PMSと月経困難症

PMSに似た不快を月経期間中に感じる場合は「月経困難症」の可能性があります。強い下腹部痛や腰痛といった、いわゆる「月経痛」と呼ばれる症状のほか、頭痛や疲労感、イライラなどの症状が出ることもあるようです。月経困難症は2つの種類に分けられます。月経困難症とは何か、PMSと比較しながらみていきましょう。

PMSと月経困難症の違い

PMSと月経困難症の違いはまず、症状が月経前に出るか月経中に出るかにあります。PMSは月経の始まる前、3~10日のあいだに続く精神症状や身体症状を指します。月経開始とともに症状が弱くなるか、解消されるというのも特徴です。
一方、月経困難症は月経中にあらわれる強い下腹部痛や腰痛をはじめとする、不快な症状を指します。症状は多いものから順に、下腹部痛、腰痛、腹部膨満感、嘔気(吐き気)、頭痛、疲労・脱力感、食欲不振、イライラ、下痢、憂うつ……とされます。(※1)
月経困難症は、子宮が過剰に収縮することなどを原因とする「機能性月経困難症」と、子宮などに何らかの病気が潜んでいるために起きる「器質性月経困難症」に分けられます。

痛み物質がかかわる機能性月経困難症

機能性月経困難症は、初経を迎えてから2~3年たち、月経周期や期間・量などが安定してくる時期に始まります。月経の初日や2日目ごろに症状が強く出るようです。子宮内膜で作られる痛みの物質(プロスタグランジン)が多くなり、子宮の筋肉が過度に収縮するため血行が悪くなり、腹痛などの症状が生じると考えられています。若いうちは月経への不安や恐怖、嫌悪、緊張といった心理的な要因も影響すると考えられます。(※2)

月経痛の原因はプロスタグランジン

イメージ図

機能性月経困難症の治療法

機能性月経困難症にはプロスタグランジンの関わりが深いので、プロスタグランジンの生成を抑える「非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)」というグループの鎮痛薬や、ホルモン療法薬の「低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬」などが用いられます。このほか、漢方薬や鎮痙薬(子宮の痙れんや収縮を抑える薬)が有効な場合もあります。(※2)

ほかの病気が潜む器質性月経困難症

学校や仕事に行けなくなるなど日常生活に支障が出たり、鎮痛薬を飲んでも効かなくなったりするほど症状が重い場合は、子宮内膜症や子宮筋腫といった病気を原因とする月経困難症の可能性があります。これを器質性月経困難症といいます。

一番気をつけなくてはならないのは、器質性月経困難症に潜む、婦人科系の病気です。
つらい症状が続くなら、できるだけ早く婦人科を受診してください。

※1 産科婦人科用語集・用語解説集 改定第4版;日本産科婦人科学会編,60,2018
※2 産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2020;日本産科婦人科学会, 日本産婦人科医会: 106-107, 2020

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