合わない靴を履いて歩くほど辛いことはない。そういう意味で、良い靴と出会うことは、人生をより良いものにする隠れた決め手であると言った人がいるけれど、これまさに1つの真理。
ところが、自分の足に合った靴に出会うのは至難の業。これまで1度もぴったり合った靴に出会ったことがないという声も多々。シンデレラの一足に出会えない、それは女性たちの潜在的な悩みの1つとなっているのだ。
もちろん、体のため、足のためにはフラットシューズ、とりわけスニーカーが良いに決まっている。世にもストレスのないこの靴が1つのモードにもなったからこそ、今は完全にスニーカーの時代。スニーカーをいかにセンス良く取り入れるかはファッションにおける究極のテーマにもなっている。
ただスニーカーのコーディネートにもタブーはあって、確かにフェミニンな服にスニーカーを合わせるのは1つの粋なお洒落だけれども、スカートやワンピースにスニーカーを合わせる場合、ふくらはぎが隠れる位のスカート丈がないと、スニーカーが浮いてしまうという指摘もあったりする。今くるぶしまでのロングスカートがトレンドなのもスニーカーを合わせるための計算?そんなふうにコーディネートのルールは少なくないし、オフィシャルの場面でスニーカーはどこまで許されるのか?その基準はまだない。
そういう意味では、パンプスの力も偉大。足元だけで、全身のイメージががらりと変わってしまうのは紛れもない事実で、ただハイヒールに履き替えるだけで人柄まで違って見えるのは、誰もが体験的に知っている。
ああ、本当に悩ましい。歩く上でもファッションにおいても靴は絶対の要。これが定まらないと女性の生き方そのものが揺らいでしまう。さて、どうするか? もちろん適材適所でハイヒールとスニーカーを両方上手に履き分けることができるのが理想なのだけれど。
じつは今にわかに、より履きやすいパンプスの研究や、歩きやすいハイヒールの開発が進んでいて “走れるパンプス” というカテゴリーが生まれたり、痛くならない8センチヒールがヒットしたりと、ハイヒール市場もそれなりの進化を見せている。
ニューヨークなどでは、通勤はスニーカー、オフィスに着いてからパンプスに履き替えるというスタイルが定番になっているとも言うけれど、もちろんその方法もあり。
ハイヒールに関しても、肉体的にネガティブなことばかりではなく、ハイヒールを履くと必ず背筋が伸びること、必然的にヒップがきゅっと上がること、美しく歩けることなど、良いこともたくさんある。そして見た目の美しさからしても、美しく歩ける効果においても、理想的なのは7センチヒールと言われるのだ。
ただ、7センチヒールを履くためには、それなりの筋肉がついていなくてはいけないとも言われる。体幹がないと、歩いていても美しく見えないし、体に負担をかけてしまいがち。そして体幹ができてくるとハイヒールも後ろ重心、つまりかかとに重心が来るような立ち方ができると言われ、これこそが人間の理想らしい。
だから、自分の足にぴったりで歩きやすいと感じる靴は、自然にかかと重心になっているはずで、これが体にとってもベスト。だからスニーカーも自然にかかと体重になるような一足をしっかり選び、そしてちゃんと体幹をつけてから時々7センチヒールを履く、こんな心がけが、どんな場面でも美しい足元と姿勢ができる選択ではないか。
どっちにしろ、ハイヒールを諦めてしまうのはなんだか寂しい。ハイヒールを履き続けることも1つのエイジングケアと捉えてもいい位。ぜひともこのスニーカー対ハイヒール7:3位のイメージで履き分けてみてほしい。どちらでも心地よく歩ける体を作って。
女性誌編集者を経て独立。美容ジャーナリスト、エッセイスト。女性誌において多数の連載エッセイをもつほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。近著『だから“躾のある人”は美しい』(集英社文庫)、『“一生美人”力 セカンドステージ 63の気づき』(朝日新聞出版)ほか、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。