肌と酸素

肌はその状態によって、人を年齢以上に若くも老けても見せるもの。そのため、さまざまなケアの方法が巷間に伝えられています。
健康でイキイキとした肌を保つには、酸素も重要な働きをしています。

肌にはたくさんの役割がある

肌の状態をチェックする女性

シミやしわが増えた、たるんできた…そんなふうに肌の状態を毎日チェックしていても、肌(=皮膚)がそもそもどんな役割を果たしているか、答えられない人も多いかもしれません。

肌は人体で最大の臓器で、広げると面積は大人で約1.6m2、畳1畳分ほどもあります。

肌の重要な役割としては、体の表面を覆って、外部の刺激やウイルスから体内の器官などを守ること。ケガをして肌の内側の肉の部分が表に出ると、とても痛いですよね。それを想像すると、肌に守られていることを実感できるのではないでしょうか。

人体の約60%を占める水分の蒸散を防ぐのは、肌の役割です。

また、肌は外界から自身を守ると共に、外界の情報を伝える感覚受容器としての働きもあります。目、耳、鼻、舌と並んで、五感と称されるひとつが肌の感覚です。しかし、他の感覚に比べて、肌で感じているという自覚が少ないかもしれません。

肌の重要な役割としては、体の表面を覆って、外部の刺激やウイルスから体内の器官などを守ること。ケガをして肌の内側の肉の部分が表に出ると、とても痛いですよね。それを想像すると、肌に守られていることを実感できるのではないでしょうか。

人体の約60%を占める水分の蒸散を防ぐのは、肌の役割です。

また、肌は外界から自身を守ると共に、外界の情報を伝える感覚受容器としての働きもあります。目、耳、鼻、舌と並んで、五感と称されるひとつが肌の感覚です。しかし、他の感覚に比べて、肌で感じているという自覚が少ないかもしれません。

汗をかいている女性

肌にある触覚、圧覚、痛覚、温覚、冷覚の受容器が受けた刺激が、脳に伝わると、感覚に応じた反応が肌で行われます。たとえば、温覚で暑さを感じたら、肌の汗腺から汗を出します。冷覚で寒さを感じたら、肌の下の血管が縮まり、血流を減らして熱が外に逃げないようにします。このように、体温を調節するのも肌の働きのひとつです。

肌はいくつもの層で構成されている

肌は、たくさんの層が重なって構成されています。まず、大きく分けて「表皮」と「真皮」、「皮下組織」の3つが重なってできています。

表皮は、わずか0.2mmの薄い膜です。外側から順に「角質層」「顆粒層」「有棘層」「基底層」という4つの層があります。

肌の構成

表皮は、わずか0.2mmの薄い膜です。外側から順に「角質層」「顆粒層」「有棘層」「基底層」という4つの層があります。
外側の角質層は、水分を保ったり、外界から肌を守るためのバリア機能があります。その元となる細胞は、表皮のいちばん内側の基底層で作られます。これが徐々に肌の表面へ押し上げられて、最後は垢となりはがれ落ちていきます。

そのサイクルは、約4週間=28日間で、これを「ターンオーバー」と呼びます。ターンオーバーがスムーズに行われ、常に古い細胞が新しい細胞に生まれ変わっていると、健康な肌が保たれるのです。

そして、表皮の内側にある真皮は、肌の土台となる部分。こちらは2~3mmほどの厚さがあります。

真皮には、美容成分としてよく知られるものが多くあります。「コラーゲン」は、真皮の70~80%を占め、柱のような働きで肌を支え、肌のハリや弾力の維持に働きます。

真皮の構成

「ヒアルロン酸」は1gで500gもの水分を抱え込み、潤いやボリュームを保ちます。

「エラスチン」はコラーゲンを束ねるゴムのような役割を果たし、柔軟性を保ちます。

これらの成分はすべて「線維芽細胞」から作られます。線維芽細胞には、古い成分を分解して新陳代謝を促す働きもあります。

そして、肌の最も内側の皮下組織には、動脈や静脈が通っています。ここから真皮の毛細血管に血液が送られます。

そして、肌の最も内側の皮下組織には、動脈や静脈が通っています。ここから真皮の毛細血管に血液が送られます。

肌の細胞や成分は、栄養素と酸素を利用して作られたエネルギーで合成される

このように、健康な肌を構成する細胞や成分の生まれ変わりには、栄養素を主に酸素を利用して作られたエネルギーであるATPが使われます。

酸素により肌が健康に保たれているイメージ

酸素が十分に活用されて、エネルギーが潤沢にあれば、表皮の細胞は順調に生まれ変わって、ターンオーバーがスムーズに進み、健康な肌が保たれていきます。一方、酸素の供給や利用が不十分になると、ATPが不足し、ターンオーバーが乱れて乾燥やシミ、肌荒れなどのトラブルが生じます。

また、線維芽細胞が真皮の成分を生み出す際にも、酸素を利用したATPが使われます。その結果、ハリや弾力のある若々しい肌が保たれます。酸素が十分に活用されず、エネルギー不足だと、肌の成分が十分作られず、シワやたるみなどの肌老化につながります。

また、線維芽細胞が真皮の成分を生み出す際にも、酸素を利用したATPが使われます。その結果、ハリや弾力のある若々しい肌が保たれます。酸素が十分に活用されず、エネルギー不足だと、肌の成分が十分作られず、シワやたるみなどの肌老化につながります。

表皮や真皮に酸素を届ける毛細血管の図

このように肌にとって重要な酸素は、血液によって運ばれますが、表皮や真皮には「毛細血管」を通して届けられます。皮下組織の静脈や動脈とつながる毛細血管は、髪の毛の10分の1というほど細く、血流が悪くなりがちです。肌の健康を守るには、血流を良くし、酸素を隅々まで届けられる状態を保つことが必須です。

