齋藤薫のエクエルダイアリー

Vol.6推し活の、意外な効能
自分を高め輝かせる
推し活メソッド

推し活をしている人の“幸せ”については、既にたくさん語られてきた。何かに夢中になっている人は、いつも生き生き幸せそう。何か他のことに悩む暇など全然ないからだ。でも、単に前向きになれるだけではない。単に楽しいだけではない。さらなる喜びがあるという話をしたいのだ。追いかける人によって、追いかけるジャンルによっては、想定を超える様々な成長があるはずだという。

友人に、世界的に有名なピアニストの追っかけをしている人がいる。それこそ、時間が許す限り、海外にも追っかけていくほど。そして当然のように出待ち。世界のあちこちで同じ顔を見せていれば、自然に存在を認識されるわけで、単なるサイン会での型通りの言葉だけでなく、かわす言葉も増えてくるはず。
だから、彼女はそのピアニストの母国語を勉強している。しかも彼女は、推し活をしている対象が3、4人もいて、だから気がつけば、トリリンガル、いやそれ以上のマルチリンガルになりそうな勢い。

そればかりか、出待ちの時のちょっとした会話に盛り込めればと考えて、相手の母国の文化や歴史まで調べ上げるようになっていたと言う。少しでもその人に近づければ、と思っての努力………とは言え、それは“涙ぐましい努力”というのではない、きっと楽しくて楽しくて仕方ないから、夢中で調べてしまうという非常にポジティブな努力に違いないのだ。

以前から感じていた。推し活に一生懸命な人って、なんだかんだ知的であると。何かに集中できることそれ自体が、一つの才能。だから知恵を駆使することもできるわけで、そもそもがそういう意味でのパワフルな人だから、推し活で自分の人生をどんどん充実したものにしていくことができるのだと。

いや厳密に言うなら、推し活で自分を高めていく人は、知的でありながら極めて行動的。自分の欲求を満たすためには、どんな行動も厭わないというパワフルさがあるはずなのだ。そう、ちょうどあの“博士ちゃん”のように。

子供の推し活は大人の推し活よりも、さらに純粋で情熱的。1つのテーマに出会ったら、それこそ子供ならではのスポンジのような吸収力も手伝って、とてつもない勢いでそのジャンルの全てを掌握し、分析や考察まで加えられるようになる。好奇心が半端じゃないから、学者や研究者と同じように、立派なスペシャリストとなっていくのだ。

それは、家で本ばかり読んでいる知性ではない。知りたいことが沢山あるから、答えを探しにどこまでも行く、そこに行動力が加わるからこそ“博士ちゃん”になっていくのだろう。まさに大学の研究者のように。
そして、一つのテーマを深掘りしていくとともに、持ち前の好奇心から関心の幅をどんどん広げていく。だから知識の増殖ぶりが目覚ましいのである。結果として年齢とキャリアを超えて、研究者顔負けの知識の泉になっているのだ。その情熱は、いつも大人を感動させるほど。

同じように、ピアニストの追っかけをしている友人の知識の増殖ぶりも私たち周囲を感動させる。憧れの人への情熱もさることながら、その憧れを極めるために、一から勉強して見識を深めて自分自身を磨き、いつの間にやら人としての質を深めていく、そういう推し活もあったのだと教えてくれるのだから。

他者の推し活ぶりに感動するなんて不思議だけれど、要は人が一生懸命になっていること、努力を惜しまないこと、そしてどんどん自分を高めていること、人生を充実させている姿は、誰であろうと、どんな場面であろうと眩しいものなのだ。

言い換えれば、人間はいくつになっても改めて自分を磨くことができるということ。いつからでも人生を充実させることが可能だということ。その1つの手段として今、推し活があると考えてみても良いのではないだろうか。

推し活の大前提は、言うまでもないけれど“何かに夢中になれること”。特に相手が“人”の場合は、人に感動する柔軟な心を持っていること。それだけで、人は輝けることを知っておいて欲しい。もちろん他にもたくさん方法があるけれど、とても身近な選択肢として、今それがあること、覚えていて欲しいのだ。

美容ジャーナリスト/エッセイスト
齋藤薫

女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『Yahoo!ニュースエキスパート』でコラムを執筆中。『大人の女よ!清潔感を纏いなさい』(集英社文庫)他、『年齢革命 閉経からが人生だ!』(文藝春秋刊)など著書多数。

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