粘膜免疫について

「粘膜免疫」は、粘膜から病原体などの異物が侵入しないようにする役割をしています。「粘膜免疫」の働きについて詳しくみていきましょう。

3分でわかる粘膜免疫の働き

1粘膜免疫の役割

「粘膜免疫」は目や鼻、口、腸管などの粘膜でウイルスや病原体、花粉などの異物の侵入を防ぐ役割をし、さまざまな感染症やアレルギー反応を防いでくれます。 粘膜から侵入してこようとする病原体などの異物を捕まえて、体内に入らないように防ぐ役割を果たすのが IgA と呼ばれる抗体です。

粘膜組織の役割

2粘膜免疫の主役「 IgA 」の特徴

IgAは抗体の一種で、血液や体液中に含まれます。 抗体は侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体にくっつくことで無力化し、私たちの健康を守ってくれるのです。 抗体にはIgAのほか、IgG、IgM、IgEなどがありますが、粘膜ではIgAが主役となり異物の侵入を防ぐ役割をしています。 IgAは、初乳や鼻汁、唾液、十二指腸分泌液などに多く存在し、粘膜免疫における中心的な防御因子となっています。 他にも喉や腸、気管支などの粘膜にも存在します。 さまざまな粘膜で作られる IgA は、特定のウイルスや細菌だけに反応するのではなく、多種多様な病原体に反応する(くっつく)という、守備範囲の広さが特徴です。 IgA の量が少なくなるなど免疫力が低下してくると、病気にかかりやすくなったり、疲労感が出やすくなったりします。

ヒトの体液中のIgG,IgA,IgMの平均濃度

免疫グロブリンクラス
出典: Brandtzaeg P, et al.Immunol Rev1999;171:45-87 を改変
部位
ヒトの外分泌物に含まれるIgA濃度を測定したデータ。
出典: Mucosal Immunology 4th Edition

図に示されるように、 IgA は目や鼻、唾液、消化器、膣などの粘膜に、特に小腸や大腸などの腸に多く存在します。

IgA は小腸や大腸などの腸に多く存在します。この理由は、食べ物とともにウイルスや細菌などが侵入しやすいことや膨大な数の微生物が腸管に共生していることも大きな要因と考えられています。 なお、母乳には IgA が特に多く含まれており、赤ちゃんを感染から守る働きを担っています。 出典: de Goffau MC, et al. Nature. 2019;572:329-34

3IgA の低下と感染症の関係

感染症にかかる前には IgA 抗体が低下するという試験結果があり、この事実は、 上気道感染症(風邪)の発症と唾液中の IgA 濃度の関係を調べた研究でも確認されています。 同時に、疲れて疲労感を強く感じている状態では IgA が低いことも判っています。

【グラフ1】
上気道感染症が発症する前に IgA 抗体が減少

グラフ1
アメリカズカップのヨットレース選手の男性38人を対象に、トレーニング期間の50週間にわたって毎週、唾液サンプルを採取。 その結果、上気道感染症を発症する3週間前から唾液 IgA レベルが低下し始め、発症時は有意に低下した。

【グラフ2】
疲労感と唾液中の IgA レベル

グラフ2
グラフ1と同試験において唾液中の IgA レベルが低下しているときは、疲労感が強かった。

出典: Neville V, et al. Med Sci Sports Exerc. 2008;40:1228-36

健康的な生活をおくることで IgA の減少を防ぎ、免疫力を維持しながら風邪などの感染症にかからないようにしましょう。

監修:國澤純先生(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所ワクチン・アジュバント研究センター センター長)
監修:國澤純先生(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所ワクチン・アジュバント研究センター センター長)