コラム 暮らしを彩るワンポイント北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの
フィンランド花通信

第60回 
針葉樹のブーケ

香り高い針葉樹(コニファー)をたっぷり使ったブーケです。クリスマスまで楽しめます。
第60回 針葉樹のブーケ/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】

クリスマスの準備

フィンランド語で11月は「marraskuu(マッラスクー)」と言います。北部ではすでに積雪があり、下旬から1月半ばまでの約1ヶ月半は極夜になります。夜が長く、しっとりとした冬らしい空気に包まれるこの時期。楽しみをもたらしてくれるのが、クリスマスの準備です。もみの木を家の中に運び込み、オーナメントやキャンドルで飾りつけ。クリスマスの妖精「tonttu(トントゥ)」の人形を置くのも定番です。日本でもツリーやリースを飾りますが、今年は針葉樹のブーケはいかがでしょう。針葉樹は、冬でも緑を保つ生命力があることから、「永遠の命」の象徴。魔除けの意味もあるのだそうです。
第60回 針葉樹のブーケ/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
花材・道具:ブルーアイス/ヒムロスギ/ヒバ/スギ/シンフォリカルポス/シルバーブローニア/マツカサ/リューカデンドロン ヒューベセンス/輪ゴム(ラフィア)/はさみ/ナイフなど

丁寧に葉を取る

ブーケを作る前に、必ず行っていただきたいのが、葉の下処理です。手に持つ部分、花瓶の水に浸かる部分の葉はすべてきれいに取り除いてください。基本は手で取りますが、針葉樹は、枝にぴったりくっついている葉もあります。よく見て、ハサミやナイフできれいに削っておきましょう。花瓶にブーケを入れた際に、取り除き切れなかった葉が水に浸かると、腐敗や雑菌の繁殖につながり、茎がぬかるんで植物が水を吸えなくなってしまいます。
第60回 針葉樹のブーケ/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
1 枝を1本手に取り、ブーケの持ち手になる部分の葉を取り除きます。指でしごくように下方向に引っ張ると簡単です。ただし、よく見ると枝にくっついている葉もあるので、しっかりチェックしましょう。
第60回 針葉樹のブーケ/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
2 使用する針葉樹1本1本、丁寧に取り除きます。
第60回 針葉樹のブーケ/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
3 針葉樹以外の花材の下葉も取り除きます。マツカサはワイヤーで茎を作って長さを足しておきます。作り方は、第11回 ツタを使ったアレンジメントを参照

スパイラルに束ねる

葉の下処理が終わったら、あとは花材をスパイラルに束ねていくだけ。スパイラルとは上から見たときにらせん状に見える束ね方です。ボリュームが出るので、花材が少なくても様になりますし、形も崩れにくく、美しさが保てます。さらに、茎が互いに押しつぶされず、通気性もよいので長持ちするというよさもあります。慣れるまでコツがいりますが、一度習得すれば「なんだ、こんなに簡単なことだったのか」と思えるはず。スパイラルの束ね方は、「第24回 バレンタインは友人にチューリップのブーケを」と「第53回 真冬のチューリップブーケ」も参考にしてください。
第60回 針葉樹のブーケ/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
4 まずは1本を親指と人さし指の間に置いて親指を閉じて握ります。親指を開けて、次の1本を左斜めに乗せます。これを繰り返していくのがスパイラルの基本です。
第60回 針葉樹のブーケ/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
5 親指で握っていた部分がスパイラルの支点になります。握りにくくなったり、ブーケの裏側を手前にしたいときは、支点が崩れないようにしっかり握って、ブーケを回します。
第60回 針葉樹のブーケ/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
6 すべての花材を束ねたら、茎をハサミでカットしてそろえます。
第60回 針葉樹のブーケ/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
7 1本の茎の下から輪ゴムを入れ、ブーケを握っている親指の上まで通してから、ぐるっと茎をふた巻きして輪ゴムの端をいずれかの茎にひっかけて留めます。ラフィアなどの紐を巻き付けて留めても。
第60回 針葉樹のブーケ/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
8 スパイラルに束ねたブーケは、ふわっと広がるので丸みのある花瓶に生けるとバランスが取れます。

漂白剤を数滴

きれいに葉の下処理をしたので、このままでも長持ちしますが、より長く美しく楽しみたい場合は、栄養剤やキッチンの漂白剤を数滴垂らしておくのがおすすめ。水が濁らないので、水換えも頻繁に行わなくてOKです。また、針葉樹はこのままドライになっても味わい深いので、壁に逆さに吊るしてスワッグのようにして飾ったり、そのまま棚の上に置いたりしてもいいでしょう。寒い冬も、植物とともに楽しく乗り切っていきましょうね。
第60回 針葉樹のブーケ/北欧フラワーデザイン協会・ヘンティネン・クミさんの【フィンランド花通信】
庭に針葉樹がある人は、剪定したときにぜひブーケにしてみて。白い実や花を一緒に束ねると、フィンランドの雪景色が表現できます。
デザインのテクニックを知りたい人は、ヘンティネン・クミさんが主宰する北欧フラワーデザイン教室で丁寧に教えてもらえます。趣味のコースでは、6,500円(花資材・講師料・税込み)で受講できる体験レッスンもあります。また、お花をもっと知りたい、お花を教えるようになりたい方のためのマンツーマンプライベートレッスンも始まりました。(https://www.linoka.jp/)
著書『森の植物が教えてくれた 北欧フィンランドのフラワーデザイン』からも学べます。(詳しくはこちら
ヘンティネン・クミ
ヘンティネン・クミ(へんてぃねん・くみ)さん
北欧フラワーデザイナー。13歳より池坊生花を学び、国内大手百貨店内のフラワーショップに10年間勤務。イギリス、オランダへ花留学したのち、1998年からフィンランドへ。北欧フラワーデザインのパイオニアであるヨウニ・セッパネン氏の専属アシスタントを務めながら、フィンランド国立KEMPELE花卉園芸学校マスターフローリスト科を卒業。ヘルシンキ市内でフラワーショップとスクールを経営。13年間の欧州での花仕事の後、2007年に帰国。東京・新御徒町駅上の「LINOKA Kukka」で、北欧スタイルのフラワーデザインスクールを開校。趣味のコースのほか、お花を仕事にしたい方や、基本からしっかりお花を学びたい方への完全プライベートレッスンのディプロマ取得コースがある。著書『森の植物が教えてくれた 北欧フィンランドのフラワーデザイン』(六耀社)。
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