睡眠の質と免疫

寝つきが悪かったり、夜中に目が覚めたりすることはありませんか? 「睡眠の質」は熟睡感や寝心地、目覚め感などへの満足度だけでなく、日中の生活や体内リズムの状態も含め多面的に評価されますが、健康な生活習慣を構成する要素のひとつであり大変重要です。 このページでは免疫機能と睡眠の質の関係について見てみましょう。

1睡眠の質と免疫の関係

睡眠の質と免疫機能には関連があります。睡眠時間や休息感などをもとに評価した睡眠効率と風邪の発症の割合を見た研究では、睡眠効率が高い人ほど、風邪の発症率が低下しました。 免疫機能の1つに、抗原抗体反応と呼ばれる仕組みがあります。 異物(細菌やウイルスなど)が抗原であり、私たちの体内ではこの抗原に対して抗体と呼ばれる免疫物質を作り、異物の排除へと働きます。 この抗体をつくるための抗原の情報は長期間、免疫細胞に記憶されるのですが、この記憶期間と睡眠の質とが深くかかわっていると考えられています(注1)。
注1: Westermann J, et al. Trends Neurosci. 2015;38:585-97.

睡眠効率が低いと風邪をひきやすい

睡眠の質の低下と風邪
21~55歳の健康な男女153人の14日間の睡眠時間や休息感などを聞き取り、眠りの質を評価。 その後、風邪ウイルスを鼻に投与し、風邪の発症率を見ると、眠りの質が良い人ほど発症率が低かった。
出典: Cohen S, et al. Arch Intern Med. 2009;169:62-7.

2良い睡眠のために重要なこととは?

良質な睡眠をとるには、適切な長さとともに「リズム」も重要です。 人は朝、太陽の光とともに目覚めて活動し、夜(午後9~10時頃)になると脳から睡眠関連のホルモンであるメラトニンの分泌量が高まり眠りにつきます。 このように私たちのカラダには「昼」と「夜」の環境の違いに対応する体内リズムが存在しているのです。 人間の体温や血圧、脈拍や各種ホルモンの分泌にも約24時間のリズムがあり、成長や修復のための細胞分裂、免疫や代謝などのカラダの様々な働きにも影響しています。 この約24時間の体内リズムは、実は24時間より少しだけ長め(約24時間10分)であると言われ(注2)、わずかな差ではあっても積み重なると昼夜逆転を招きます。 しかし体内時計には時刻合わせをする機能が備わっており、その影響力が最も大きな因子は光です。 朝起きて太陽の光をあびることで体内時計をリセットできますが、夜更かしや朝寝坊、シフト勤務、深夜残業などにより正しいタイミングで光を浴びることができないと、体内リズムが乱れてしまいます。

リズム崩れイラスト

特に、平日と休日の就寝・起床時刻のズレが大きくなると、疲れを感じやすくなるなどの不調だけでなく、起床時の目覚め感や睡眠の満足度などの睡眠の質も悪化することが確認されています。

社会的制約(仕事、学校、家事など)がある平日の睡眠と制約のない休日の睡眠との差によって引き起こされる“平日と休日の就寝・起床リズムのズレ” を 学術的には「ソーシャル・ジェットラグ」(社会的時差ボケ)と呼びます。2006年ドイツの時間生物学者、Till Roenneberg 教授が提唱した概念です(注2)。
注2: Wittmann M. et al. Chronobiol Int. 2006;23:497-509.

平日と休日の就寝・起床時刻のズレが大きい人ほど
不調や睡眠の質が悪化する

体内リズムと睡眠不調

各質問項目について、「非常にあてはまる」「かなりあてはまる」「ややあてはまる」「どちらでもない」「ややあてはまらない」「かなりあてはまらない」「非常にあてはまらない」の7段階から選択。 ソーシャル・ジェットラグ(平日と休日の就寝・起床リズムのズレ)時間帯別の、「非常にあてはまる」「かなりあてはまる」のどちらかに該当する人の割合を示した。
出典:「睡眠不調に関するインターネット調査」(大製薬)
また、2019年に行われた日本産業衛生学会においても、ソーシャル・ジェットラグ(平日と休日の就寝・起床リズムのズレ)が大きいと疲労感や起床時疲労感、起床困難感を助長するとの研究結果が発表された。 出典: 第92回日本産業衛生学会 発表(生活習慣指導4)、社会的時差ぼけと易疲労性の関連、中田光紀ら

メラトニンの分泌

また別の報告では、健康な人でも、いつも通りの睡眠リズムであった金曜の夜と比較して、週末だけいつも通りの睡眠から約3時間遅く起きるようにした場合、 わずか2日の就寝・起床リズムのずれにより唾液へのメラトニン分泌開始時刻が日曜の夜では遅れ、翌週前半の疲労感や日中の眠気が悪化するという結果につながりました。
出典: Taylor A, et al. Sleep Biol Rhythm. 2008;6:172-9.

