最大酸素摂取量を向上させるトレーニング

持久系スポーツを行うアスリートにおいて重要な指標である最大酸素摂取量(VO2max)。その向上のためには、90〜100%VO2maxの運動強度が最適であり、かつ頻度と1回あたりの継続時間も影響するという報告があります※1。しかし、90〜100%VO2maxといった高強度のトレーニングを長時間継続するのは困難であるため、強度を下げ、頻度や継続時間でカバーする方法や、高強度の運動の途中で休憩や低強度の運動を取り入れるレペティショントレーニングやインターバルトレーニングなどの方法があります。

強度別の運動目安時間・運動休息比・セット

強度別の運動目安時間・運動休息比・セット
  • 出典:アスリートのためのトータルコンディショニングガイドライン,p.223,表5,2023より作成

また、最大酸素摂取量は「健康のバロメーター」とも言われており、アスリート以外においても重要な指標です。厚生労働省は日本人の性年代ごとにその基準値(生活習慣病などの発症やそれらによる死亡のリスクを低下させることが期待される値)を設定すると共に、最大酸素摂取量の向上のために、40〜60%VO2maxの中強度で、1回10分以上、合計30分間、週あたり3回以上の継続実施を推奨しています※2。アスリートにおいては自身のパフォーマンスに関わると共に、全ての人の健康において重要な指標でもある最大酸素摂取量を向上させる上では、効果と安全のバランスを考えて、その人自身に適した方法でトレーニング・運動を行うことが重要です。

  • ※1 Wenger HA. et al., Sports Medicine. 1986; 3(5):346–56. ※2 標準的な運動プログラム(厚生労働省)

監修:北翔大学大学院 生涯スポーツ学研究科 教授 沖田 孝一 先生

旭川市生まれ。旭川医科大学卒業後、北海道大学医学部循環病態内科学講座にて医師としての研鑽を積む。総合内科専門医、循環器専門医として心臓病患者の診療に従事しつつ、各種疾患の骨格筋における酸素利用障害に着目した運動生理学的研究および運動療法の研究に携わる。また、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会認定健康スポーツ医としてジュニア・トップアスリートの育成に関わり、現職に至っている。

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