コラム 暮らしを彩るワンポイント菓子研究家・福田里香さんの
台所はいつもセレンディピティ

第6回 
自家製陳皮

無農薬のみかんが手に入ったら、皮までおいしくいただきましょう。ひと手間で有能なスパイスに変身。サラダ、スープ、麺類の味わいが広がります。

ホームメイド陳皮のすすめ

みかんの皮を乾燥させたものを陳皮(チンピ)といいます。陳皮は古くから漢方として、鎮咳薬や食欲不振の対処に用いられてきました。桂皮(ケイヒ)はシナモン、丁子(チョウジ)はクローブ、鬱金(ウコン)はターメリック……多くの漢方薬がスパイスであるように、陳皮も有能なスパイスです。「葉野菜とシトラスのサラダ」にかかってる黄色い粉が自家製の陳皮。サラダに、柚子にも似た爽やかな風味を添えてくれます。そろそろ生野菜をたっぷり食べたい陽気です。陳皮フレーバーのサラダはいかがでしょう?
第6回 自家製陳皮/菓子研究家・福田里香さんの【台所はいつもセレンディピティ】
葉野菜とシトラスのサラダ。葉野菜ミックスに、スライスしたラディッシュとワタごと食べれる小夏柑をオリーブ油で和えて塩コショウ。陳皮をふる。

やっぱり柑橘が好き

生まれも育ちも福岡です。九州のひとなら体感していると思うのですが、柑橘類に囲まれて育ったと言っても過言ではありません。大人になっていろんなおいしい果物を知りましたが、やっぱり、わたしの“ソウルフルーツ”は柑橘です。なかでも温州みかんに思い入れが深いのは、親戚がみかん農家だったから。先日友人から、庭木なので結果的に無農薬で育った、小ぶりのみかんをいただきました。みかんを食べたあとに残った果皮は、陳皮になると聞いて作ってみることに。
第6回 自家製陳皮/菓子研究家・福田里香さんの【台所はいつもセレンディピティ】
庭木のみかんを枝ごといただきました。

おいしい陳皮の作りかた

陳皮の作りかたはシンプルです。みかんを食べるたびに出る果皮をざるに並べて、天日で乾かすだけ。乾燥途中もすごくいい匂い。からからに乾燥したら、ミルで細かく粉砕します。少し粗くなりますがフードプロセッサーで砕いても大丈夫。驚くほど鮮やかなみかん色に仕上がりました。密封できるよう、ガラスびんなどに入れて保存。びんにじょうごを渡して菜箸などでつついて落とすときれいに入ります。
第6回 自家製陳皮/菓子研究家・福田里香さんの【台所はいつもセレンディピティ】
ひと手間を惜しまず、じょうごで入れる。こぼれがなくストレスフリー。細かいものを移すときは、ハンドル付きのじょうごが便利。

芳香と苦味も美味のうち

陳皮のアレンジを楽しみましょう。たとえば奄美大島の郷土料理「鶏飯(ケイハン)」は、ご飯に鶏肉、錦糸卵、海苔などをのせ、鶏スープをそそぎ、特産の桶柑(タンカン)の陳皮をふりかけます。芳香と苦味も美味のうちです。「いちいち、柚子を買ってられないな」というときに、陳皮を使ってみてください。まずは鍋やうどんかな。ようは柚子皮の代用です。市販の七味唐辛子に陳皮を足して、柑橘分多めのオリジナル七味にしてもいい。そばやスープ、サラダにも。陳皮の使い方、いろいろ広がりますね。
第6回 自家製陳皮/菓子研究家・福田里香さんの【台所はいつもセレンディピティ】
(左)台湾の意麺(イーメェン)を出汁でそば風に食べる。車麩と身かきにしんの甘露煮をのせて陳皮をふる。(右)カリフラワーとじゃがいものポタージュに陳皮とチリパウダー、黒こしょう。
福田 里香
福田 里香(ふくだ・りか)さん
福田里香さんが台所で出合った「セレンディピティ(偶然つかんだ幸運)」な一品を紹介してもらいます。
菓子研究家。武蔵野美術大学出身。フルーツの専門店で勤めたのち、独立。果物を使ったオリジナリティあふれるスイーツや料理で注目を集める。雑誌でフードコラムを担当しながら、『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)『新しいサラダ』(KADOKAWA)『R先生のおやつ』(文芸春秋)など料理本を多数出版。漫画への造詣も深く、作品に登場する食べ物の表現への考察は漫画ファンのみならず、漫画家からの評価も高い。美しい料理を次々とアップするInstagram(@riccafukuda)にはおいしいもの好きが集う。
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