集中力・判断力と酸素

集中力が続かない、判断ミスが増えた…。それは脳のエネルギー不足が原因かもしれません。
ここでは、酸素と脳のエネルギー産生の関係に着目し、脳機能への影響について解説します。

脳は酸素を大量に必要とする臓器

ヒトの脳の酸素消費量

ヒトの脳は、体重のわずか約2%しか占めませんが、全身の酸素消費量の約20%を使うほど多量のエネルギーを必要としています。脳には約1,000億個程度のニューロンと呼ばれる神経細胞があると言われており、シナプスを介して情報をやりとりしています。これらの活動を支えるために欠かせないものがブドウ糖と酸素です。

特に、集中力や思考力、判断力などの脳の働きには膨大なエネルギーが必要です。そのため、脳の働きと酸素の供給は車の両輪のように密接に関わり合っています。

酸素とブドウ糖から産生されるATP

呼吸によって取り込まれた酸素は、肺でヘモグロビンと結合し、動脈を通じて脳に届けられます。そしてブドウ糖とともに毛細血管から脳組織へ送り込まれ、ATP(アデノシン三リン酸)という形のエネルギー源を生み出します。このATPを使うことで、脳は正常に機能し続けることができるのです。

さらに、脳には酸素やブドウ糖を蓄えておく仕組みがありません。常に血液の流れによって酸素とグルコースを補給し続けることで、はじめて脳の活動が保たれているのです。

さらに、脳には酸素やブドウ糖を蓄えておく仕組みがありません。常に血液の流れによって酸素とグルコースを補給し続けることで、はじめて脳の活動が保たれているのです。

脳のエネルギーが集中力・判断力を支えるしくみ

私たちが日常で発揮する集中力や判断力は、脳のエネルギーによって支えられています。脳の仕組みとともに、具体的な関わりについて見ていきましょう。

神経細胞の情報伝達を支える
脳の神経細胞のイメージ
神経細胞の情報伝達を支える

神経細胞は、シナプスというニューロン同士の接合部で、神経伝達物質を放出・受容・再取り込みといったプロセスを通じて情報を伝えています。この一連のプロセスにも大量のエネルギー源である、ATP(アデノシン三リン酸)が必要です。脳内では無数の神経細胞が絶えず活動しているため、ATPの生成と、ブドウ糖と酸素の供給が途切れることなく続くことが重要です。脳のエネルギーが保たれていることで、集中しやすくなったり、判断がスムーズになることが期待されます。

集中力や意思決定を担う前頭前野

集中力や判断力などの中心的な役割を果たしているのが「前頭前野」です。前頭前野はちょうど額の裏側あたりに位置し、脳の中でも高度に進化した領域です。思考、意思決定、創造性、問題解決、記憶、感情のコントロールなど、多岐にわたる機能に関与しており、日常生活のさまざまな場面で重要な役割を果たしています。

脳の前頭前野の機能
集中力や意思決定を担う前頭前野

集中力や判断力などの中心的な役割を果たしているのが「前頭前野」です。前頭前野はちょうど額の裏側あたりに位置し、脳の中でも高度に進化した領域です。思考、意思決定、創造性、問題解決、記憶、感情のコントロールなど、多岐にわたる機能に関与しており、日常生活のさまざまな場面で重要な役割を果たしています。

この前頭前野は、脳の中でも代謝活動が非常に活発な部位であるため、機能の維持に多くの酸素とエネルギーを必要とします。加えて、ストレスや加齢、睡眠不足などの影響を受けやすく、エネルギーが不足すると機能低下を起こしやすいことが知られています。その結果、不注意や判断力の低下、感情コントロールの難しさといった、さまざまな問題が現れやすくなります。前頭前野の働きを保つためには、日頃から十分な酸素とエネルギーを脳に供給する生活習慣やストレス管理がとても大切です。特に集中力や判断力を求められる場面では、脳のエネルギー状態がパフォーマンスを左右するカギとなるのです。

この前頭前野は、脳の中でも代謝活動が非常に活発な部位であるため、機能の維持に多くの酸素とエネルギーを必要とします。加えて、ストレスや加齢、睡眠不足などの影響を受けやすく、エネルギーが不足すると機能低下を起こしやすいことが知られています。その結果、不注意や判断力の低下、感情コントロールの難しさといった、さまざまな問題が現れやすくなります。前頭前野の働きを保つためには、日頃から十分な酸素とエネルギーを脳に供給する生活習慣やストレス管理がとても大切です。特に集中力や判断力を求められる場面では、脳のエネルギー状態がパフォーマンスを左右するカギとなるのです。

