齋藤薫のエクエルダイアリー

Vol.09ティッシュ1枚と深呼吸
それだけで心をコントロール。
もっと香りと生きるススメ

19世紀、貴族の令嬢たちは、美しい小瓶にいわゆる気付け薬ともなる強い香りや“嗅ぎ塩”を入れて、持ち歩いていたと言われる。失神しそうなくらいのめまいを感じたときに、すかさずそれを嗅いで自らを覚醒させるためである。

じつはこの時代、上流階級の女性たちは“儚げであること”を1つの美しさとして競っていた。今では信じられないことだけれど、ちょっと病的なくらいにか弱い印象が美しいとされていたのである。食べ物に不自由しない豊かさが背景にあるからこそ、そんな意識が生まれてしまうわけで、ちょっと皮肉な話。

さらに言えば、硬いコルセットでウエストを細く細く絞っていたから、結果的に食事もとれずに舞踏会などに出かけていくものだから、踊っている途中にめまいを感じるくらい、本当に貧血気味の女性が多かったのである。そこで気付け薬を絹のハンカチに含ませて鼻に当てる、映画や演劇などでよく見かけるシーンが当時繰り返されたと言うことなのだ。

ここまでは昔の慣習。今ではありえない話だけれども、ただ、香りを嗅いで自分の心をコントロールしようとするような行為そのものは、昔も今も変わらない。モヤモヤしているときに気持ちをリフレッシュさせたり、心配事があるときに安らぎを与えたり、また気持ちが落ち着かないときに自らを集中させたり、それこそエッセンシャルオイルをティッシュに1、2滴。それを鼻に近づけるだけで、心の向きをコントロールできる。いやそんな事は誰もが知っているはずだけど、これを日常生活の中で上手に利用している人は意外に少ない気がするのだ。

ちなみに私は、常時3種類くらいのエッセンシャルオイルを用意しておいて、仕事に集中できない時などは、 ペパーミントやティートリーを。一方、気持ちが落ち込み気味で、心を前向きにしたい時などは、フランキンセンスや、イランイランを嗅ぐようにしている。
一度試すと、癖になり、気がつくと完全に習慣になっていて、やがてそばにないとちょっと不安になるほど、現代の気付け薬は幸せの精神生活においてとても頼りになるのである。

それこそ今ないと不安になるのが、ベッドサイドにいつも置いておくマンダリンやオレンジスイート。言うまでもなく、眠れなくなったときに嗅ぐためのエッセンシャルオイルである。それも、眠りたいときに眠れなくなることが実は最もストレスフルとも言われるから。

不思議なもので、明日、大事な仕事がある時など、ちゃんと眠れなければと思うと余計に眠れなくなる、焦れば焦るほど眠れなくなる、そして無駄に暗闇を見つめてしまい、挙句に、今思い出さなくてもいい古い悩みを持ち出しては、わざわざ悩んでしまったりするのだ。

結果として睡眠不足のみならず、眠れないストレスで余計に疲れ、当然のことながら朝の目覚めは悪くなる。そういうことが何日も続いたりする悪循環。これをどうしても避けたいからこそ、アロマテラピーにどっぷり頼ってしまうのだ。

それでも眠れないときは、携帯を耳元に置き、YouTubeで「5分で眠りに入るための瞑想音楽」を小さく流す。するとこれが極めて良く効き、本当にいつの間にか眠りに落ちている。いや5分なんてかからない。不眠に悩む人が少なくないけれど、なるべくならばこうやって五感を使って自然な寝落ちを誘う工夫をしてほしいもの。

ともかく、香り一つで心の向きをコントロールできるのは、不思議なほど。日常生活の中に上手に取り込むと正直無駄な時間が少なくなる。いつまでもモヤモヤしていたり、イライラしていたり、悶々としていたり、そういうことがなくなるからだ。

アロマテラピーもいいけれど、ディフューザーやアロマポットで香りを炊くのはちょっと面倒と思う人も少なくないはずだが、正直ティッシュ1枚あればアロマテラピーはできるわけで、これをもっともっと日常の中に染み込ませなければ損。1、2滴を含ませて鼻に近づけて、ゆっくり深呼吸、これだけなのだから。

美容ジャーナリスト/エッセイスト
齋藤薫

女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。新刊『大人の女よ!清潔感を纏いなさい』(集英社)他、『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。

ダイアリーTOPへ

美と健康へのヒントが盛りだくさんコラム記事はこちら

取り扱い先

取り扱い先を調べる

公式通販サイト

ご購入はこちら