貧血と酸素

貧血とは、血液中の赤血球の数、または赤血球に含まれるヘモグロビンの量が減少し、結果として酸素を全身に運ぶ能力が低下した状態です。ヘモグロビンは肺で酸素と結合し、全身の細胞に酸素を届ける重要な役割を担っています。酸素は、細胞の効率的なエネルギー産生に重要な役割を果たすため、貧血によって酸素供給力が低下すると、細胞のエネルギー産生が滞り、様々な不調が生じやすくなります。

酸素の役割

ミトコンドリアから産生されるATP

私たちの体は、食べ物から得た糖質や脂質を分解し、それらを材料として、生命活動の維持に必要なエネルギー(ATP)を作り出しています。このエネルギー産生の多くに関わっているのが「酸素」です。酸素は血液によって全身に運ばれ、細胞内のミトコンドリアで糖や脂質を燃やすために利用されます。

酸素が十分に供給されていると、効率よく大量のATPを作り出すことができ、筋肉や脳をはじめとする様々な臓器が正常に働くことで、私たちは日常生活や運動をスムーズに行えるのです。

酸素を運ぶ赤血球とヘモグロビン

酸素を体の隅々に運ぶのは「血液」の重要な役割のひとつです。私たちの体には体重1kgあたり約70mLの血液が流れており、そのうち約45%を占める血液細胞の99%以上が「赤血球」です。赤血球は直径7~8μmの中央がへこんだ円盤状をしており、柔軟性が高いため毛細血管を通り抜けることができます。

その内部にはヘモグロビンという赤色色素のタンパク質が存在し、肺で取り込んだ酸素と結合して、全身へ運ぶ役割を担っています。

酸素飽和度を示す図

細胞に酸素が届くと、ミトコンドリアで「細胞呼吸」が行われ、糖や脂質を材料に大量のATPが生み出されます。赤血球とヘモグロビンによる酸素運搬システムは、私たちが生きて活動するための基盤となっています。

貧血による酸素供給能力の低下

正常時と貧血時の酸素供給能力の違い

貧血は、血液中のヘモグロビンの濃度や赤血球数が減少し、酸素を運ぶ力が低下した状態です。酸素供給力が低下すると、細胞のエネルギー産生が滞り、様々な症状が生じやすくなります。

・集中力の低下・眠気(脳の活動低下)
・疲労感・倦怠感(全身のエネルギー不足)
・息切れ・動悸(酸素を取り込もうと心拍数・呼吸数の増加)
・めまい・立ちくらみ(脳への酸素不足)
・顔色の悪さ(赤血球減少による血色低下)
・手足の冷え(末梢への酸素供給不足)
・頭痛(脳への酸素不足)

・集中力の低下・眠気(脳の活動低下)
・疲労感・倦怠感(全身のエネルギー不足)
・息切れ・動悸(酸素を取り込もうと心拍数・呼吸数の増加)
・めまい・立ちくらみ(脳への酸素不足)
・顔色の悪さ(赤血球減少による血色低下)
・手足の冷え(末梢への酸素供給不足)
・頭痛(脳への酸素不足)

酸素供給力が低下する主な貧血のタイプ

貧血に悩んでいる女性

貧血にはいくつかの種類があり、その原因やメカニズムは様々です。ここでは代表的な貧血の種類と、それぞれが体の酸素供給に与える影響について見ていきます。

鉄欠乏性貧血

最も多いタイプの貧血です。鉄分が不足してヘモグロビンが十分に作られず、酸素の運搬能力が低下します。特に女性や成長期の子ども、妊娠・授乳中の方に多くみられます。

巨赤芽球性貧血

ビタミンB12や葉酸が不足することで、赤血球がうまく作られず、酸素を効率よく運べなくなります。

腎性貧血

腎機能が弱まることで、赤血球の産生を促すホルモン(エリスロポエチン)が減少し、慢性的に酸素供給力が低下します。

溶血性貧血

本来約120日ある赤血球の寿命が何らかの要因で短くなり、酸素供給力が低下します。

酸素供給力を保つために

酸素供給力を維持するためには、赤血球とヘモグロビンが正常に働くことが欠かせません。そのために重要となるのが、次のような栄養素です。意識して毎日の食事に取り入れましょう。

ヘモグロビンの主成分です。食品中に含まれる鉄には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」があり、ヘム鉄(吸収率は約20%)は動物性食品に、非ヘム鉄(吸収率は約5%)は植物性食品に多く含まれています。吸収率の低い非ヘム鉄も、食べ方を工夫することで、吸収効率をアップさせることができ、ビタミンCや動物性タンパク質と一緒に摂るのが効果的です。また、酢・柑橘類も胃酸分泌を上げ、鉄の吸収率を高めます。

ヘム鉄を多く含む食べ物
非ヘム鉄を多く含む食べ物
タンパク質
タンパク質を多く含む食品
タンパク質

タンパク質は赤血球やヘモグロビンの材料となるため、肉・魚・卵・大豆製品などをバランスよく取り入れることが大切です。吸収率の低い非ヘム鉄は、肉や魚などの動物性タンパク質と一緒に食べることによって体内への吸収率がアップします。

ビタミンC
ビタミンCを多く含む食品
ビタミンC

ビタミンCは特に非ヘム鉄の吸収を高める働きがあります。野菜や果物を毎日の食事に組み込むことで、鉄の利用効率が高まります。ビタミンCは新鮮な野菜や果物、イモ類に多く含まれています。

ビタミンB12・葉酸
ビタミンB12・葉酸を多く含む食品
ビタミンB12・葉酸

赤血球は体内で常に作りかえられており、ビタミンB12は葉酸とともに正常な赤血球が作られるのをサポートします。ビタミンB12はシジミやあさり、レバーなど、主に動物性食品に多く含まれ、葉酸は枝豆・ブロッコリー・モロヘイヤなどの緑色の野菜や果物、豆類に豊富です。

サプリメントの活用も
サプリメント
サプリメントの活用も

食事だけで補えないときは、サプリメントの活用も有効です。とくに鉄分は体内で合成できない栄養素のため、食事を中心に必要に応じてサプリメントで補うことも検討しましょう。なお、サプリメントの多くは非ヘム鉄であるため、ビタミンCや動物性タンパク質と一緒に摂ることで吸収効率が高まります。バランスよい食事を心がけましょう。

  • ※栄養状態に不安がある場合は、医療機関での検査や専門家のアドバイスを受けることが大切です

酸素供給力を保つことは、日常生活や運動を快適に行うための土台となります。赤血球やヘモグロビンの働きを支える栄養素を意識して、バランスの取れた食生活を心がけましょう。必要に応じてサプリメントを活用することも有効です。なお、疲労感や息切れなどの症状が続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

監修:彦根市立病院 地域連携センター長 血液内科部長 吉川 浩平 先生

滋賀県東近江市生まれ。滋賀医科大学を卒業後、同大学医学部消化器・血液内科学講座にて医師として研鑽を積む。血液内科専門医として造血器疾患の診療に従事する傍ら、救急医療や災害医療にも携わっている。心肺蘇生トレーニングコース(ICLS)および内科救急対応教育プログラム(JMECC)のディレクターとして後進の指導にあたり、統括DMAT隊員として災害現場での活動も行っている。

この記事をシェアする