PMSの原因

PMS(月経前症候群)の原因には、月経をコントロールする「性ホルモン」が関わっていると考えられます。PMSの症状が、排卵から月経までのあいだに繰り返されるという特徴があるからです。原因について詳しくみてみましょう。

【原因1】性ホルモンのバランス

性ホルモンには、脳の視床下部から下垂体、下垂体から卵巣、卵巣から子宮へと指令を出す各ホルモンがあります(下イラスト参照)。これらのなかで注目したいのは、卵巣が出す「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」です。
かつては、この2つのホルモンの分泌量や両者のバランスがPMSの発症に影響しているのではないかと考えられていました。しかし、PMSの患者とそうではない人で、これらのホルモンの血中濃度を比べてみると、両者に差がないことも分かってきました。そこで現在では、この2つを含む性ホルモンが月経周期にともなって変動することでPMSの症状が現れるのではないか、という説が出てきています。(※1)

【原因2】2つの性ホルモンの増減

エストロゲンは排卵前に多く分泌される性ホルモンで、気分・認知・睡眠・食欲・行動などを調節する働きがあります。
一方、プロゲステロンは排卵後に出る性ホルモンです。プロゲステロンは排卵直後から分泌量が増え、月経開始の1週間くらい前から減り始めます。プロゲステロンが減ると、「ガンマアミノ酪酸(GABA)」や「セロトニン」といった、気分を落ち着かせたり、不安感を取り除いたりする神経伝達物質がうまく働かなくなります。
エストロゲンもプロゲステロンと同様、「セロトニン」を調整する働きがあるため、この2つの性ホルモンの増減が影響し、PMSを引き起こしている可能性があります。

【原因3】交感神経・副交感神経の乱れ

交感神経や副交感神経の機能低下やバランスの乱れ、いわゆる自律神経の不調もPMS発症の原因の1つになっているという説もあります。交感神経は心身を興奮・緊張モードにする機能、副交感神経は心身をリラックスさせる機能をもつ神経です。
PMSの患者では、月経前に交感神経が活発になり、副交感神経が弱まるといったことも確認されています。(※2)

これらの原因に加え、忙しかったり、何らかの悩みを抱えていたりするときに症状が出やすいという人もいます。また身体症状ばかりが強く出たり、逆に精神症状のほうが強く出たりなど、人によって症状もさまざまです。PMSの原因を1つに特定することは難しく、いくつもの要因が影響し合ってPMSを引き起こしていると考えられています。

女性ホルモン分泌の仕組みとPMSの原因

※1 産科と婦人科,83(12):1395-1400,2016
※2 最新女性心身医学; 本庄英雄監修, 日本女性心身医学会編, ぱーそん書房: 164-166, 2015

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