健やかな脳を保つために
窓辺でリフレッシュをする女性
健やかな脳を保つために

現代は情報量も多く、多量の情報を処理するために脳が休みなく活動し、エネルギーを多く消費する場面は少なくありません。また、ストレスにより浅く速い呼吸が習慣化すると、自律神経のバランスが乱れやすくなり、睡眠不足や血流の悪化を招き、脳が十分に休息できなくなります。脳が疲労すると、集中力・記憶力・判断力などが低下して、日常生活や仕事に支障をきたすことも。
脳の活動を支えるエネルギー源となる糖質やエネルギー産生を助けるビタミンB群などの栄養、休養や睡眠、リフレッシュの習慣を意識することは、脳のエネルギー状態を整えるサポートになるでしょう。

エネルギーの生成を助ける生活習慣と対策

脳のパフォーマンスを保つには、日常生活での工夫が大切です。エネルギー生成を促すために、今日から実践できる具体的な方法を紹介します。

意識的にゆっくり深呼吸をする
ゆっくり深呼吸をする女性
意識的にゆっくり深呼吸をする

呼吸を意識的にゆっくり深く行うことで、体内に酸素を効率よく取り込み、ATP産生を支えます。特にデスクワーク中などは、自然と呼吸が浅く速くなりやすいので、吐く息を長めにすることを意識してゆっくり深い呼吸をする習慣をつけることが大切です。それにより、脳に酸素を送ることはもちろん、副交感神経活性化によるストレス軽減を通じて、集中力の維持に役立つ可能性があります。

正しい姿勢の維持と座りすぎ対策
ストレッチをして姿勢を正す女性
正しい姿勢の維持と座りすぎ対策

猫背や前かがみの姿勢は肋骨の動きを制限し呼吸が浅く速くなるため、ATP合成に必要な酸素供給を妨げます。定期的に姿勢を正し、ストレッチや軽い運動を取り入れましょう。また、座りすぎは血流を悪化させ、酸素や栄養素の供給を阻害します。酸素や栄養素が細胞に十分に供給されなくなると、ATP産生が阻害されエネルギー不足につながります。30分に1回は立ち上がって歩くなど、こまめに体を動かすことが大切です。

鉄分やビタミンB1などの栄養素を摂る
鉄分やビタミンB1を含む食品
鉄分やビタミンB1などの栄養素を摂る

栄養バランスのよい食事を3食しっかり取り、脳の活動に必要なエネルギー源を十分に摂取することが大切です。

鉄分はヘモグロビンの主成分として脳へ酸素を運ぶ役割を担っています。また、糖質は脳の主要なエネルギー源となる栄養素であり、その糖質を体内で利用できるエネルギーに変えるには、代謝を助けるビタミンB1が欠かせません。ビタミンB1を多く含む豚肉(特にヒレ・もも)やうなぎ、かつおなどを積極的に食事に取り入れるようにしましょう。

室内のこまめな換気
窓を開けて換気をしている女性
室内のこまめな換気

締め切った環境では、空気中の二酸化炭素濃度が上がり酸素濃度は下がります。体では脳血流を増やすなどの補償作用が働くので脳への酸素供給はそれほど落ちませんが、二酸化炭素濃度の増加が直接、脳に悪影響を及ぼし、集中力や判断力などが低下するとされています。定期的に換気を行って室内の二酸化炭素量を減らし、新鮮な空気を取り入れるようにしましょう。

脳の神経細胞はATPというエネルギー源を使っていて、エネルギーの生成には酸素が欠かせません。エネルギー不足は、集中力・思考力・判断力の低下や脳疲労につながります。日々の呼吸法、姿勢の改善、必要な栄養素の摂取、適度な運動などを心がけて、脳のエネルギー環境を整えることが、脳のパフォーマンスを引き出し、支える土台となるのです。

監修:名古屋大学総合保健体育科学センター センター長 教授 石田 浩司 先生

兵庫県生まれ。神戸大学教育学部卒。同大学院教育学研究科修士課程を修了後、名古屋大学総合保健体育科学センターに勤務。医学系研究科協力講座を兼担。名古屋大学で医学(博士)を取得。運動生理学、特に運動と呼吸について研究を進め、低酸素環境、認知課題遂行時など、様々な環境・状態での運動中の呼吸循環応答を研究。ブルーバックス「呼吸の科学」執筆。授業では主に一般教養で運動生理学を講義するとともに、体育実技のバドミントンやテニスも教えている。

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