コラム 暮らしを彩るワンポイント北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの
フィンランド花通信

第4回 
北の国で新年を祝う

氷点下が続く真冬のフィンランド。にぎやかなクリスマスが終わった後は、思い思いに冬を楽しみます。

大晦日のカウントダウン

フィンランドでは、クリスマス前後3日間が日本の「三が日」のようなもので、家族で集まってゆったりとしたときを過ごします。クリスマスが終わるとフラワーショップは大忙し。セールが始まるので、フローリストたちは27日から31日まで普段通りに働きます。大晦日の楽しみは、新年をお祝いするカウントダウンイベント。大聖堂やヘルシンキ港あたりでは、年に一度しか見ることができない大きな花火があげられます。街の人々は、北欧風ホットワイン「Gloggi(グロッギー)」で体を温めながら、極寒のカウントダウンを楽しみます。
第4回 北の国で新年を祝う/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
年明け2日目から「仕事始め」という会社が多いフィンランド。学校は1月6日まで休み。子どもたちにとっては楽しい冬休みです。

寒空の打ち上げ花火

一般市民の打ち上げ花火が解禁になるのも大晦日だけ。郊外や田舎では、カウントダウン前に、近所の人や友だちと湖畔や海辺に集まり、打ち上げ花火で大いに盛り上がります。外気温マイナス10度前後の中、鼻を真っ赤にして、かじかんで震える手で花火に火をつける。澄んだ真っ暗な夜空に美しく輝く花火を、寒さでブルブルと震えながら何時間も外でながめていたことも今ではいい想い出。新年おめでとう!「Hyvää uutta vuotta(フヴァー・ウウッタ・ヴゥオッタ)!」 と口々に言います。
第4回 北の国で新年を祝う/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
花火といえば、日本では夏の風物詩ですが、フィンランドでは大晦日の風物詩。フィンランドの夏は白夜ですから。

強まる寒さと静かな花屋

新年に飾るお花はクリスマスの頃とほとんど変わりません。「ロッピアイネン(Loppiainen)=公現祭」と呼ばれる1月6日を最後に、ツリーやリース、すべてのクリスマスデコレーションが取りはずされます。私が営んでいたフラワーショップもクリスマスムードから一転し新春に向けて……と言いたいところですが、春はまだ遠く冬真っただ中。ヘルシンキでは、午前9時頃からやっと日が昇りはじめ、午後4時頃にはもう沈んでしまいます。外気温マイナスの中、お花持って歩くのは大変。2月のバレンタインまではフラワーショップはとっても静かです。
第4回 北の国で新年を祝う/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
クリスマスローズ、ミニ胡蝶蘭、チランジア、ヒムロスギなどをアレンジした冬のアレンジメント「ヨウルルース」。

バルト海クルーズを楽しむ

冬の楽しみ方のひとつにバルト海クルーズがあります。ヘルシンキ港とスウェーデン・ストックホルム港を運行する「タリンクシリヤライン」です。水面の氷を割りながら進む「砕氷船」に乗り、砕かれた氷の中に浮かぶアーキペラゴ(群島)の景色を楽しみます。娘がまだ小さかったころ、夏と冬にはバルト海クルーズを楽しみました。夏の白夜の頃と真冬の極夜の頃では、景色はもちろん、肌に当たる空気の冷たさも張り感も違い、同じ航路とは思えません。真夏のサンセット、真冬の星空、どちらもとても幻想的。仕事の疲れも吹っ飛ぶほどリラックスしたものです。
第4回 北の国で新年を祝う/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
週末や、仕事が休みのときに、1泊2日の小旅行を楽しむ。日帰りできるヘルシンキ⇔エストニアも人気のクルーズだった。

サウナで極上の時間を

寒い冬の楽しみといえば、サウナでしょう。実は「サウナ(SAUNA)」はフィンランド語。フィンランド発祥の蒸し風呂です。焼けた石の上に水をかけ、熱風と蒸気を頭から浴びる。吹き出す汗!なんともいえない幸せを感じるその瞬間。体が芯から温まり、冷え性の私がポカポカと一晩中温かくいられたのもこのサウナのおかげでした。サウナの中では、家族とゆっくりと語り合ったり、友達と裸の付き合いを楽しんだり、ビジネスの話をしたこともあります。いま、日本もサウナブームがきているようですが、フィンランドのように、家族みんなで入れるようなサウナがマンションに備えつけられたり、自宅にサウナを持てるようになると、きっと家族団らんの場にもなって会話も増えるのではないでしょうか。そんな日が来ることを夢見て……。
第4回 北の国で新年を祝う/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
サウナの後は、凍った氷に穴をあけて氷水に入るという習慣が!フィンランド人は男性も女性も楽しんでいました。私は……というと、とても勇気がなくて一度もトライできませんでした(笑)。
ヘンティネン・クミ
ヘンティネン・クミ(へんてぃねん・くみ)さん
フィンランドに10年間滞在し、フローリストとして活躍してきたヘンティネン・クミさん。フィンランド人ならではの冬の楽しみ方を教えてもらいました。
北欧フラワーデザイナー。13歳より池坊生花を学び、国内大手百貨店内のフラワーショップに10年間勤務。イギリス、オランダへ花留学したのち、1998年からフィンランドへ。北欧フラワーデザインのパイオニアであるヨウニ・セッパネン氏の専属アシスタントを務めながら、フィンランド国立KEMPELE花卉園芸学校マスターフローリスト科を卒業。ヘルシンキ市内でフラワーショップとスクールを経営後、2007年に帰国。東京・新御徒町の「LINOKA Kukka」を拠点に北欧フラワーデザインの普及に尽力している。著書に『森の植物が教えてくれた 北欧フィンランドのフラワーデザイン』(六耀社)がある。
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