結核-古くて新しい病気-

結核は世界の問題 アジアやアフリカなどの発展途上国で特に患者さんが多いのです

世界の結核は?

世界中で年間に960万人が新規に結核を発病し、150万人が結核で亡くなられています (表・図9)。これらの指標は、この数年来やっとごく緩やかな下降傾向をたどり始めました。患者さんが多いのは発展途上国です。結核はなかなか減らない病気で「再興感染症」とよばれています。とくに最近は「HIV感染合併結核」「多剤耐性結核」など、質的にも難しい問題が浮上しています。
※表に掲げた数の他にHIV合併結核による死亡があり、世界では39万人に達します。

表 世界の結核患者(WHO推定 2011年)

HIV感染患者さんで結核が流行

HIV感染は免疫機能を著しく低下させる病気であり、結核の最大のリスク要因であるといえます。アフリカではHIVがまん延し、それに伴って結核流行も悪化しました。
さらに、社会制度が混乱した旧社会主義諸国でも結核対策が崩壊し、結核が上昇、とくに悪性(薬剤耐性)の結核が問題となりました。
一方先進国でも、HIVの影響、貧困者の発生、まん延国からの持ち込みなどで結核が増え、新たな問題となりつつあります。

結核は世界の問題 多剤耐性結核とは?

結核菌は、結核の治療薬に対して抵抗性がついてしまうことがあります(耐性化)。現在の結核治療の中でもっとも重要なイソニアジドとリファンピシンという2つの薬剤に同時に耐性となったのが「多剤耐性結核」です。世界的に見て、最近この多剤耐性結核が増加しており、結核の増加を考える上で、現在もっとも深刻な問題になっています。日本でも決して油断はできません(図10)。
多剤耐性結核が生まれる背景としては、十分な治療を受けられない場合、または、薬剤の服用が不規則であったり、途中で中断してしまったりすることが挙げられます。治療を終え、結核が治ったようにみえても約2〜5%の患者さんで再発が起こります2,3)。図10の右側(既治療患者)はそのような患者さんでは薬剤耐性になっていることが多いことが示されています。 一方、不幸にも耐性結核の患者さんから感染を受けて発病した人は最初から薬剤耐性です(初回治療患者、図10左側)。

2)Chang, KC. et al.:Am. J. Respir. Crit. Care. Med. 174, 1153‒1158, 2006
3)Ryoken, IJTLD 19(2), 157-162, 2015

図10 日本の薬剤耐性結核の頻度

結核は世界の問題 薬剤耐性患者さんの治療経過

主軸の薬であるリファンピシンとイソニアジド(ヒドラジド)に同時に効かなくなると(多剤耐性)、結核の治療はとても困難になります。多剤耐性の患者さんの治療経過を調べたのが図11です。治療には副作用の強い薬を何種類も、長期にわたって使わなければなりません。場合によっては手術が必要なこともあります。それでも成績はあまりよくなく、上に見るように、治癒が確認されたのは62%で、残りの多くは死亡するか菌が止まらないままでした。

図11 多剤耐性結核患者の治療経過

結核は世界の問題 世界で推進される結核の治療システム、DOTSってなに?

DOTS(Directly Observed Treatment, Short-Course:直接服薬確認治療)とは、治療薬を確実に患者さんに服用してもらうために、WHOが打ち出した戦略です。 図 患者が治療薬を服用
1989年にWHO(世界保健機関)の結核対策課長に就任した古知新(こち・あらた)博士は、国際社会が結核問題を軽視していることを批判し、強力な治療方式であるDOTSを開発し、普及させました。 それまで途上国では採用できなかった高価な薬剤を確実に患者さんに服用させるシステムで、主として、医療従事者が直接患者さんに薬を手渡し目の前で服用を見届けるという方法で成果をあげています。
この方式はすべての途上国はもちろん米国のような先進国でも採り入れられ、世界標準の結核治療方式になりました。 日本でも「感染症法」で「患者が規則的に服薬を完遂するように保健所と主治医が連携して患者を支援すること」が規定されています。 これが「日本版DOTS」と言われ、患者さんや地域の状況に応じたやり方で服薬の支援と確認が行われています(「結核はすぐに治るの?」参照)。