コラム 暮らしを彩るワンポイント北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの
フィンランド花通信

第3回 
フィンランドのクリスマスと暮らし

12月のフィンランド。真っ白な雪で覆われた町は、花とキャンドルに彩られ、にぎやかなクリスマスムードに一変します。ヘンティネンさんに、クリスマスの過ごし方を教えてもらいましょう。

11月から始まる「ピックヨウル」

フィンランド語でクリスマスは「ヨウル」と言います。ヨウル目前の11月終わり頃の日照時間はかなり短く、首都・ヘルシンキでも明るくなるのは午前10時頃。午後3時頃には日が沈み真っ暗になりますが、真っ白な雪のおかげで街の景色は明るく、イルミネーションやキャンドルの灯がクリスマスムードを盛り上げてくれます。この頃から、「ピックヨウル」と呼ばれるリトルクリスマスがはじまり、友だちや職場の仲間が集まってパーティが開かれます。ちょうど日本の忘年会のようなものでしょうか。
第3回 フィンランドのクリスマスと暮らし/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
ピックヨウルを盛り上げるのに花の演出はかかせない。テーブルコーディネイトにクリスマスカラーの植物を添えて。

街中を彩る花屋さん

私の経営していた「フラワーショップ梨乃花」もこの頃からフル活動。ヘルシンキのデザインホテルの外壁装飾の巨大なモミのリースを何個も作ったり、大使館のレセプションパーティーの装花や、フラワーデモンストレーションに呼ばれたりと大忙し。街中みんながピックヨウル楽しんでいるけれど、私にはただ「メリークルシミマス」という心境でした(笑)。今ではいい想い出です。
第3回 フィンランドのクリスマスと暮らし/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
ヘルシンキ市内にあった「フラワーショップ梨乃花」。ショップウィンドウは季節ごとに装いを変える。

キャンドルの消費量世界一

クリスマスは、フィンランドの花屋にとって一番忙しい時期。仕事先や友人へ「1年のご挨拶に」とクリスマスフラワーやアレンジの注文が殺到します。クリスマスの定番フラワーである、花芽球根付きのヒヤシンスにアマリリス、ミニチューリップにクリスマスローズなど、オランダから大量に輸入された球根花は、国内中の花屋さんやスーパーで華やかに装飾、販売されます。お花はフィンランドのクリスマスには欠かせない大切なアイテム。
そして、忘れてはいけないのはキャンドルです。キャンドルの消費量が世界1位のフィンランド。フラワーアレンジメントにも使用され、家の中にも外にもキャンドルの灯が揺らめき、素敵なクリスマスが演出されます。
第3回 フィンランドのクリスマスと暮らし/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
キャンドルによる光の演出が、植物を神秘的に見せる。

独立記念日のお祝い

12月6日はフィンランドがロシアから独立した記念日。フィンランドの人たちにとっては、クリスマス前の大切な日です。各家庭では、フィンランドの国旗の色である、ブルーとホワイトのヒヤシンスとキャンドルが窓辺に飾られ、大統領公邸では盛大なパーティを開催。華やかに着飾った著名人が招待され、その様子がテレビで放映されます。国中が祝賀ムード一色になり、私も早々に仕事を切り上げテレビに見入っていたものです。
第3回 フィンランドのクリスマスと暮らし/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
フィンランドの国旗の色(白とブルー)をイメージさせるヒヤシンスをアレンジ。

家族と過ごす

12月24日のクリスマスイヴは家族団欒の日。家族みんなで本物のモミの木にいろいろなものを飾ってデコレーション。
ジンジャークッキーを焼いたり、伝統的なクリスマス料理を作ったりと、子どもたちの笑い声が絶えないクリスマスイヴとなります。フィンランディアモスのリースとキャンドルを持ってお墓参りに行き、サウナに入ってクリスマス料理を食べる。夜にはサンタクロースがアシスタントの「トントゥ」と一緒に、おりこうさんにしていた子どもたちにだけにプレゼントを持ってきてくれることを信じ、今か今かとドキドキしながらサンタさんがドアベルを鳴らすのを待ちます。そこには、厳かで温かい家族のための時間が流れています。
第3回 フィンランドのクリスマスと暮らし/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
フィンランディアモスをアレンジしたトントゥツリー。サンタクロースと暮らす小人「トントゥ」がかぶるとんがり帽子をイメージしたデザイン。
ヘンティネン・クミ
ヘンティネン・クミ(へんてぃねん・くみ)さん
北欧デザイン発祥の地・フィンランドでフラワーデザイナーとして活躍してきたヘンティネン・クミさん。家族との時間を大切にするフィンランド人から多くのことを学んだと言います。
北欧フラワーデザイナー。13歳より池坊生花を学び、国内大手百貨店内のフラワーショップに10年間勤務。イギリス、オランダへ花留学したのち、1998年からフィンランドへ。北欧フラワーデザインのパイオニアであるヨウニ・セッパネン氏の専属アシスタントを務めながら、フィンランド国立KEMPELE花卉園芸学校マスターフローリスト科を卒業。ヘルシンキ市内でフラワーショップとスクールを経営後、2007年に帰国。東京・新御徒町の「LINOKA Kukka」を拠点に北欧フラワーデザインの普及に尽力している。著書に『森の植物が教えてくれた 北欧フィンランドのフラワーデザイン』(六耀社)がある。
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