第2回
行事やお祝いを彩るフラワーアレンジメント
長い冬を目前に控えたフィンランド。日に日に寒さが厳しくなる中、日が沈んだ状態が続く極夜を迎えます。旬の花や森の木々を使ったブーケやリースが暮らしに温かさを添えています。
長い夜は暖かな家で過ごす
フィンランドでは、紅葉の時期を「Ruska」(ルスカ)と言います。もう、手袋や帽子が必要な季節です。シラカバの葉は黄金色、カエデの葉やヘンリーズタは深紅に色づき、森の広葉樹やツタは華やかに冬の到来前の森を彩ってくれます。真夏の日の沈まない白夜とうって変わり、日の昇らない極夜が始まるのもこの頃。家庭では、シラカバの薪をくべた暖炉がたかれ、秋色のダリアやスプレーマムをふんだんに使ったブーケがリビングを温かく色づけてくれます。秋の夜長は、家族でゆっくりとサウナに入りながら会話するのもフィンランドならではの楽しみです。
暗く寒い極夜を明るくしてくれる森の素材をふんだんに使ったフラワーアレンジメント。
ハロウィンの華やぎ
ハロウィンの時期、花屋や青空市場のフラワー―マーケットは大にぎわい。カボチャや森の植物がふんだんに使われたオータムカラーのアレンジやブーケが所狭しと並びます。若い世代の人たちは友人や家族と一緒に仮装パーティーを開きます。部屋はハロウィンアレンジメントが飾られ、個性豊かに盛りつけられたハロウィン料理を楽しみながら、大いに盛り上がります。
華やかなブーケに、おいしいごちそう、楽しい仮装。ハロウィンは楽しみがいっぱい。
親子ブーケって?
私がエスポー市の病院で娘を出産したのは10月3日。出産の翌日には、病室に、親戚や友人、同僚からお祝いのブーケが次々と届きました。その中に、ピンク色の大きなラウンドブーケがありました。そばには小さなブーケ。そのふたつは細くて可愛いピンクの紐でしっかりとつながれていました。大きなブーケは、「無事出産おめでとう。本当にお疲れさまでした」と私に。そして、小さなブーケは「よくがんばったね!この世へようこそ」と赤ちゃんに。フィンランドで定番の出産祝い「親子ブーケ」でした。ピンクの紐はへその緒に見立てられたものだったのですね。
お母さんと赤ちゃん、ふたりへの労いの気持ちが込められた親子ブーケ。
花で彩る家族行事
5月の母の日はもちろん、11月の第2日曜日の父の日も花は欠かせません。朝、お母さんと子どもたちが、コーヒーとケーキ、そしてお花のプレゼントを持って、お祝いの歌を歌いながら、まだベッドで眠っているお父さんの枕もとに運んでいきます。かわいいペットも一緒に。大切な日は家族みんなでお祝いするのがフィンランド流です。
ヘンティネンさんの親友であり、北欧を代表するトップフラワーアーティストのピリヨ・コッピさんがアレンジしたブーケを頭に乗せるヘンティネンさんの愛犬・カネリちゃん。
ヘンティネン・クミ(へんてぃねん・くみ)さん
北欧デザイン発祥の地・フィンランドでフラワーデザイナーとして活躍してきたヘンティネン・クミさん。森と湖の国で暮らした10年間で、フィンランド人から学んだ生きる知恵や喜びを紹介します。
北欧フラワーデザイナー。13歳より池坊生花を学び、国内大手百貨店内のフラワーショップに10年間勤務。イギリス、オランダへ花留学したのち、1998年からフィンランドへ。北欧フラワーデザインのパイオニアであるヨウニ・セッパネン氏の専属アシスタントを務めながら、フィンランド国立KEMPELE花卉園芸学校マスターフローリスト科を卒業。ヘルシンキ市内でフラワーショップとスクールを経営後、2007年に帰国。東京・新御徒町の「LINOKA Kukka」を拠点に北欧フラワーデザインの普及に尽力している。著書に『森の植物が教えてくれた 北欧フィンランドのフラワーデザイン』(六耀社)がある。