齋藤薫のエクエルダイアリー

Vol.03心を整える生き方のコツ
自分で自分を撫でてつくる
小さな幸せ

「膝を抱える」と言う言葉がある。
これは文字通り、膝を折って自分の両腕で抱え込む動作を指す一方で、ひとり孤独にひたる様子を表現する言葉でもある。

とは言え、ただひたすら孤独感に襲われるというネガティブな意味ではなく、むしろ孤独感を感じている自分を自分で優しく抱きしめて癒してあげるといった、温もりある意味を含んでいる。心理学的にも、不安になった時、何らかの恐れを感じた時、自分の膝を抱えることで安心感を得ると言うメカニズムがあるようだ。

まさに普段何気なくやっている動作にも、ちゃんとした意味があるということ。しかも最近はそこに、幸福感につながる“効果”を見いだす研究が進んでいる。時には愛情ホルモン「オキシトシン」の恩恵も受けられるのではないかと言う……。

母親が子供と触れ合うことで生まれることから“愛情ホルモン”とも“抱擁ホルモン”とも呼ばれる「オキシトシン」。
それはドーパミンやセロトニンと並んで幸せ3大ホルモンと言われるものの1つ。まさしく不安や恐怖を和らげ、安心感と幸福感をもたらす脳内物質だ。ストレスを和らげることから、美しさにもつながる可能性を持つ有り難い物質である。

本来が人と人との触れ合いによって生まれるものだが、もちろんペットと触れ合うことでも同じような効果が得られるとされる。コロナ禍で、ハグはもちろん握手さえ許されないという中、人との触れ合いが希薄になったからこそ注目された素晴らしい効果……。

例えばマッサージにもオキシトシンの分泌を高める効果があると言われるが、この時マッサージを受ける方はもちろん、マッサージをする方にも同じように効果がもたらされると言う。つまり自分で自分をマッサージする行為には、その両方の効果を期待して良いのだ。本来は他者との触れ合いによって生まれるもの、でも自らを丁寧に慈しむ行為でも、触れ合いの魔法はちゃんと効くということ。

自分へのマッサージには少しの約束がある。ゆったりゆっくり、一定のリズムで肌をさすること。呼吸のリズムに合わせるのが効果的とも言われる。ちなみに1秒間に5センチ位を移動するマッサージで、実際にオキシトシンが分泌されることが実証されてもいるのだ。
顔のマッサージはもちろん、腕や足など、無理のない体勢でさすることができる場所ならどこでもオーケー。まさしく赤ちゃんやペットを撫でるように、自分自身を慈しむつもりで、心を込めて撫でてあげたい。またその心地よさをちゃんと自覚することも大切。

アロマオイルなどを使ってのマッサージはスムーズなマッサージができる上に、アロマオイル自体の効果も得られるし、着衣の状態で体を擦るだけでもいい。それこそ、ふと不安を感じたときに、自分の膝を抱えるように、自分の足を優しくさすってあげたり、自分の腕を撫でてあげたり。体の中からじんわりと安心感がこみ上げて来るはずなのだ。

一方、触れるだけではない、良い香りや好きな香りを嗅いだり、美しいものを見たり、そして好きな飲み物食べ物を味わう時にも、オキシトシンは生まれると言われる。まさに五感の全てでオキシトシンの恵みを受けることができるのだ。

逆に言うなら、自分の好きなものが五感を通して脳に伝わることがオキシトシンの分泌の決め手になるわけで、好きな飲み物を飲むだけで、好きな味を味わうだけで、自分を安心させ、幸福感で包めてしまうことを、もっと意識して、習慣にしてほしい。日常の中のコーヒーブレイク、ティーブレイクがなぜ大切かもきっとわかるはずだから。

人生においてそれは、とても些細な幸福感に過ぎないのかもしれない。でも毎日の生活の中で、そうした小さな幸福感を積み重ねていくことこそが大切なのではないか。辛い時は自分で自分を抱きしめて、優しくさすり、ストレスを感じたら、好きな飲み物で自分を癒してあげる。それを心がけるだけで人生は大きく変わっていくはず。心を整える生き方のコツとして覚えていて欲しい。

美容ジャーナリスト/エッセイスト
齋藤薫

女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。新刊『大人の女よ!清潔感を纏いなさい』(集英社)他、『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。

ダイアリーTOPへ

美と健康へのヒントが盛りだくさんコラム記事はこちら

取り扱い先

取り扱い先を調べる

公式通販サイト

ご購入はこちら