細胞の低酸素状態で起こるヒトへの影響

私たちの細胞は栄養と酸素を利用してエネルギーを生み出していますが、
その酸素利用効率が低下すると、産み出すエネルギー量が減少し、ヒトの心身に様々な影響を及ぼすのです。

細胞の低酸素状態による体への影響

階段を上ると息切れがする。歩いていて体力がなくなったかも。何もしてないけど疲れやすい。熟睡できない。もちろん原因は様々ありますが、加齢や運動不足などから引き起こされる細胞の低酸素状態によるエネルギー不足から来ているものかもしれません。エネルギーは呼吸をするのにも、起き上がるのも、歩くのも、休息するのも、何をするのにも必要な生命活動の源。もし、細胞が低酸素状態だと、エネルギー産生量は当然減ってしまうため、その結果、体に様々な影響を及ぼしてしまうのです。

細胞の低酸素状態で起こる体への影響(一例)

  • 疲労感
  • 肩こり
  • 睡眠の質の低下
  • 体力の低下
  • 頭痛
  • 倦怠感
  • 腰痛
  • 冷え性
  • 息切れ
  • 肥満

細胞の低酸素状態による脳機能・心への影響

脳の前頭葉の大半を占める前頭前野は、考える、記憶する、感情をコントロールする、判断するなど、ヒトにとって重要な働きを担う場所ですが、その機能は10~20代をピークに衰えていくことが分かっています。
高齢になると、やる気や創造力が失われ、感情の変化が大きくなるのはこのためだと考えられています。
脳は体の中でもエネルギーを大量に消費する臓器のため、細胞の低酸素状態ではエネルギーが不足し、その機能が低下してしまいます。

前頭前野の働き:考える、行動や感情をコントロールする、コミュニケーションをする、記憶する、発想する、集中する、やる気を出す。

細胞の低酸素状態で起こる脳機能・心への影響(一例)

  • 記憶力の低下
  • 意欲・活力の低下
  • 注意力の低下
  • 判断力の低下

最大酸素摂取量と前頭葉機能の関係

ミトコンドリアの酸素利用能力の指標である最大酸素摂取量と、前頭葉の機能を年齢推移で見てみると、同じような曲線を描きます。ある研究では、この2つは相関関係にあるということも分かっています
酸素は、「体」だけでなく、「心」にも大きく関与しているのかもしれません。

  • 出典:Pantzar, A. et al., Front Psychol. 2018; 9: 2612.

監修:北翔大学大学院 生涯スポーツ学研究科 教授 沖田 孝一 先生

旭川市生まれ。旭川医科大学卒業後、北海道大学医学部循環病態内科学講座にて医師としての研鑽を積む。総合内科専門医、循環器専門医として心臓病患者の診療に従事しつつ、各種疾患の骨格筋における酸素利用障害に着目した運動生理学的研究および運動療法の研究に携わる。また、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会認定健康スポーツ医としてジュニア・トップアスリートの育成に関わり、現職に至っている。

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