第55回
フライパンで焼くウェルシュケーキ
お茶の時間においしいイギリス伝統菓子。

冷めてもしっとりおいしい、お茶がすすむ焼き菓子です。
オーブン要らずの英国菓子
焼き菓子はオーブンが必要なレシピが多いですが、イギリスの伝統菓子として最近人気が高いウェルシュケーキはフライパンやホットプレートで焼けます。本来はグリドルと呼ばれる厚みがある鋳鉄製の鉄板を使いますが、家庭の道具で代用できるんです。素朴なお菓子ですが、スコーンともビスケットとも違う、口の中でホロリとほどける食感は他にはないおいしさ。バターにクロテッドクリーム、ジャム、レモンカード……どれを付けても合いますが、まずはそのままお茶と一緒に召し上がってください。
材料はボウルに混ぜていくだけ
ボウルに材料を順に入れていき、卵と牛乳を混ぜた液を加えて、ひとまとめにしたら生地の出来上がりです。冷蔵庫で30分生地を休ませたら、麺棒で厚さ8mmにのばして型で抜きます。よく温めたフライパンに油を薄く引いて、弱火で両面焼いてください。熱いうちに砂糖をまぶしてケーキクーラーで冷ましたら出来上がり。日持ちは2~3日が目安。レーズンを入れずにプレーンなウェルシュケーキにしてもおいしい。

材料(直径6~7cmの円形9~10個分)
*A薄力粉 120g
ベーキングパウダー 小さじ1/2
きび糖 40g
無塩バター 60g
レーズン 20g
*B
卵 1/2個分
牛乳 小さじ1
きび糖 適量
薄力粉 (打ち粉用) 適宜
サラダ油 適宜
【下ごしらえ】
* Aの薄力粉とベーキングパウダーを合わせて、ボウルにざるでふるい入れる。
* バターは冷蔵庫で冷やし、1cm角に切る。

1 Bを作る。卵を割り、よく混ぜて溶きほぐす。1/2量を取り分け、牛乳を加えて混ぜる。

2 薄力粉とベーキングパウダーをふるい入れたボウルにきび糖と無塩バターとレーズンを加えて指でつぶしながら粉類と合わせる。バターを溶かさないように手ですり合わせるように粉類となじませる。ポロポロした状態になればOK。

3 2に1を加え、ゴムべらで切るように混ぜる。しっとりとしたそぼろ状になったら、練らずに「ポロポロした生地を重ねては手のひらで押さえる」を繰り返してひとまとめにする。

4 3の生地を台に取った状態。

5 4をラップで包み、冷蔵庫で30分休ませる。
火加減は弱火で
5の状態で冷凍庫なら2週間ほど保存できます。使用する際は室温に置いて解凍して使います。生地をのばしたり、型で抜いたりするときは打ち粉をするのがコツです。

6 打ち粉をした台に5を取り、打ち粉をした麺棒で厚さ8mmにのばす。

7 打ち粉をした型で抜く。生地の切れ端は(練らずに)重ねてまとめ、麺棒でのばして再度抜く。

8 じっくり温めたフライパンにサラダ油を薄く引いて弱火にする。7をフライパンに入れる。片面3~5分を目処に焼いたら、フライ返しでひっくり返し、両面薄く焼き色が付くまで焼く。

9 熱いうちにきび糖をまぶしてケーキクーラーで冷ましたら出来上がり。
ウェルシュケーキは紅茶の親友
デパートで毎年開催される大人気の英国フェアですが、ここ数年スコーンと並んでウェルシュケーキの出店が増えています。紅茶との相性が抜群にいいということが知られてきたのだと思います。オーブンを使わない分、スコーンやヴィクトリアサンドイッチケーキより手軽です。ぜひ作ってみてください。

10 大皿にレースペーパーを敷いて並べてみました。

11 熱々の紅茶にウェルシュケーキを添えて。

福田 里香(ふくだ・りか)さん
菓子研究家。武蔵野美術大学出身。フルーツの専門店で勤めたのち、独立。果物を使ったオリジナリティあふれるスイーツや料理で注目を集める。雑誌でフードコラムを担当しながら、『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)『新しいサラダ』(KADOKAWA)『R先生のおやつ』(文芸春秋)など料理本を多数出版。漫画への造詣も深く、作品に登場する食べ物の表現への考察は漫画ファンのみならず、漫画家からの評価も高い。美しい料理を次々とアップするInstagramにはおいしいもの好きが集う。2024年1月、文春文庫から『物語をおいしく読み解く フード理論とステレオタイプ50』が発売。