齋藤薫のエクエルダイアリー

Vol.5なぜもっと香らせないの?
なぜもっと香りと一緒に
生きないの?

タイに行くと、街中でもカフェでもともかくどこにいても、リップクリームのような小さなスティックを鼻先に当てている人を頻繁に見かける。
知っていただろうか?これは鼻から吸引するペパーミント系の香りのスティック。多くの人が持ち歩いていて、気分転換したい時や眠気でウトウトしそうな時など、リラックスしたい場面で使う習慣がもう2000年前から続いていると言われるのだ。

ただ、成分はあくまでもナチュラルなハーブによるアロマスティック。言ってみれば、かつてヨーロッパの貴族たちに使われていた“気付け薬”と同じような使われ方をしてきたと考えていい。

特に、タイは常夏の南国だけに、気分転換の暑さ対策という意味もあるらしい。実際、高温多湿の気候の中でそのスティックを使うと、不思議にも感覚的に涼しくなる。モヤモヤとしていた気分がスッキリ、なるほどこういうことなのかと納得が行くのだ。まさしく暑すぎる時の、涼しさの気付け薬のような役割を果たしているのである。

嗅覚は脳と直接つながっているだけに、五感の中でもとりわけ強い影響力を持つと言われる。一方に、五感の中では視覚が何より優先され、目で見たものが強烈に人を支配するという言い方もあったりするが、脳に直結しているのが嗅覚であるのは確か。ましてや、喜怒哀楽を感じる脳の機能とも直接つながっているとも言われるだけに、やっぱり、何より先に、匂いによって気分が大きく左右されるのが人間なのである。

ちなみに人間も動物と同じ、夜の闇では命の危険があるからこそ、匂いによって危険なものを見分ける能力として、嗅覚が最初に発達したのだと言うふうにも言われる。
であるならば、私たちも生きる上でもっともっと香りを効果的に利用しても良いのではないだろうか?本来そこまで匂いによって気分が操作されるなら、もっと香り高い生活を送るべきなのではないか。

それこそ小さな香りのスティックを持ち歩いて、いろんな場面でその香りを嗅ぐことによってリフレッシュ。来年の夏は今年よりもっと猛暑とも言われるだけに、ペパーミントの香りでリフレッシュできるアイテムは必需品になるかもしれない。
ちなみに私は、眠れない時にラベンダーのサシェを枕の下に入れるようにしている。効能としてリラックス効果や快眠効果が挙げられるけれど、個人差もあり、実際にそれだけで効果があるかは未知数。ただ、そうするだけで安心していつの間にか寝てしまう日ばかりなのだ。

嗅覚は最も記憶力が良い感覚だとも言われる。つまり、ラベンダーを嗅ぐとよく眠れるという記憶が、私の中で知らず知らずそうした習慣性をもたらしてくれるから、条件反射的になんとなく眠りのモードに入っていけるのだ。

少なくとも香りにはそれぞれ異なる効果効能があり、欧米では心身のトラブルを香りで治すような医療としてのアロマテラピーも存在する。そのくらい香りはそれぞれ目的が違うわけだが、一方で良い香りを嗅ぐことが、人を心地良くするのは紛れもない事実。あまり細かいことを考えず、“気分をあげたくなったら良い香りを嗅ぐ”という習慣を持つだけで、日々の幸福レベルを高めることはできるはずなのだ。

今、生活の中のあらゆる場面で香りを取り込むことができる新しい香りのブームが始まっている。アイデア次第でどんなふうにでも香りは使え、どんなふうにでも自分の気持ちの向きを変えてくれることに気づくべき時なのだ。
柔軟剤の香りブームもあったけれど、クローゼットにサシェを置いて下着に間接的に香りを纏わせてもいいし、髪に纏うヘアミストを香水がわりにして、体への香り付けとレイヤリングするのも楽しい。バスタイムにボディーに香り付けしてから、今時のミストシャワーを一瞬だけかけて、そのまま出かけられるような香り付けもあり。
ルームフレグランスも、部屋ごとに香りを変えてみたりして。特に自分の家の匂いは嗅覚が麻痺してよく分からなくなっているとも言われるからこそ、玄関にはとりわけ意識して良い香りを漂わせておくと言う人もいる。どちらにせよ、香りによって心の向きが前向きに変わることを、もっと意識すべきなのだ。

そして香りのマナーはたった1つ、強過ぎる匂いで他者に迷惑をかけないことだけ。だから注意すべきは日々同じ香りを嗅ぐと、嗅覚が麻痺して香らなくなること。そういう鼻の特性を踏まえた上で、上手に香りを使いこなしてほしい。
そうした濃厚な香り生活が日々の幸福度を高めてくれるのは、疑いようがないのだから。

美容ジャーナリスト/エッセイスト
齋藤薫

女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『Yahoo!ニュースエキスパート』でコラムを執筆中。『大人の女よ!清潔感を纏いなさい』(集英社文庫)他、『年齢革命 閉経からが人生だ!』(文藝春秋刊)など著書多数。

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