第59回
きゅうりの翡翠めんつゆ素麺
緑のめんつゆが目にも鮮やか。さっぱりしてツルツルした喉越しに食欲が湧く元気が出る味。残暑や夏バテに負けないおいしさ。

きゅうり+ニンニク+梅干しで、出汁いらず。見慣れた食材を素麺と組み合わせるだけで、新しいおいしさに生まれ変わりました。
わたしの立ち話レシピ
友人の中でも料理上手として知られる奈良「くるみの木」の店主・石村由起子さん。由起子さんと立ち話をしていたら「きゅうり1本とニンニク少々を擦りおろして、醤油とお酢を加えて素麺のタレにするとすごくおいしい。私はそれにちょっとオリーブ油をかけるのよ」と教えてくださいました。聞いただけで材料を覚えるほどシンプル。速攻作ってみたら最高においしかった。麺の茹で湯にコシを与えるために入れる梅干しの再利用法を思いつき、お酢を梅干しに変えて、私流にアレンジしました。ぜひ、試してみてください。
きゅうりで作る翡翠めんつゆ
ほうれん草を練り込んだ緑色の麺を中華料理では「翡翠めん」と呼びますが、このレシピはきゅうりのめんつゆが翡翠のように美しいグリーンになるので「翡翠めんつゆ」と呼んでみました。材料は素麺、きゅうり、ニンニク、梅干し、醤油の5つだけ。作り方は簡単。梅干しを入れた湯で素麺を茹でて、氷水で冷やしてよく水切りします。素麺に擦りおろしたきゅうりの翡翠めんつゆと醤油を垂らし、手で裂いた梅干しをのせれば完成です。

材料(2束分)
素麺 2束*きゅうりの翡翠めんつゆ
冷えたきゅうり 1本
ニンニク 小1個(または普通サイズ1/2個)
醤油 小さじ1
梅干し 1個
*お好みで
オリーブ油 適宜

1 翡翠めんつゆを作る。きゅうりの両先端を取り除き、おろし金で擦りおろす。ニンニクも同様に擦りおろす。擦りおろしたきゅうりにニンニクを加えて混ぜたら、冷蔵庫に入れておく。
麺のコシは梅干しで
素麺を茹でる、ちょっとしたコツです。茹で湯に梅干しを加えると、梅干しの酸で湯が弱酸性になり、麺の澱粉が溶け出すのを抑える効果があります。そうするとくっつきにくくなり、麺にコシが出ておいしくなるんです。また、お料理屋さんみたいに素麺の流れをきれいに揃えたいときは、素麺の包み紙から麺の頭を出して、沸騰した湯に10秒程度、麺の先端を4mmほど浸けて引き上げると糊のように固まり、湯の中でバラバラにならないので、きれいに盛り付けることができます。

2 素麺の流れをきれいに揃える方法。やらなくてもOKですが覚えておくと便利。包み紙から麺の頭を出して、束をぎゅっと握ってすぼめて、沸騰した湯に10秒程度、麺の先端を4mmほど浸けて引き上げる。冷めたら湯に浸けた部分が接着する。
左:包み紙から麺の頭を出しただけの素麺。
右:先端がふやけて糊状にくっ付いた素麺。
左:包み紙から麺の頭を出しただけの素麺。
右:先端がふやけて糊状にくっ付いた素麺。

3 ボウルに氷水を用意しておく。鍋にたっぷり水を沸かし、梅干しを入れる。
沸騰したら素麺を入れ、菜箸でほぐしながら説明書に書かれた指定時間で茹でる。
沸騰したら素麺を入れ、菜箸でほぐしながら説明書に書かれた指定時間で茹でる。

4 ざるに3をあけて湯を切る。流水で洗ってぬめりを取り、氷水に梅干しごと入れてよく冷やす。

5 湯に浸けた部分が糊のように固まった部分のアップ。氷水から引き上げると束状になる。完全に冷めたら、ざるにあけてよく水気を切る。固まった部分を包丁で切り取り、器に盛り付ける。
梅干しはめんつゆに再利用
麺を茹でるときに加えた梅干しをめんつゆの酸味付けに再利用するのがポイントです。しっかり酸味が残っているから、梅干しをお酢の代わりに加えます。器に素麺を盛り付けて、冷やしておいた翡翠めんつゆをかけて、醤油を垂らします。梅干しを手でちぎって素麺の上に盛り付けたら完成です。よく混ぜて召し上がってください。石村由起子さん流にオリーブ油を追いがけしてもおいしい。

6 素麺の流れをきれいに揃えた盛り付け。擦りおろしたきゅうりの水分は色鮮やかな翡翠色。
福田 里香(ふくだ・りか)さん
菓子研究家。武蔵野美術大学出身。フルーツの専門店で勤めたのち、独立。果物を使ったオリジナリティあふれるスイーツや料理で注目を集める。雑誌でフードコラムを担当しながら、『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)『新しいサラダ』(KADOKAWA)『R先生のおやつ』(文芸春秋)など料理本を多数出版。漫画への造詣も深く、作品に登場する食べ物の表現への考察は漫画ファンのみならず、漫画家からの評価も高い。美しい料理を次々とアップするInstagramにはおいしいもの好きが集う。2024年1月、文春文庫から『物語をおいしく読み解く フード理論とステレオタイプ50』が発売。
