大塚製薬株式会社

ニュートラシューティカルズ関連事業
2006年10月15日

生体防御機能を高める新・乳酸菌発見!
大塚製薬 粘膜免疫を活性化させる乳酸菌(L.plantarum b0240)の
効果をヒト試験で発見
2006年10月14日(土)「DDW-Japan 2006」にて発表

大塚製薬株式会社(本社:東京都千代田区、社長:樋口達夫、TEL:03-3292-0021)は、のど、鼻、腸管など粘膜面に存在し、細菌などの侵入を阻止する生体防御成分・IgAを増加させる乳酸菌(L.plantarum b0240)を発見し、この度ヒト試験によりIgA産生量が増加したことを確認いたしました。
同研究は熊本県立大学の南教授と大塚製薬大津栄養製品研究所が共同で行ってきたもので、当社では、この乳酸菌を使用した製品の開発を行っています。

南久則(みなみ ひさのり)教授(熊本県立大学 環境共生学部 食・健康環境)は、「乳酸菌摂取によりヒトの唾液IgA量増加が確認された初めての報告である。IgAの分泌を増加させることで、風邪やインフルエンザなどの感染症の予防に大きな期待ができるであろう」と、コメントしています。

大塚製薬では、2000年に大津栄養製品研究所を設立し、毎日の食生活に栄養を上手に取り入れ健康の維持増進を応援するというニュートラシューティカルズ(Nutraceuticals)のコンセプトのもと、「粘膜免疫」をテーマとし、「乳酸菌の機能」について研究してきました。

今回の研究は、10月14日(土)に、「DDW-Japan2006」(第14回日本消化器関連学会週間、会期:10/11(水)~10/14(土)、会場:札幌コンベンションセンター・道立総合体育センター)において、南久則教授らの研究グループにより発表されます。

発表概要

発表演題:

「植物性乳酸菌(Lactobacillus plantarum b0240)の継続摂取が粘膜免疫(注1)に及ぼす影響」

発表者:

熊本県立大学 環境共生学部 南久則教授、赤星亜朱香助手
大塚製薬(株) 岡松洋、岸和正、戸羽正道

植物性乳酸菌(Lactobacillus plantarum b0240 :以下L.plantarum b0240)とは

大塚製薬(株)大津栄養製品研究所が、優れた粘膜免疫機能活性化作用を発見した発酵茶由来の植物性乳酸菌です。尚、本乳酸菌は東京農業大学より分譲を受けた菌です。

研究の背景

大塚製薬(株)大津栄養製品研究所では、これまでL.plantarum b0240がマウス腸管パイエル板細胞を用いたin vitro試験においてIgA産生量を著しく高めることを見出しました(図1)。
今回、L.plantarum b0240のヒトに対する有効性について検討しました。

図1:L.plantarum b0240のマウス腸管パイエル板細胞におけるIgA産生量

試験の目的

免疫グロブリン(注2)のひとつであるIgA(注3)は粘膜面において病原微生物の接着抑制や抗原の吸収抑制作用など、きわめて重要な生体防御機能を担っています。L.plantarum b0240の継続摂取がヒトの腸管免疫を活性化させると、ホーミング現象(注4)を介して、腸管や気管支、鼻粘膜などの様々な粘膜面における感染症予防が期待されます。そこで、本研究では、唾液分泌型IgAを主要評価項目とし、L.plantarum b0240死菌含有水の継続摂取が粘膜免疫に及ぼす影響を検討しました。

試験の方法

L.plantarum b0240摂取群とコントロール群に分け、L.plantarum b0240摂取前と21日目に唾液を摂取し、唾液分泌型IgA量を測定しました。また、L.plantarum b0240摂取前後に糞便を採取し、糞便総IgA量を測定しました。

  • コントロール群:水を摂取する群(9名)
  • L.plantarum b0240摂取群:L.plantarum b0240死菌含有水(2×109CFU)を摂取する群(7名)

結論

L.plantarum b0240摂取前後の唾液分泌型IgA量については、コントロール群に比べ、L.plantarum b0240摂取群は有意に上昇しました(図2)。また、糞便総IgA量は、コントロール群に比べ高値を示しました(図3)。このことから、L.plantarum b0240の継続摂取がホーミング現象を介して、腸管粘膜や唾液腺でのIgA産生を活性化することが示唆されました。なお試験期間中、副作用などの影響は認められませんでした。

図2:L.plantarum b0240、21日間摂取による唾液分泌型IgAの増加作用

図3:L.plantarum b0240、21日間摂取による糞分泌中総IgA量の変動

  • 注1)粘膜免疫とは
    口・鼻・肺・腸・膣等の粘膜面で、病原微生物・ウイルス等の異物を識別し排除する生体防御機構のことです。生体は常に病原微生物、ウイルスなどの異物にさらされており、これらが最初に生体内に侵入する場所が消化管などの粘膜面です。この粘膜面に異物を排除するための免疫システムが備わることで第一線の生体防御機構を構築しています。特に腸管は全末梢リンパ球の7割が集結しており、最大の免疫臓器と言われています。
  • 注2)免疫グロブリンとは
    免疫グロブリンとは、抗原と結合する抗体として働くタンパク質の総称です。リンパ球の一種であるB細胞が、病原微生物を認識して排除するために産生します。IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類のクラスに分類されます。
  • 注3)IgA(アイジーエー)とは
    腸管粘液、唾液、気管支粘液、母乳などの分泌液に最も多く含まれる免疫グロブリンです。病原微生物の排除や毒素の中和作用など生体防御に重要な役割を果たしており、免疫力の指標の一つとされています。なお、母乳では特に初乳に多く含まれており、まだ免疫機構が充分に発達されていない新生児にとっては、重要な生体防御成分になります。
  • 注4)ホーミング現象とは
    粘膜面で抗原刺激を受けたリンパ球は、リンパ節や胸管を経て血管(大循環)に流入し全身を巡ります。その後、再び血管を抜け出して粘膜面に戻って来る現象をホーミングと言います。元々出発した粘膜組織に戻るのでホーミング(homing)と呼びます