いつかはここへ行きたい、いつかは起業したい、いつかは資格を取りたい。いつかは、いつかは………ある年齢まで、私たちはいつも、「いつか」というはっきりしない未知の時をさして、夢を語ってきた。でも気がつくと、夢というより、未来の予定とも言うべき実現可能なことも全て、「いつかは」と言って、先送りにしている場合も少なくないのではないか?そういう意味では、年齢とともに「いつか」の意味も変えていかなければいけないはず。
もちろん、家を建てるとか、リフォームするとか、はたまた自分の店を持つとか、まとまった資金を必要とすることについては無謀な決断はできない。
でも、いずれは実現したいと強く思っていることを、「いつか」という言葉があるために、逆にチャンスを逃したりしてはいないだろうか?だから改めて考えてみた、あなたにとってもその「いつか」とはいつなのだろう?と。
「今度、お食事しましょうね」と言い合う時も、お互いの頭の中には、「今度」って一体いつだろう?という疑問符が浮かんでいるはず。それこそ、今度とお化けは出たことがない………という、あの諺めいたフレーズまでが頭をよぎったりするのだろう。
とは言え、実際にどちらかが、「じゃあ、いつにしますか?今、決めちゃいましょうか?」などと言い出せば、やっぱり何だか角が立つ。この人とは、もう会わないかもしれないと思う人に対して、「今度」という言葉で約束を曖昧にするケースもあるからだ。でも逆に、これきりになってしまうのは残念な相手だからこそ、日にちまでは決めなくても、「ぜひまた今度」という言葉を残すこともあるはず。
つまりは、やんわり断る場合も、何とかつなぎ止めたい場合も、両方に使うことができる、それなりに便利な言葉な訳である。
いや、こういう捉え方もできるのかもしれない。「今度」は絶対やってこないと思っている人と、「今度は今度、必ずやってくると思う人」、人には2種類いるのだという………。「今度」をネガティブにしか使わない人と、ポジティブにしか使わない人の2種類がいると言ってもいい。
そして、「今度」を常にポジティブな使い方でちゃんと実現する人には、いつもきっと良い未来が待っていると言えるのではないか?
なぜなら、数ヶ月後にでも、どちらかが実際に「近々本当にご飯しませんか?ご予定はいかがですか?」と誘ったとしたら、誘われた相手はきっと多くの場合、こう思うのだろう。この人は、口先だけではないちゃんとした人であると。
だからひょっとして"今度は来ない"と思っていた人も、そういう誠実な人とは、もう少し親しくなってみたいと思うのかもしれない。「今度」を本当に実現しようとする気概そのものに、小さな感動を覚えるから。
普段何気なく使っている「今度」。でもこの言葉を使うにあたり、相手に対してはもちろんのこと、自分自身ももっと誠実になったら、未来は変わるのではないか、そう言いたいのである。
そう、自分にとっての「いつか」も同じ。「いつか」に対しても自らが誠実になって、それをちゃんと実現しようとする人には、必ず良い未来が開け、幸せが用意されている。そう考えるべきなのである。
だからあえて今、こう言いたい。「いつかは今!」。とりわけ、人生の後半に差し掛かった人に対しては、強く提案したいのだ。「いつかは今!」であると。
「いつか」は5年くらい先、いやもっと先かもしれないと思っている人や、「いつか、いつか」と予定をわざわざ先送りにし続ける人にとって、残念ながら「いつか」は本当にやってこないかもしれないから。でも、「いつかは今!」と思ったとたん、全ての人の人生は突然動き始めるからなのだ。
あえてそのように言うのには、明快な理由がある。それは、人生とは意外に不確実で、予測不可能なものだから。5年後10年後には、状況がはっきり変わっていて、もう身動きが取れないかもしれない。もちろんもっと大きな夢を抱ける自分になっているかもしれないけれど、逆に様々な状況がそれを許さないかもしれない。
決して不安を煽るわけではないけれど、今の時代、良くも悪くも一寸先は闇。できるかもしれないことを今やらないと、この先やれなくなるかもしれない。そのくらい、今は目まぐるしい変化の時代なのだ。
だからこそ「いつか」という、本来が非常に前向きな言葉を使って、実現したいという思いがある時、それこそが“始めるタイミング”なのではないかと思うのである。
逆に、何か夢が叶ったり、実現したことを振り返る時、あの時決断しておいてよかったときっと思うはずなのだ。それは「いつかこうしたい」と思った瞬間、そのためのエネルギーが湧き出している証。そのチャンスを逃さないでほしい。「今度」も「いつか」もポジティブに捉える人の人生は明るい。それだけは確かなのだから。
女性誌編集者を経て独立。美容ジャーナリスト、エッセイスト。女性誌において多数の連載エッセイをもつほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。近著『だから“躾のある人”は美しい』(集英社文庫)、『“一生美人”力 セカンドステージ 63の気づき』(朝日新聞出版)ほか、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。