第8回
初夏のサンドイッチ
福田さんの好きな軽やかなサンドイッチの話。はさむもの、塗るもの、具の並べ方はもちろん、パンの耳のおいしい食べ方まで教えてくれました。
薄手が好きという話
歳をとってきたら、だんだん厚手のものが苦手になってきました。え?何の話かといえば、コートやセーターなどの衣類の話です。なんか重いんですよね。これはサンドイッチにも言えることです。「インスタ映え」を気にする風潮も相まって、サンドイッチもどれだけ具を厚くはさんで、断面を華やかに見せるかを競っているというか、それが流行っています。だけどわたしは、薄手のカシミアのカーディガンのような、麻のスカーフのような、薄手のサンドイッチがやっぱり好きです。

初夏の野菜で作るサンドイッチは、緑一色の薄い断面。
薄手のグリーン サンドイッチ
今日家にあるもので作ってみました。だから、具はいっぺんに塩ゆでして作り置きしたアスパラガス、そら豆、スナップえんどうの残りです。10枚切りの食パンの耳を落とし、片方だけにマスタードを(お好みで)わりとたっぷりめに塗ります。サワークリームとマヨネーズを3:1くらいで混ぜたものを両方に塗ります。塗った面のどちらかに、具材を並べて、もう片方を重ねます。軽くおさえてラップで包み、冷蔵庫へ。お腹が空いたら、取り出して半分に切ります。紅茶とよく合いますよ。

(左)サワークリームを多めにするとさっぱりした味わい。(右)十字になるよう、横1列と縦1列を意識して具材を並べると切り口がきれい
サンドイッチとパンの耳問題
わたしの理想は、イギリス風のキューカンバーサンドや、日本橋室町の老舗「赤トンボ」のサンドイッチ。どちらも薄手で上品です。そうするとパンの耳は風味が強すぎて邪魔なので、切ってしまいます。もちろん捨てずに、パンの耳でもう1品。昔は揚げパンにしていましたが、今やこれもちょっと重いです。だから、オリーブ油をまぶし、オーブンで焼いて、揚げパンならぬ「焼きパンの耳ラスク」にします。

(左)横半分に切ったあと、縦半分にして、十字に切った切り口。(右)食パンの耳は、オリーブ油をまぶして「焼きパンの耳ラスク」に。
カリカリおいしい焼きパンの耳ラスク
1斤分の食パンの耳をボウルに入れて、オリーブ油を大さじ3程度まわしかけて、軽く混ぜて全体にまぶします。重ならないよう天板に並べて、予熱なしで180℃のオーブンに入れます。焼き色が付くまで10~15分焼いたら、100℃に下げて10分焼きます。そのまま庫内に置いて水分を完全に飛ばします。粗熱が取れたら器に盛り、塩とオレガノをふります。ハーブはお好みのもので。3時のおやつにぴったりです。

密封容器で保存しておいても便利。手でくだいて、クルトンがわりにスープにちらすと味がぐっとおいしくなります。

福田 里香(ふくだ・りか)さん
福田里香さんが、台所で偶然見つけたセレンディピティなレシピを教えてくれます。材料も作り方もシンプル。だからすぐに作りたくなります。
菓子研究家。武蔵野美術大学出身。フルーツの専門店で勤めたのち、独立。果物を使ったオリジナリティあふれるスイーツや料理で注目を集める。雑誌でフードコラムを担当しながら、『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)『新しいサラダ』(KADOKAWA)『R先生のおやつ』(文芸春秋)など料理本を多数出版。漫画への造詣も深く、作品に登場する食べ物の表現への考察は漫画ファンのみならず、漫画家からの評価も高い。美しい料理を次々とアップするInstagram(@riccafukuda)にはおいしいもの好きが集う。