第14回
黒胡椒の塩豚
手ごろな価格の豚のかたまり肉を見つけたら迷わず買ってほしい。豚のうまみを余すことなく堪能できる塩豚レシピを福田里香さんが紹介します。
わたしの好きな常備菜
新しい年のはじまりです。2021年のお正月休みも明けて日常に戻った今日この頃、冷蔵庫にあると安心なお惣菜って何でしょう? わたしの場合は「塩豚」です。塩豚は簡単な工程で作れる自家製ハムとも言えますね。ゆで時間は60分ほどかかりますが、実際に手を動かす作業は15分程度。そして作ってしまえば、長ーく楽しめて応用も利くところが気に入っています。では、作ってみましょう。

作っておけば、薄切りにするだけでおかずにも酒の肴にもなる。
時間のある日に煮ればOK
豚肉は重量600gくらいのかたまり肉であれば、部位はもも肉や肩ロース、豚バラなど、お好みで大丈夫です。豚肉が安ければ、今日は時間がない!という日でも買ってください。塩胡椒だけなら5分です。煮るのは翌日から5日後の間の時間のあるときでいいのだから、そのほうが断然お得。豚のかたまり肉600gの表面に、粗塩大さじ1と1/2をよく揉み込んで、全体にたっぷり黒胡椒を挽きかけてまぶす。

肉がばらけそうな場合は、たこ糸でしばれば安心。黒胡椒はたっぷり。
冷蔵庫は、熟成室
塩と黒胡椒をまぶした豚肉をキッチンペーパーで包み、さらにラップでぴったり密封して冷蔵庫に入れる。塩をまぶすことで肉に味が浸み、かわりに余分な水分が外に出て、お肉がおいしくなるんです。最短で作るなら翌日、最長で5日後が、豚肉を煮るタイミング。そう、1時間くらい時間が取れそうなときで大丈夫です。鍋に1L~1.5L程度の水(肉が全部浸かる量の水)を入れて火にかけ、沸騰したら弱火にして、ラップとキッチンペーパーを外した肉としょうがの薄切り4枚(長ネギ15cmでもいい)を入れ、60分煮る。

塩胡椒した豚肉をキッチンペーパーで包む。
塩豚のおいしい食べ方
アクが浮いたら取り除き、60分煮たら、ゆで汁に浸けたまま粗熱を取る。冷めたらゆで汁に浮いた脂を取り除き、肉を取り出す。薄切りにして器に盛り付けて完成。残りは冷蔵保存。刻んでチャーハンに入れたり、細切りにして麺に和えてもおいしい。豚肉の出汁が出ているゆで汁でもう1品作りましょう。ベイリーフ1~2枚、角切りじゃがいも1個、刻んだほうれん草1束と玉ねぎ1/4個をゆで汁に入れて煮れば、おいしいズッパ ディヴェルドゥーラ(野菜スープ)になります。

マヨネーズにマスタードとヨーグルトを混ぜたソースとグリーントマトを添えて。豆板醤や醤油でもおいしい。

ゆで汁で作るスープ。オリーブ油をたらし、チーズを削るとイタリアみが増しておいしい。

福田 里香(ふくだ・りか)さん
「今日のごはんはこれにしよう」。思わずつぶやいてしまう福田里香さんのおいしいレシピです。
菓子研究家。武蔵野美術大学出身。フルーツの専門店で勤めたのち、独立。果物を使ったオリジナリティあふれるスイーツや料理で注目を集める。雑誌でフードコラムを担当しながら、『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)『新しいサラダ』(KADOKAWA)『R先生のおやつ』(文芸春秋)など料理本を多数出版。漫画への造詣も深く、作品に登場する食べ物の表現への考察は漫画ファンのみならず、漫画家からの評価も高い。美しい料理を次々とアップするInstagram(@riccafukuda)にはおいしいもの好きが集う。