ケンフェロールの作用①低酸素誘導因子『HIF-1α』を調節し、酸素を利用した細胞のエネルギー産生を助ける
私たちは栄養と酸素を利用し、細胞内の「解糖系」「クエン酸回路」「電子伝達系」という3つの過程を経た細胞呼吸によって生命活動に必要なエネルギーを作り出しています。(細胞でエネルギーを生み出すための3つの反応)
しかし細胞が低酸素環境におかれると、この3つの過程を経たエネルギー産生がなされなくなります。
ケンフェロールは、低酸素環境下において細胞に働きかけ、酸素を利用したエネルギー産生を助けるのです。
ヒトの体では、細胞が低酸素環境におかれると低酸素誘導因子と呼ばれるタンパク質「HIF-1α」が活性化し、エネルギー産生量が低下します。「HIF-1α」は、解糖系(嫌気的呼吸)からクエン酸回路・電子伝達系(好気的呼吸)につながるピルビン酸からアセチルCoAへの変換を阻害し、ミトコンドリアの活動を調節することで、酸素を使わない解糖系でのエネルギー産生を促進するのです。
これは、酸素が少ない状況でも最低限のエネルギーを生み出し、生命活動を維持させるために、細胞が自身を守ろうとする仕組みであると同時に、細胞のSOSと捉えることができます。

ケンフェロールは細胞が低酸素環境下でも酸素利用効率を高め、少ない酸素を効率良く利用できるようにするため、間接的にこの細胞内の低酸素環境により導かれる仕組みを緩和すると考えられます。実際、ケンフェロールは低酸素環境下で培養した細胞(筋芽細胞)において、HIF-1αの活性化を調節し、酸素を利用したクエン酸回路・電子伝達系でのエネルギー産生を助けることが明らかになっています。


MEAN±SD
*:P<0.05 vs 通常栽培 ケンフェロールなし 0h, †:P<0.05 vs ケンフェロールなし 12h
*:P<0.05 vs 通常栽培 ケンフェロールなし 0h, †:P<0.05 vs ケンフェロールなし 12h

MEAN±SD
*:P<0.05 vs ケンフェロールなし 21%, †:P<0.05 vs ケンフェロールなし 1%
*:P<0.05 vs ケンフェロールなし 21%, †:P<0.05 vs ケンフェロールなし 1%
- 細胞にケンフェロールを添加して、低酸素環境に暴露。その後、細胞内のHIF-αの発現量をウェスタンブロット法で測定した。なお、HIF-1αの相対的発現量は、内部標準で補正した。
低酸素環境:1%酸素条件
培養条件:37℃、5% CO2インキュベータ
- 出典:Akiyama, M. et al., J Nutr Biochem. 2022; 103: 108949.
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