与による有効性、安全性および忍容性を評価することを目的としたフェーズ3試験(DIAMOND:Developing Innovative Approaches for Mental Disorders 1試験およびDIAMOND 2試験)において、いずれの試験においても主要評価項目を達成しなかったという解析結果の速報を得ましたので、お知らせします。

 DIAMOND 1試験は、急性期の統合失調症患者435名を対象とした、多施設共同、プラセボ対照、ランダム化、二重盲検比較試験であり、本剤50mg/日、本剤75mg/日を、6週間投与した際の本剤のプラセボ投与群に対する有効性、安全性および忍容性を評価しました。

 DIAMOND 1試験の結果、主要評価項目である投与6週間後の陽性・陰性症状評価尺度(PANSS:Positive and Negative Syndrome Scale)合計スコアのベースラインからの変化量において、いずれの投与群においてもPANSS合計スコアの減少が示され、プラセボ投与群-19.3に対し、本剤50mg/日投与群および本剤75mg/日投与群はそれぞれ-16.9、-19.6でした。

 DIAMOND 2試験は、急性期の統合失調症患者464名を対象とした、多施設共同、プラセボ対照、ランダム化、二重盲検比較試験であり、本剤75mg/日、本剤100mg/日を、6週間投与した際の本剤のプラセボ投与群に対する有効性、安全性および忍容性を評価しました。

 DIAMOND 2試験の結果、主要評価項目である投与6週間後のPANSS合計スコアのベースラインからの変化量において、プラセボ投与群-14.3に対し、本剤75mg/日投与群および本剤100mg/日投与群はそれぞれ-16.4、-18.1であり、数値的には減少を示しました。

 DIAMOND 1試験およびDIAMOND 2試験のいずれにおいても、プラセボ投与群で大きな改善が観察され、本剤の有効性をマスクした可能性があります。

 安全性に関しては、両試験において、総じて良好な安全性と忍容性が示されました。

 住友ファーマの代表取締役社長である野村 博は、次のように述べています。「私たちは、高いプラセボ効果が、画期的な本剤の治療効果をマスクしている可能性があると考えています。DIAMOND 1試験およびDIAMOND 2試験で観察されたような高いプラセボ効果は、精神疾患の臨床試験では多く報告されていますが、特にDIAMOND 1試験におけるプラセボ効果は極めて高いものでした。両試験は、COVID-19パンデミックの期間中に実施されましたが、初期分析では、両試験で観察されたプラセボ効果に関しCOVID-19の影響が示唆されています。本剤の共同開発を実施している大塚製薬とともに次のステップを決定するために更に詳細なデータ解析を続けており、これらの結果を踏まえて今後の進め方についてFDAと協議する予定です」

 大塚製薬の代表取締役社長である井上 眞は、次のように述べています。「ulotarontは統合失調症の治療における新たな治療選択肢として、患者さんやご家族、医療関係者のアンメットニーズを解決する可能性を持っています。今回の結果を踏まえて、引き続き住友ファーマと緊密に連携しながら本剤のあらゆる可能性を検討するとともに、精神神経領域における提携開発品目の開発を通じて世界中で精神疾患に苦しむ患者さんや医療者に貢献できるよう協力していきます」

※ 陽性・陰性症状評価尺度(PANSS):主として統合失調症の精神状態を全般的に把握することを目的とした評価尺度です。陽性尺度7項目、陰性尺度7項目、総合精神病理尺度16項目の合計30項目で構成され、各項目は1(症状なし)から7(最重度)までの7段階で評価されます。

(ご参考)

Ulotarontについて

Ulotarontは、セロトニン5-HT1Aアゴニスト活性を持つTAAR1(微量アミン関連受容体1)アゴニストです。現在、統合失調症(日本および中国ではDIAMOND 5試験)、大うつ病補助療法(aMDD)および全般不安症(GAD)を対象として開発中であり、その他の適応症についても検討中です。

本剤は、2019 年5 月に統合失調症の適応で米国食品医薬品局(FDA)からブレイクスルーセラピー指定を受けています。本剤は、統合失調症患者さんを対象にフェーズ3試験を実施している初めてかつ唯一のTAAR1アゴニストです。

また、aMDDおよびGADを対象としたフェーズ2/3試験も実施中であり、これらを対象とした臨床試験はTAAR1アゴニストとしては初めてとなります。

住友ファーマおよびその米国子会社であるSumitomo Pharma America社ならびに大塚製薬は、本剤の共同開発・販売に関する提携契約を締結しています。Sumitomo Pharma America社は、in vivo表現型SmartCube®プラットフォームと関連する人工知能(AI)アルゴリズムを使用して、PsychoGenics社と共同で本剤を創製しました。

Trace Amine-Associated Receptor 1 (TAAR1)について

微量アミン関連受容体 1 (TAAR1) は、中枢神経系および末梢に位置するGタンパク質共役受容体です。TAAR1は、TAARファミリーの中で最初に発見された受容体であり、精神疾患に関係する脳の領域やエネルギー代謝を調節する組織において顕著に発現しています。 TAAR1 はドパミン、セロトニン、グルタミン酸のシグナル伝達に影響を与えることが示されており、統合失調症やその他の精神疾患に関連する報酬情報処理、認知、気分を調節する可能性があります。

統合失調症について

統合失調症は、世界中で2,400 万人以上、米国では200万人以上の方々が罹患している、慢性的で重症化しやすい精神疾患です1、2。 幻覚、妄想、思考障害などの陽性症状、感情の平板化、社会的引きこもり、自発性低下などの陰性症状、記憶力、注意力、実行能力の低下などの認知機能障害が知られています3

出典:

  1. 1.Schizophrenia and Psychosis Action Alliance. Societal Costs of Schizophrenia & Related Disorders. Schizophrenia & Psychosis Action Alliance; 2021. Accessed June 10, 2022. https://sczaction.org/insight-initiative/societal-costs/
  2. 2.GBD 2019 Mental Disorders Collaborators. Global, regional, and national burden of 12 mental disorders in 204 countries and territories, 1990-2019: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2019. Lancet Psychiatry. 2022;9(2):137-150. doi:10.1016/S2215-0366(21)00395-3
  3. 3.Rutigliano G, Accorroni A, Zucchi R. The case for TAAR1 as a modulator of central nervous system function. Front Pharmacol. 2018;8. Accessed October 4, 2022. https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphar.2017.00987