コラム 暮らしを彩るワンポイント人工知能(AI)研究者・黒川伊保子さんの
女の人生のトリセツ

第14回 
男と女、論点がズレてるのはどっち?

怒りに追い打ちをかけられたとき、爆発しないで済む方法を黒川さんが教えてくれます。

怒りが増幅するとき

夫や恋人と話をしていて、めちゃくちゃ逆上させられることって、あるでしょう?
こっちは、目から火が出るほど怒ってるのに、「そんなこと言ってないだろう。論点ズレてるよ」なんて、いけしゃあしゃあと追い打ちをかけて、さらに火に油をそそぐ男たち。
もちろん、論点がズレているのは、男たちのほうである(科学的に証明できる。この後するね)。なのに、なぜか、こっちが「感情的で話が通じない、頭が悪い女」の烙印を押されているような、いや~な感じになる。
あれって、なんだ???を、今から科学します。

問題解決の方法は二種類ある

脳の「問題解決」の仕方には、実は二種類ある。
とっさに、「ことのいきさつ」を反芻して、根本原因に触れようとする人と、「今できること」に集中して、とにかく動き出そうとする人がいる。
たとえば、子どもが具合が悪くて、ご飯を食べない、そんなとき。「そう言えば、今朝から食欲がなかったなぁ。昨夜も寝つきが悪かったし……あ、そう言えば、おととい保育園で手足口病が出たって聞いたっけ。口開けてごらん。あ~、やっぱり」と、根本原因にたどり着くのが、「ことのいきさつ」派。不安な感情に導かれるようにして、記憶の中へ、根本原因に触れに行くのである。
一方、「熱はあるの、ないの?《測ってみる》」「病院に連れて行こうか。近くの小児科、まだやってる?《診察券で確認》」のように、目の前の客観的事実から直接原因(熱があるから具合が悪い)をつかんで、さっさと動き出すのが「今できること」派。
誰でもどちらもできるのだが、とっさには、いずれかを選ぶことになる。ということは、とっさに違う側を取り合う二人がペアを組めば、鉄壁のペアになれる。
実は、多くの男女は、優先側の違う相手に惚れているのである。生存可能性を上げあうことができる相手を、脳は自然に選んでいるわけ。
ところが、このふたり、絶望的に話がすれ違う。

論点がズレているのは、どっち?

妻が、隣の奥さんとのトラブルを夫に訴えたシーンを想像してほしい。
「ひどいでしょう?」と嘆く妻は、根本原因(隣の奥さんの性格が悪い)について話している。ところが、たいていの夫は「きみも隣がどんなだか知ってんじゃん。どうして、いきなりそんなこと言うの」と諌(いさ)めたりするのである。「今できること」派が着目するのは、直接原因。この度のいさかいのきっかけになった妻の発言を指摘して、妻をいち早く混乱から救い出そうとしているのだ。
しかしながら、「性格の話」をしている妻にとっては、夫の切り返しは、「きみの性格にも問題がある」という意図で言ったように聞こえてしまう。当然、妻は「あなたは、隣の味方なの!?信じられない」と逆上することに。夫は「そんなことは言ってないだろう。論点ズレてるよ」としたり顔で言ってくる。
残念ながら、この話、ズレてるのは夫のほう。妻は最初から「性格の話」をしてるんだから。「どうしたらいいと思う?」なんて一言も言っていなのである。
第14回 男と女、論点がズレてるのはどっち?/人工知能(AI)研究者・黒川伊保子さんの【女の人生のトリセツ】
イラスト・いいあい

不敵の笑いか、カワイイ逆上か

この場合、「ひどいでしょう?」と言われたら、「ひどいよね」と返すのがマナー。その上で「きみも気をつけて。ワニの前に手を出すような真似をしないで。心配だから」と言えば、言いたいことが伝わる。愛も感じる。あ~、そんな男子が欲しいものである。
そんな男子をお持ちでない方。男たちの論点のズレ方を知っておくと、それほど逆上しなくてすむ。テキは根本原因に触れるセンスを持っていないのだ。大人の私にはわかりきった直接原因を、偉そうに解明してくる坊や……と思えばいい。
「あなたは、あっちの味方なの!?」なんて逆上しないで、「ふふふ。ちょっと突いてみたくなって」と不敵の笑いを浮かべてやれば?手ごわい女だなと思わせて、あなたの勝ち。ただし、愛されるかどうかで言えば、可愛く逆上する方をお勧めするけど。
「たしかにあなたの言うとおりね。私がバカだったわ」と言うのが、本当は120点なのだけど(男子の対話満足度は最高値に達する)、正解を知っている私でも、夫に言えたためしがない。詐欺師の女は、これが言えるのではないだろうか。
黒川伊保子
黒川伊保子(くろかわ・いほこ)さん
脳科学・人工知能(AI)研究者。株式会社感性リサーチ代表取締役社長。感性アナリスト。随筆家。奈良女子大学理学部物理学科を卒業後、コンピューターメーカーで人工知能エンジニアとなり、ことばの潜在脳効果の数値化に成功。感性分析の第一人者として、さまざまな業界で新商品名の分析を行った。また、男女の脳の「とっさの使い方」の違いを発見し、その研究結果をもとに著した家族のトリセツシリーズ(『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』『息子のトリセツ』『娘のトリセツ』『家族のトリセツ』)は累計90万部を超えるベストセラーに。2021年11月には『母のトリセツ』(扶桑社新書)を刊行。母の「言わんでもいいこと」「余計なお世話」を優しく止める秘術。最新刊、『仕事のトリセツ』(時事通信社)も話題。
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