サステナブルな社会の実現を目指して、
エネルギーの見える化と次世代の育成を推進

生産本部
エンジニアリング部
工場全体でDXの基盤構築が進んでいます。新しい技術も活用し、現場の方の力になるために日々挑戦を続けています。

製造現場を支えるエンジニアとしてのキャリアの出発点

大学では経済について学びましたが、就職先でコンピューターエンジニアの仕事を選びました。その後、医薬品製造の現場で今後システム化が進むという話を聞き、これまでのエンジニア経験を活かせると考え、1996年にキャリア採用で大塚製薬に入社しました。初めは生産技術部(医薬品担当)に配属され、医薬品の工業化やスケールアップの検討、製造ラインの立ち上げなどに従事しました。その後、工場設備部門で製造管理システムの導入と運用管理を経験し、IT推進室(現:コーポレートIT部)への異動を経て、定年を迎えた後は再雇用制度でエンジニアリング部に所属しています。

私は大学時代に地域科学を専攻しており、天文学系の測定機器の開発に携わる中で「製造のすべてを把握しなければ、何がダメだったのか、改善点を見つけることはできない」ということを恩師から学びました。この経験から「製造の現場に携わり続けたい」「工場のすべてを見たい」と考え、プラントエンジニアの採用を行っている企業を探していた際に大塚製薬と出会い、2019年に入社しました。

工場の枠を越えてつながる現場発DX

私たちエンジニアリング部は、安心・安全な製品の安定供給を目指し、工場製造設備の維持管理、工場のユーティリティ管理、工場への新規設備導入支援、当局査察・審査・監査のサポート、省エネ活動を行っています。エンジニアリング部では工場間のコミュニケーション活性化と設備管理レベルの均一化を目指して、複数のワーキンググループ(以下WG)が活動しています。私はWGにおいて、主にデジタル技術の導入や次世代の人材育成に注力しています。
大塚製薬はトータルヘルスケアカンパニーとして、医薬品から人々の健康維持・増進に貢献するニュートラシューティカルズ関連事業製品(以下NC製品)まで幅広い製品の製造を行っており、やりがいが大きい一方で苦悩もあります。医薬品においては、錠剤、液剤、医薬品原薬などの製品を、NC製品においては、ポカリスエットなどの飲料やカロリーメイトなどの食品やサプリメントを製造していますが、様々な製品・形状に対応するために、それぞれ異なる設備構成が必要となります。管理方法にも大きな違いがあり、特に医薬品はより厳格な基準が適用されます。製造品目による違いを理解し、それぞれの製品に最適な設備を導入するために、現場の声を丁寧に聞きながら、工場ごとの方針に合わせた対応を心がけています。


私が所属するWGでは、大塚グループが掲げる「2028年までにCO2排出量を2017年比で50%削減する」というカーボンニュートラル目標の実現に向けて取り組んでいます。その出発点となったのが、「エネルギーの見える化」です。どこでどれだけのエネルギーが使われているのかを見えるようにすることで、現状を正しく把握し、改善余地を明らかにすることを目指しています。
既存のシステムでは、工場ごとに異なるフォーマットでデータが保存されていることに加え、一度に出力できるデータ数にも制限があるため、複数工場の1日分のデータを取得するだけでも半日以上の時間を要するなど、分析を行ううえで課題を抱えていました。この課題を解決するために、RPAツールとプログラミングの知識を活用し、コストを抑えながらデータ収集を自動化し、データをBIツールで分析しやすい統一したフォーマットに変換しました。このように分析基盤を整備することで、「エネルギーの見える化」を実現することができました。
また、この取り組みは、単に「無駄を減らす」だけではありません。現場で働く方々が日々試行錯誤しながら取り組んでいるCO2削減の努力が、どれだけ成果を生みだしているのかを「見える化」することにもつながっています。たった一つのスイッチの見直しが、どれだけのCO2削減効果を生んでいるのか、その「見える化」が、現場のモチベーションになっているとの声もいただいており、目標に向かって責任感を持って取り組む現場の皆さんの姿勢に、私自身も日々刺激を受けています。

デジタル技術で工場の未来を創る――若手の挑戦と可能性

私は、次世代を担う人材の育成こそが、これからの大塚製薬の成長に欠かせないと考えています。実際、私が所属するWGでは、IoTやAIなどの新技術に対応できる専門性の高い人材を育てる取り組みを進めています。メンバーは、入社年度の若い社員が中心で、コンピュータ化やデジタル化の経験が少ない中でも、現場の課題に向き合い、それぞれがテーマを持って挑戦しています。生産部門では「安定生産」と「品質向上」が最優先事項であり、そこにデジタル技術をどう活かすか、規制対応などのハードルもある中で、製造データの解析や運転データの活用を通じて、現場に貢献する方法を模索しています。若手メンバーが自ら情報を集め、考え、挑戦している姿を見ると、本当に頼もしく感じます。現在、工場全体ではDXの基盤構築が進んでおり、今後はこの基盤を活かして、より安定した製造と品質向上を目指していきます。
私自身も、各工場でDXを推進できる人材を育てることで、次世代がもっと活躍できるフィールドを広げていきたいと考えています。若手の挑戦が、未来のものづくりを変えていく、そんな瞬間をこれからも支えていきたいです。


入社当初、製造現場へのシステム導入を任された際は、これまで触れたことのないシステムだったため、何から始めればよいのか分からず、正直戸惑いがありました。しかし、機器の設置にあたって現場の方々が親身にコミュニケーションを取ってくれるおかげで、少しずつ理解を深めることができました。現在取り組んでいるデータ分析においても、現場の方に工場の専門的な知見を教えてもらう中で、分析のポイントを見出すヒントを得ることができています。
また、私はパソコン操作が苦手でしたが、まずは自分にできる範囲で取り組もうと考え、手軽に始めることのできる表計算ソフトのプログラミング言語を学び、業務効率化を目指したプログラムを作成しました。この経験を通じてデジタル技術に興味を持ち、様々なアイデアが浮かぶようになりました。自分の提案が採用され、現場の方から実際に役立ったという声を聞けたときには、大きな達成感を得ました。
今後は、データを通じて現場の課題を発見し、改善につなげるための分析的な視点を持ちつつ、データの発生源となる電気や工場建築などの専門知識を勉強して、工場に特化したデータサイエンティストを目指したいと思っています。まだ、現場の方に専門知識を教えてもらうことも多いので、工場についてもっと勉強し、自ら分析すべきポイントを提案できる存在になりたいです。大塚製薬は新しいことに挑戦する姿勢を大事にする風土があると思うので、新しい技術も活用し、現場の方の力になるために日々挑戦を続けていきます。

デジタル技術活用の取り組みについてもっと知る