コラム 暮らしを彩るワンポイント北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの
フィンランド花通信

第28回 
人気のフォーマルリニアってなに?

フィンランドで大人気の生け花風アレンジメントを作りましょう。スタイリッシュな空間が作れます。
第28回 人気のフォーマルリニアってなに?/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】

フィンランド×生け花

リノ:フィンランドのカラっとした夏が恋しいです(笑)。
クミ:日本はじめじめしていますからね。涼し気なアレンジメントを作って気持ちを上げていきましょう。
リノ:カラーやフトイなど、今日の花は、どれもとっても個性的ですね。
クミ:花の個性を活かす大人気のデザイン「フォーマルリニア」に挑戦しましょう。
リノ:フォーマル(形)とリニア(線)……。
クミ:花の形や、葉や茎が描く線などをよく見てアレンジします。日本の生け花の考え方を取り入れたデザインなんですよ。フィンランドでは、『korkea asetelma(コルケア アセテルマ)』と言われていて、開店祝いなど、贈り物に選ぶ人が多いですね。
第28回 人気のフォーマルリニアってなに?/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
花材・道具:カラー/ブローディア/フトイ/カンパニュラ/キキョウラン/リリオペ/モンステラ/ベアーグラス/ビバーナム/ダリア/フローラルフォーム/竹串
第28回 人気のフォーマルリニアってなに?/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
ヘンティネン・クミさん(右)と娘でフラワーデザイナーのリノさん。

植物のラインを活かす

クミ:まずは、ガラスのフラワーベースに、葉の形が個性的なモンステラの葉を入れます。
リノ:ガラス面に貼り付けるようにぐるりと入れるんですね。
クミ:そうです。中に入れるフローラルフォームを隠すための演出です。また、ガラスからグリーンが透けて見えて涼し気になりますよ。
リノ: フローラルフォームには、どの植物から挿していきますか?
クミ:カラーからにしましょうか。茎のまっすぐなラインを際立たせるよう、垂直に挿します。
リノ:続けてフトイも?
クミ:はい。カラーの太い茎と比べると細いでしょう。並べることでそれぞれのラインの美しさが際立ちます。
第28回 人気のフォーマルリニアってなに?/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
フラワーベースのガラス面に沿うようにモンステラの葉を入れ、その内側にたっぷりの水を吸わせたフローラルフォームを入れる。
第28回 人気のフォーマルリニアってなに?/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
カラーの茎は太く柔らかいので、芯に竹串を挿しておくと、フローラルフォームに挿しやすくなる。
第28回 人気のフォーマルリニアってなに?/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
植物のトップが、フラワーベースの高さの2.5倍くらいになるように挿すと、バランスがよい。茎をカットするときは、フローラルフォームに挿しこむことを想定して、5cmほど長めに切る。

花の個性を見極める

クミ:次にダリアです。ダリアは、華やかに咲く様を目立たせたいですね。ダリアは正面を向いてしまう傾向があるので、花の顔が上向きになるように、ワイヤーでひと工夫しましょう(写真参照)。
リノ:茎を短くカットして、なるべく低く配置されるように挿すのですね。
クミ:はい。上から見下ろしたときにダリアの顔が美しく見えるからです。
リノ:なるほど!
クミ:ビバーナムは、下向きに下がるように咲いている姿が愛らしいですね。また、ブローディアは花びらの先がとがっていて繊細。一方で、カンパニュラの花びらは丸みを帯びていて、柔らかな印象です。
リノ:個性の異なるものを順に配していくことで、コントラストが強調されるんですね。
クミ:そういうことです。
第28回 人気のフォーマルリニアってなに?/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
ダリアのうなじ(花の裏の根元)に細いワイヤーを挿し、茎にワイヤーを巻きつけると、正面を向いている花が上向きになる。
第28回 人気のフォーマルリニアってなに?/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
上向きになったダリア。ヒマワリやガーベラ、スカビオサなど花首が曲がっているものを上向きにしたいときも同じ手法で行う。
第28回 人気のフォーマルリニアってなに?/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
ダリアは下のほうに段差をつけて、それぞれの顔が見えるように配置した。カラーとフトイの美しいラインが、さらに強調される。
第28回 人気のフォーマルリニアってなに?/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
ほかの花も、それぞれの個性を活かすように挿す。デザインのテクニックを知りたい人は、ヘンティネン・クミさんが主宰する北欧フラワーデザイン教室で丁寧に教えてもらえる。5,700円で受講できる体験レッスンもある。(https://www.linoka.jp/
また、著書『森の植物が教えてくれた 北欧フィンランドのフラワーデザイン』からも学べる。(詳しくはこちら

引き算の美学

リノ:スタイリッシュな空間に仕上がりました。
クミ:たくさんの花を使わなくても豪華に見えるでしょう。これがフォーマルリニアです。
リノ:花の魅力をじっくり考える時間に癒されました。
クミ:咲いている姿を調べたり、思い浮かべたり。「私をよく見て!」と言っているような個性的な花を組み合わせると、アレンジの中にドラマが感じられるようになるでしょう。
リノ:そうですね。
クミ:日本の生け花は「引き算の美学」と言われますが、少ない本数でいかに豊かなデザインが作れるかがポイント。フォーマルリニアも同じです。小さめの器を使ってコンパクトなアレンジメントに仕上げてもいいと思います。
第28回 人気のフォーマルリニアってなに?/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
モンステラの面を見せたり、ベアグラスで垂れ下がる線を演出したりすることで、カラーやフトイのまっすぐなラインが強調されている。
ヘンティネン・クミ
ヘンティネン・クミ(へんてぃねん・くみ)さん
北欧フラワーデザイナー。13歳より池坊生花を学び、国内大手百貨店内のフラワーショップに10年間勤務。イギリス、オランダへ花留学したのち、1998年からフィンランドへ。北欧フラワーデザインのパイオニアであるヨウニ・セッパネン氏の専属アシスタントを務めながら、フィンランド国立KEMPELE花卉園芸学校マスターフローリスト科を卒業。ヘルシンキ市内でフラワーショップとスクールを経営。13年間の欧州での花仕事の後、2007年に帰国。東京・新御徒町の「LINOKA Kukka」で、北欧スタイルのフラワーデザインスクールを開校。ビギナー向け、プロ向けのコースがあるほか、フィンランド料理と民族楽器の演奏を楽しむワークショップも開催している。著書に『森の植物が教えてくれた 北欧フィンランドのフラワーデザイン』(六耀社)がある。
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