コラム 暮らしを彩るワンポイント菓子研究家・福田里香さんの
台所はいつもセレンディピティ

第12回 
3種のお芋で、グラタン・ドフィノワ

空気が冷たくなると、熱々の料理が恋しくなります。思い立ったらすぐ、家にあるお芋で作れるフランスの郷土料理を紹介します。

フランス式の簡単グラタン

グラタン・ドフィノワは「ドフィネ風グラタン」という意味。フランス南東部のドフィネ地方の郷土料理です。ベースのベシャメルソースを作らずに、じゃが芋のスライスに生クリームと牛乳を注ぐだけ。オーブンで焼いているうちに、じゃが芋のでんぷん質で、ゆるくとろみがつくのでした。簡単で合理的、なのにおいしい。肌寒い秋風が吹く季節には、あったかいグラタンは何よりのごちそうです。
第12回 3種のお芋で、グラタン・ドフィノワ/菓子研究家・福田里香さん の【台所はいつもセレンディピティ】
芋と乳製品はおいしい組み合わせ。熱々をすくって取り分けて。

3種のお芋で作る

以前、グラタン・ドフィノワを作ろうとして「あれ、じゃが芋が足りない!」となったときに「他の芋でもいいんじゃない?」と、あり合わせのさつま芋と里芋を足して作ってみた。じゃが芋はほっくり、さつま芋は甘く、里芋はねっとり……思いがけず、楽しい味わいに仕上がりました。細かい分量は気にせずに3種合わせて450gくらいを用意し、皮をむいたらスライサーで厚さ2mm程度にスライス。でんぷんが大事ですから、水に晒(さら)さずに直径20cmの耐熱容器に直接入れてください。
第12回 3種のお芋で、グラタン・ドフィノワ/菓子研究家・福田里香さん の【台所はいつもセレンディピティ】
(上)家にあるお芋で! じゃが芋、里芋、さつま芋は、ざっくり合わせて450gが目安。
(下)3種のお芋はランダムに混ぜて重ねる。

味つけの話

伝統的なグラタン・ドフィノワの味つけは、耐熱容器の内側全体に皮をむいたにんにくを強くこすりつけてから、お芋を入れ、クリーム液をそそぐ方法。ほのかなガーリックフレーバーが食欲をそそります。にんにくが苦手なかたへのおすすめはナツメグ。生クリームと牛乳をそれぞれ200ml、すりおろしたナツメグ小さじ1/3、塩小さじ1/2を混ぜて、お芋を入れた耐熱容器に注ぎます。削ったパルミジャーノ10~20g(お好みで)をふりかけ、170℃のオーブンで30~40分焼けば出来上がり。
第12回 3種のお芋で、グラタン・ドフィノワ/菓子研究家・福田里香さん の【台所はいつもセレンディピティ】
わたしはナツメグ派。クリーム液を注ぎ、木べらで浮いているお芋を沈めたら、チーズをふりかける。

焼き加減のこと

オーブンはそれぞれクセがあります。火の強さはそれぞれ。170℃のオーブンで30~40分焼く、としましたが、焼きムラが出やすいなら途中で天板を180度回転させ、手前と奥を入れ替えてください。途中でチーズに焦げ色がつきすぎるようなら、アルミホイルでふわっと覆うか、温度を160度に下げてください。パルミジャーノじゃなくても、とろける系チーズならなんでも大丈夫。熱々はもちろんですが、冷めたグラタンもわたしは好きです。
第12回 3種のお芋で、グラタン・ドフィノワ/菓子研究家・福田里香さん の【台所はいつもセレンディピティ】
(上)こんがりキツネ色の焼き上がり。
(下)スプーンを差し込むと3種類のお芋が顔を出す。
福田 里香
福田 里香(ふくだ・りか)さん
福田里香さんの家の台所はおいしいレシピが生まれる場所。旬の食材を使った料理を教えてもらいましょう。
菓子研究家。武蔵野美術大学出身。フルーツの専門店で勤めたのち、独立。果物を使ったオリジナリティあふれるスイーツや料理で注目を集める。雑誌でフードコラムを担当しながら、『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)『新しいサラダ』(KADOKAWA)『R先生のおやつ』(文芸春秋)など料理本を多数出版。漫画への造詣も深く、作品に登場する食べ物の表現への考察は漫画ファンのみならず、漫画家からの評価も高い。美しい料理を次々とアップするInstagram(@riccafukuda)にはおいしいもの好きが集う。
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