第48回
ツル植物のウォーターリース
夏が最盛期のツル植物を使ったリースを紹介します。リースの中央にたっぷりの水を入れて、反射する植物の影まで楽しめるウォーターリースです。
人生の糸
庭木として人気のクレマチスやジャスミン、アサガオなどのツル植物は、花が咲き終わると、ぐんぐんとツルを伸ばして、フェンスやほかの木々などに絡みつきます。この時季、フィンランドでは「エラマンランカ(Elämänlanka)」と呼ばれるヒルガオ科のツル植物が見られます。エラマンは「人生」、ランカは「糸」という意味で、「人生の糸」と呼ばれるゆえんは、途切れずに伸び続ける生命力の強さからでしょうか。庭やベランダなどで育てているツル植物は、刈り取ったものをリースにすれば2度楽しめます。
花材・道具:クレマチス(千人草)のツル/ジャスミンのツル/カーネーション(テマリソウ)/ルリタマアザミ/スプレーローズ/ブラックベリー/アルケミラモリス/カンガルーポー/レースフラワー/リース土台/ワイヤー/ハサミ(ナイフ)/吸水性フローラルフォーム/フラワーベース
フィンランドの湖をイメージする
今回のリースは、たっぷりの水を張ったフラワーベースの周囲をツル植物でぐるっと囲って作ります。ツル植物のすき間に好きな花をたくさん差し込んで、華やかなリースに仕上げましょう。イメージは、フィンランドの森の深いところに広がる湖。暑い夏に涼をもたらしてくれます。
1 フラワーベースの中に、水を吸わせた吸水性フローラルフォーム(第16回 食べて飲んで見て楽しいフラワーギフト「フローラルフォームの秘密」を参照)を置き、たっぷりの水を注ぎます。市販のリース土台などをほぐしたものを広げてフラワーベースに乗せて、Uピンでフローラルフォームとつないで動かないようにセットします。
2 リース土台にジャスミンとクレマチスのツルを絡めていきます。ジャスミンやクレマチスは水が下がりやすいので、切り口2cmくらいをハンマーで叩いて繊維を広げ、熱湯に20秒ほどつけてからたっぷりの水に入れておきましょう。
3 ジャスミンやクレマチスは、切り口のつぶれた部分をカットしてからフローラルフォームに挿して、リース土台に絡めていきます。絡めるときのポイントは、葉の表側が見えるように配置すること。うまく円形に収まらない場合は、ワイヤーや麻ひもなどで留めましょう。
4 リースのすき間に植物を挿していきます。ブラックべリーやテマリソウなどの茎が硬いものはフローラルフォームに挿して固定。カラーなどの茎が柔らかいものは、先端が水につかるように配置します。
5 最後、アクセントにカンガルーポーを挿します。「カンガルーの足みたいな形だから、カンガルーポー。ユニークな形ですね」とヘンティネンさん。
身近な植物と仲良くなる
涼やかなウォーターリースの完成です。アレンジメントを作るとき、私はたくさんの植物を用意します。今回も9種類を使いましたが、「この植物でなくてはいけない」というものはありません。ツル植物は、クレマチスやジャスミンがなければ、アサガオやアイビー、カラスノエンドウでもよいですし、バラの代わりにアジサイを用いてもよいでしょう。庭などの野草(雑草)だけでアレンジしても素敵なリースになりそうです。フラワーショップでも庭でも、植物を見かけたときに、「これはどんなふうにアレンジしたら楽しいかな」と考える時間が大切です。身近な植物と仲良くなれるよう、じっくり眺めてみてくださいね。
植物は水に挿してあるから、すぐには枯れずに数日楽しめます。上から覗き込んでも、横から見ても、どの角度からでも美しいリースです。デザインのテクニックを知りたい人は、ヘンティネン・クミさんが主宰する北欧フラワーデザイン教室で丁寧に教えてもらえます。6,500円(花資材・講師料・税込み)で受講できる体験レッスンもあります。(https://www.linoka.jp/)
また、著書『森の植物が教えてくれた 北欧フィンランドのフラワーデザイン』からも学べます。(詳しくはこちら)
また、著書『森の植物が教えてくれた 北欧フィンランドのフラワーデザイン』からも学べます。(詳しくはこちら)
ヘンティネン・クミ(へんてぃねん・くみ)さん
北欧フラワーデザイナー。13歳より池坊生花を学び、国内大手百貨店内のフラワーショップに10年間勤務。イギリス、オランダへ花留学したのち、1998年からフィンランドへ。北欧フラワーデザインのパイオニアであるヨウニ・セッパネン氏の専属アシスタントを務めながら、フィンランド国立KEMPELE花卉園芸学校マスターフローリスト科を卒業。ヘルシンキ市内でフラワーショップとスクールを経営。13年間の欧州での花仕事の後、2007年に帰国。東京・新御徒町駅上の「LINOKA Kukka」で、北欧スタイルのフラワーデザインスクールを開校。趣味のコースのほか、お花を仕事にしたい方への短期集中ディプロマ取得コースがある。著書『森の植物が教えてくれた 北欧フィンランドのフラワーデザイン』(六耀社)。