コラム 暮らしを彩るワンポイント北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの
フィンランド花通信

第6回 
花と子どもとイースター

フィンランドにも春がやってきました。あたたかい季節の最初のイベントは「イースター」。華やかな色の花々に囲まれて、子どもたちの弾む声が聞こえてきます。

イースターを彩る花

イエス・キリストの復活を祝う「イースター」。フィンランド語では「パーシアイネン(Pääsiäinen)」と言い、クリスマスの次に大きなお祭りです。毎年、日にちは異なりますが、だいたい3~4月に行われます。生命の象徴となるタマゴに絵つけをし、ヒヨコやウサギをモチーフとした雑貨を飾るほか、春を象徴する花も欠かせません。フィンランドではネコヤナギが主流で、黄色いラッパスイセンやチューリップと組み合わせたブーケが飾られます。私の店でもネコヤナギを入れたミニスイセンの寄せ植えや、ムスカリなどの春の花を店頭にたくさん並べていました。
第6回 花と子どもとイースター/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
ネコヤナギ、スイセンなどをかごいっぱいに詰めた「イースターアレンジメント」。1週間近く連休となる「イースタ休み」には、帰省時にアレンジメントを手土産にする人も多い。

ちっちゃなかわいい魔女さん

イースター前の日曜日。子どもたちは「ビルポイア(Virpojia)」と呼ばれる魔女に仮装し、近所の家を訪ね歩きます。家のドアが開くと、子どもたちはカラフルな羽やリボンをつけた手作りのネコヤナギの小枝を差し出しながら「私は健康な1年をもたらす小枝を持っています。この小枝をあなたにあげるから、何かごほうびをくれませんか(Virvon, varvon, tuoreeks terveeks, tulevaks vuodeks; vitsa sulle, palkka mulle!)」とおまじないを唱えてくれます。私の住んでいた家にも来てくれたのですが、初めてちびっこ魔女さんたちと出会ったときはびっくり。しっかりおまじないをかけてもらい、お礼にチョコをあげると、日本人にとってなじみの薄いイースターも身近なものに感じられるようになっていました。
第6回 花と子どもとイースター/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
思い思いに仮装して、ノックして回る魔女さんたち。個性あふれるネコヤナギのアレンジメントを手にしています。

真っ黒なソウルフード

この黒い食べ物は「マンミ(Mämmi)」と言います。フィンランドのイースターには欠かせない定番のデザートで、この時期スーパーでは飛ぶように売れます。ライ麦粉やライ麦の麦芽粉を練り、ハチミツやオレンジの皮などで味と香り付けをして焼いたもので、ペースト状になっています。ライ麦のざらっとした食感があり、ほのかに甘酸っぱさも感じられますが、単体では甘くないのでそのまま食べるのはちょっと難しいかも。牛乳やクリームの中に落としたり、砂糖やバニラクリームをかけたりして食べるのが一般的です。
第6回 花と子どもとイースター/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
今までに味わったことのない、なんとも表現しがたい……ライ麦パンのねっとりしたシェイク(?)みたいな感じ。私にとっては年に1回がちょうどいい感じでした(笑)

エッグハントの思い出

娘が小さかったころ、イースター休みは湖水地方に住むおばあちゃんのところで過ごしました。庭で採れたたっぷりのネコヤナギと黄色い水仙が花瓶に生けられ、ここでも花々がイースターを彩っているのでした。子どもたちの楽しみは、「エッグハント」。家のあちこちに隠されたタマゴやタマゴ型のチョコレートを探すこと。ある年、娘がかわいがってたウサギのぬいぐるみの下に小さなタマゴ型のチョコを数個隠しておいたら、それを見つけた娘が、ウサギがタマゴを産んだと大喜び。「いつこのタマゴからウサギが生まれるの?」と真剣に聞く娘。今でもほのぼのとした気持ちになるいい思い出です。
第6回 花と子どもとイースター/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
クリスマスのサンタさんや、イースターのビルポイア(魔女)やエッグハント。子どもたちが純粋な気持ちを持ついい機会だな~と今になって実感します。
ヘンティネン・クミ
ヘンティネン・クミ(へんてぃねん・くみ)さん
北欧フラワーデザイナーとして本場・フィンランドで活躍してきたヘンティネン・クミさん。花とともに生きるフィンランド人の暮らしを教えてもらいます。
北欧フラワーデザイナー。13歳より池坊生花を学び、国内大手百貨店内のフラワーショップに10年間勤務。イギリス、オランダへ花留学したのち、1998年からフィンランドへ。北欧フラワーデザインのパイオニアであるヨウニ・セッパネン氏の専属アシスタントを務めながら、フィンランド国立KEMPELE花卉園芸学校マスターフローリスト科を卒業。ヘルシンキ市内でフラワーショップとスクールを経営後、2007年に帰国。東京・新御徒町の「LINOKA Kukka」を拠点に北欧フラワーデザインの普及に尽力している。著書に『森の植物が教えてくれた 北欧フィンランドのフラワーデザイン』(六耀社)がある。
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