コラム 暮らしを彩るワンポイント北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの
フィンランド花通信

第58回 
夏の終わりの苔ドーム

小さな苔ドームに、好きな花を挿していくだけ。アジサイやアザミ、クレマチスなど、夏の終わりにぴったりの花を選びました。
第58回 夏の終わりの苔ドーム/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】

森に入る

フィンランドはすっかり秋の装い。人々は冬ごもりに向けて、ベリーやきのこを採りに森に入ります。ベリーはジャムやジュースに、きのこは乾燥させたり、塩漬けにしたりして、冬のごちそうの材料となります。東京はまもなく秋……とは思えないくらい暑いですが、フィンランドの森をイメージしたアレンジメントで涼を取るのはどうでしょう。ポイントは苔を小さな山に見立てた苔ドーム。さっそく、作っていきます。
第58回 夏の終わりの苔ドーム/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
花材・道具:サンキライ/ルリタマアザミ/アジサイ(マジカル)/グラス/クレマチス/ヤマゴケ/フローラルフォーム/ピンホルダー/皿/ワイヤー/はさみ/ナイフなど

苔ドームを作る

苔ドームの作り方は簡単。フローラルフォームの上に苔をかぶせるだけ。必要に応じて、Uピンなどで固定してもいいでしょう。グリーンのつやつやした実をつけたサンキライでドームを囲ってリースのように。フィンランドの森で採れるベリーが思い出されます。
第58回 夏の終わりの苔ドーム/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
1 ガラスの器の半分くらいのサイズになるようにフローラルフォームをカットして、皿に乗せます。角をナイフなどで削いで、丸みをつけておきます。フローラルフォームはピンホルダーで固定しておくと扱いやすくなります。上からフローラルフォームのサイズにカットした苔を乗せて、必要に応じてUピンなどで固定します。
第58回 夏の終わりの苔ドーム/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
2 サンキライの根元は苔をかき分けてフローラルフォームにしっかり挿します。根元の近くの枝をUピンで固定しておくと扱いやすくなります。
第58回 夏の終わりの苔ドーム/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
3 サンキライを皿に沿わせて、苔ドームを囲むようにします。このとき、落ちてしまった実は後ほど使用するので取っておきます。

多彩なアジサイ

苔ドームに最初に挿すのはアジサイです。毎年のように新しいアジサイの品種が生まれていますが、今回使用する品種は「マジカル」。6月頃の咲き始めはグリーンですが、じっくり時間をかけて紫やブルーなどに変色していきます。ちょっと渋めの秋色に変わっていくアジサイの色に合わせて、ルリタマアザミや穂先が紫色のグラスを用意しました。
第58回 夏の終わりの苔ドーム/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
4 苔をかき分けて、アジサイの根元をフローラルフォームに挿します。茎はナイフなどで斜めに切っておくと、苔の下のフローラルフォームに挿しやすく、また水を吸い上げやすくなります。
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5 アジサイに寄り添うように、ルリタマアザミを挿します。アジサイと同様、苔をかき分けて、しっかりフローラルフォームに挿すのがポイント。
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6 グラスはアジサイの中から出てくるように挿すと、動きが出ておもしろいでしょう。グラスが手に入らない場合は、ススキなどでもOK。
第58回 夏の終わりの苔ドーム/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
7 グラスの切り落とした根元は、まとめてワイヤーで束ねて飾りとして使います。
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8 皿の空いた部分に、枝から落ちたサンキライの実を入れて完成。

落ちた実も活かす

サンキライの実は、購入してから時間が経つと、実がぽろぽろと落ちてきてしまいます。でも、捨てないで。今回のように、アレンジメントに使うのもいいですし、水を張ったガラスの器に浮かべておくだけでも涼し気です。サンキライの実は乾燥してくると、徐々に色も赤く変わってきて、その変化も楽しめます。花でも枝でも、「もう、これは使えないな」とすぐに捨ててしまうのではなく、「何かに使えるかも」と考えるのも楽しいものです。
第58回 夏の終わりの苔ドーム/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
苔ドームの山肌が見えるように生けるのが今回のアレンジメントのポイント。花は片側に寄せて挿しています。
デザインのテクニックを知りたい人は、ヘンティネン・クミさんが主宰する北欧フラワーデザイン教室で丁寧に教えてもらえます。趣味のコースでは、6,500円(花資材・講師料・税込み)で受講できる体験レッスンもあります。また、お花をもっと知りたい、お花を教えるようになりたい方のためのマンツーマンプライベートレッスンも始まりました。(https://www.linoka.jp/)
著書『森の植物が教えてくれた 北欧フィンランドのフラワーデザイン』からも学べます。(詳しくはこちら
ヘンティネン・クミ
ヘンティネン・クミ(へんてぃねん・くみ)さん
北欧フラワーデザイナー。13歳より池坊生花を学び、国内大手百貨店内のフラワーショップに10年間勤務。イギリス、オランダへ花留学したのち、1998年からフィンランドへ。北欧フラワーデザインのパイオニアであるヨウニ・セッパネン氏の専属アシスタントを務めながら、フィンランド国立KEMPELE花卉園芸学校マスターフローリスト科を卒業。ヘルシンキ市内でフラワーショップとスクールを経営。13年間の欧州での花仕事の後、2007年に帰国。東京・新御徒町駅上の「LINOKA Kukka」で、北欧スタイルのフラワーデザインスクールを開校。趣味のコースのほか、お花を仕事にしたい方や、基本からしっかりお花を学びたい方への完全プライベートレッスンのディプロマ取得コースがある。著書『森の植物が教えてくれた 北欧フィンランドのフラワーデザイン』(六耀社)。
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