新たな可能性を秘めたデータの活用でより良い医療の未来へ

メディカル・アフェアーズ部
認知症やメンタルヘルス等の中枢神経系の疾患に対してデジタル技術を用いることで、データ活用の新たな道を切り開き、エビデンス創出を目指しています。

予防医療への情熱を胸に、大塚製薬へ入社

脳神経外科医として勤務していたとき、一人の脳卒中患者さんとの出会いから予防医療の重要性を強く認識するようになり、公衆衛生学の道に進む決意をしました。 その後、大学院で公衆衛生学を学ぶ過程で、疫学統計や統計解析ソフトを用いたデータ分析などプログラミングそのものに興味を持ち、日々習得に励んでいました。また、同時期に始めた訪問診療や産業医の経験を通じて認知症やメンタルヘルス等の中枢神経系の疾患に対する関心も深まり、デジタル技術と自分の関心分野をうまく融合させられないかと考えるようになりました。

大塚製薬は、トータルヘルスケアカンパニーとして、ニュートラシューティカルズ関連事業を展開しており、病気を治すだけでなく健康の維持・増進という視点を持っていること、医療関連事業では精神疾患・神経疾患を最重点領域の一つとしていることが入社の決め手となりました。また、メディカル・アフェアーズ部であれば私が取り組んできた疫学の知見を活かすことができると考え、入社しました。

テキストマイニングを用いたエビデンス創出の取り組み

私が所属しているメディカル・アフェアーズ部は、臨床研究の企画・遂行やアカデミアとの連携を通じて、医療現場に科学的根拠のある信頼性の高い情報を中立的な立場から提供することで、医薬品の価値の至適化および適正使用に貢献する役割を担う部門です。
参画しているプロジェクトでは、アンケート調査による研究のほか、診断をサポートするためのスクリーニング質問紙※1や尺度の開発に取り組んでいます。現在、特に注力しているのはテキストマイニング※2を用いた匿名加工された電子カルテデータの分析です。

これまでリアルワールドデータとして活用されてきたデータの多くは検査値などの解析しやすく構造化されたデータですが、今取り組んでいる認知症の行動・心理症状(BPSD)の一部であるアジテーション※3の症状は検査値などの客観的なデータではなく、医師の専門的判断に頼る部分が大きくなっています。そのため、従来のアプローチでは対応が難しく、あらかじめ定められた形式を持たず解析に不向きな非構造化データが大半を占めることが研究の課題となっています。

そこで、電子カルテの自由記載欄などの非構造化データに対してテキストマイニングを活用し、症状などの重要なキーワードを抽出した構造化データを作成する取り組みを進めています。
この方法によりアジテーションの症状が客観的な指標として定義できれば、関連するリスク因子や健康リスクについて詳細に解析することが可能となり、ガイドライン改定の一助となるようなエビデンスを創出できるのではないかと考えています。

  1. ※1患者さんの症状や心理的状態、ニーズなどを早期に把握するための質問票
  2. ※2大量のテキストデータから特定の情報やパターンを抽出する技術
  3. ※3感情的な苦痛を背景要因とする、過活動(同じ動作の反復など)、攻撃的発言または攻撃的行動のうち少なくとも一つ以上の症状からなり、認知症の方の日常生活、社会生活、人間関係のいずれかに支障を来した状態

大塚製薬における挑戦と社会課題への貢献

大塚製薬は、企業文化として挑戦を後押しする風土や、柔軟なアイデアを受け入れる環境が整っていると思います。社員同士のコミュニケーションが活発で、意見を自由に交換できる雰囲気があり、社外のアカデミア等との知的交流から自分の可能性を高めることもできると感じています。例えば、研究を進めるにあたっても、社員を通じてアカデミアをはじめとした疾患の専門医との議論の場を設けてもらうなど、社内外の連携が取りやすいことを経験しています。

今後も引き続き最新のスキルを身につけ、電子カルテデータの自由記載欄などのように、今まで解析に用いられなかったデータを新たに活用する道を切り開きたいと考えています。そして、研究論文など様々なテキストデータにも応用することで、多くの医療従事者等に有用な情報を届け、最終的に患者さんにとってより良い医療の実現を目指しています。

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