なお、酸素は肌再生のエネルギー源となるATPを作り出す一方、肌を劣化させる物質も生んでしまいます。ATPが作られる過程では、酸素の数%が「活性酸素」に変化します。この活性酸素は、コラーゲンなどの肌成分を酸化して劣化させたり、線維芽細胞にダメージを与えて新しい成分の生成を妨げることで、肌の老化を促します。健康な肌を維持するには、活性酸素の害を取り除くこともポイントになります。

なお、酸素は肌再生のエネルギー源となるATPを作り出す一方、肌を劣化させる物質も生んでしまいます。ATPが作られる過程では、酸素の数%が「活性酸素」に変化します。この活性酸素は、コラーゲンなどの肌成分を酸化して劣化させたり、線維芽細胞にダメージを与えて新しい成分の生成を妨げることで、肌の老化を促します。健康な肌を維持するには、活性酸素の害を取り除くこともポイントになります。

肌を健康に保つ栄養や成分

肌の原料となるタンパク質を摂る
タンパク質を含む食品
肌の原料となるタンパク質を摂る

肌の細胞の原料となるのはタンパク質です。食事で摂るタンパク質が足りないと、新しい健康な細胞が作られず、肌はどんどん衰えてしまいます。
しかも、タンパク質は、脳や内臓など、生命維持に重要な器官から優先的に使われるため、肌に回ってくるのは最後の方です。毎日、必要量のタンパク質をしっかり摂りましょう。
なお、タンパク質を利用した肌細胞の形成には、ビタミンCと鉄のサポートが必要です。バランスよく栄養を摂ることが、健康な肌への近道となります。

ビタミン「ACE」などターンオーバーを促し、抗酸化力のある成分を摂る
ビタミンACE(エース)の図
ビタミン「ACE」などターンオーバーを促し、抗酸化力のある成分を摂る

健康な肌のために摂りたいのが、抗酸化成分のビタミンA・C・E。「ビタミンACE(エース)」などと呼ばれています。まずビタミンA(β-カロテン)には、肌のターンオーバーを促進し、新しい肌細胞の生成を促す役割があります。ビタミンCは、メラニン色素の増加を防いでシミの予防に。ビタミンEは、血行促進に働きます。これらは互いに補完する働きがあるので、一緒に摂るのが効果的です。ほうれん草、かぼちゃ、豆苗、モロヘイヤなどは、ACEのいずれも豊富なので、積極的に摂りましょう。

また、ビタミンB群は、皮脂をコントロールしてニキビを防いだり、肌のターンオーバーの正常化にも働きます。B群をまとめて摂れる代表がレバー。焼き鳥のレバー1串分で多くの栄養がカバーできるので、おすすめです。

  • 野菜に含まれるβ-カロテンは、体内でビタミンAに変化します。
「ケンフェロール」でエネルギー産生を助ける
ケンフェロール分子構造図
「ケンフェロール」でエネルギー産生を助ける

ケンフェロールはポリフェノールの一種。ミトコンドリアの酸素利用を効率的にし、エネルギーであるATPの産生をサポートする可能性があります。

肌を健康に保つ生活習慣

紫外線を防ぐ
日傘を差して紫外線を防ぐ女性
紫外線を防ぐ

太陽光の紫外線に当たると活性酸素が発生します。そのため、日焼けして肌が黒くなるだけでなく、老化させます。これを「光老化」と言い、肌が老化する原因の8割は紫外線の害ともされています。日焼け止めや日傘などを使って、紫外線をしっかり防ぐことが大切です。

十分な睡眠をとる
ベッドで睡眠を取る男性
十分な睡眠をとる

肌の新陳代謝は、寝ている間に行われます。睡眠が足りないと、肌が生まれ変わらず、老化が進みます。また睡眠不足はストレスを増やし、肌にも影響を与えます。必要な睡眠量は人によって違うため個人差はありますが、6~7時間を目安に睡眠を取りましょう。

入浴や運動で血行を良くしたり、汗をかく
ジムで運動をする女性
入浴や運動で血行を良くしたり、汗をかく

入浴で体を温めたり、運動することで血行がよくなると、新しい酸素や栄養がめぐりやすくなり、肌代謝をサポートします。また、汗は肌をうるおし、皮脂と混ざることで“天然のクリーム”として肌を保湿する効果もあります。ただし、ふだんから汗をかきなれていないと、ミネラルなどを含んだベタベタした汗になるので、汗をかく機会を増やしましょう。

肌を清潔に保つ
洗顔をする女性
肌を清潔に保つ

肌のケアといえば、高機能の化粧品を使うことに気を取られがちですが、まず大切なのは、肌の不要な汚れを落として清潔に保つことです。特に男性は、皮脂量が女性の2倍ほども多く、年を重ねても分泌量があまり変わりません。皮脂が目詰まりを起こして吹き出物ができたり、肌荒れの原因にもなります。洗顔は朝晩2回、皮脂が取れるようぬるま湯で行う。洗顔料は泡立てて使い、ゴシゴシこすらず、よくすすぐといった基本を守って洗いましょう。

まとめ

健康な肌を保つには、栄養と酸素から得られるエネルギーによる細胞の生まれ変わりと、劣化を防ぐ生活習慣が欠かせません。毎日の暮らしを整えて、若々しい肌を育てましょう。

監修:産婦人科専門医・皮膚科医 山村 菜実 先生

東京女子医科大学卒業後、東京慈恵会医科大学附属病院等を経て、産婦人科専門医と抗加齢医学会専門医を取得し、美容肌科のクリニックを開設。産婦人科医としての経験を活かして、婦人科領域の美容施術も行っている。

この記事をシェアする