このようにたった2日間の起床・就寝リズムの変化でも、体内時計のリズムがズレる結果となり、日中に眠くなったり眠りたい時に眠れないといった弊害もでてきます。

3体内リズムを乱さない6つの方法

寝つきを良くし快眠に導く、体内リズムを整えるための、快眠プログラムをまとめました。

① 朝、日光を浴びる
朝起きて太陽の光を浴び、体内時計をリセットしましょう。
② 朝、白湯を飲む
白湯で体温を上げることで、体を目覚めさせます。また、胃腸全体が活性化して消化力が高まりますので、朝食の前がお勧めです。
③ 朝食をとる
起床してから2時間以内に朝食を食べることで体内の様々な臓器を目覚めさせることができます。
④ 眠くなったら、ちょっと昼寝
午後早めの時間は眠くなるのも正常な体内リズム。15分以内であれば昼寝を活用することも効果的です。
⑤ 定期的に激しくない運動を
運動習慣がある人には睡眠の問題が少ないと言われています。ただし、寝る直前の激しい運動は避けましょう(注3)。
⑥ スマホやパソコンは早めにOFF
画面から出るブルーライトには目覚まし作用があります。ベッドに入ってからの利用などは控えましょう。
⑦ 寝酒、喫煙、カフェインは避ける
寝酒は寝つきを良くしますが、途中で目が覚めやすくなります。タバコやカフェインには目覚まし作用があります。
⑧ 寝る前にいったん体温を上げる
日本人を対象とする研究で、1日30分以上週5日以上歩くか、週5回以上の習慣的な運動習慣がある人には、寝つきが悪い、夜中に目が覚めるといった訴えが少ないという結果が出ています(注3)。睡眠・覚醒と体温は連動していて、深い眠りを得るには、カラダの中心部の体温(深部体温)を下げる必要があるのですが、運動によっていったん体温を上げておくと、就寝時の体温との落差が大きくなり、眠りに入りやすくなります。ただし、激しい運動は、かえって眠りを妨げることもあるので避けましょう(注4)。
また、入浴で体温を上げても、運動と同様の効果が得られます。41℃程度の熱すぎない温度のお風呂につかると、深い眠りが得られるようです(注5)。
注3: Inoue S, et al. J Aging Phys Act. 2013;21:119-39.
注4: Driver HS, et al. Sleep Med Rev. 2000;4:387-402.
注5: Horne JA, et al. Electroencephalogr Clin Neurophysiol. 1985;60:154-7.

睡眠の質と免疫力はとても深い関係にあるといえるので、休日に朝寝坊しがちな人は週末も平日と同じ時間に起きることや、上記の8つのポイントを意識してみるとよいでしょう。 体内リズムを整えて睡眠の質をよくすることで免疫力を保ちましょう。

睡眠リズムをサポートする機能性表示食品(サプリメント)の活用

睡眠の質を高める方法のひとつとして、機能性表示食品を活用する方法があります。 例えば、平日と休日の就寝・起床時刻にズレがある人の寝覚め感と睡眠の質が改善される成分としてアスパラガスの茎下端部分を加熱・酵素処理して得られる通称「アスパラプロリン」を含むサプリメント。

アスパラプロリン

この成分を摂取することで、睡眠中、カラダのダメージを修復するタンパク質である「自己回復タンパク質HSP70」※1の発現を促して睡眠の質の改善効果が期待できます。 生活環境をなかなか変えられない人は賢くサプリメントを生活に取り入ることもオススメです。
※1 HSP=Heat Shock Protein(熱ショックタンパク質 : 細胞が熱等のストレスにさらされた際に発現し、細胞を保護するタンパク質の一群)
HSP の中でも、HSP70 は細胞を保護する作用が高いといわれています。

監修:中田光紀先生(医学博士 国際医療福祉大学 赤坂心理・医療福祉マネジメント学部・学部長 心理学科長 教授)
監修:中田光紀先生(医学博士 国際医療福祉大学 赤坂心理・医療福祉マネジメント学部・学部長 心理学科長 教授)