大塚製薬株式会社
持続性注射剤「Abilify Maintena®」(エビリファイ メンテナ)、カナダで承認
- 「エビリファイ」の新剤形である「Abilify Maintena」(エビリファイ メンテナ)は、米国FDA、欧州委員会(EC)からの承認に次いで、成人統合失調症の維持治療を適応としてカナダ保健省から2014年2月10日に承認を取得。本剤は、2014年4月より発売予定。月に1回投与することで1カ月間体内に薬剤が留まり、そこから徐々に有効成分が血中に放出される注射剤。そのため安定した血中濃度を保つことができ、患者さんは薬剤を毎日飲まなくても統合失調症の再発を予防できる
- 体内に薬剤を長く留める製剤は安全性の高い薬剤である必要がある。「エビリファイ」は、抗精神病薬として確かな効果と優れた安全性を有しているため、月1回投与の持続性注射剤としても最適な薬剤である。本剤は、毎日薬剤が飲めず再発してしまう患者さんの再発防止を目的に開発。統合失調症は長期にわたる治療が必要であるが、毎日の服薬を継続することは難しく60%の患者さんが適切に服用しておらず再発につながっている
- カナダの統合失調症患者数は約30万人であり、医療コストは約20億カナダドル(約1,900億円)。米国では「Abilify Maintena」(エビリファイ メンテナ)が利用できるようになり、1カ月間の薬剤の投与と効果の持続が確実になり、医療従事者が患者さんに確実な治療環境を提供することが可能となった
大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:岩本太郎、以下「大塚製薬」)とH.ルンドベックA/S(本社:デンマーク、コペンハーゲン、CEO:ウルフ・ウインバーグ、以下「ルンドベック社」)は、カナダ保健省より、状態が安定した成人統合失調症の維持治療薬として「Abilify Maintena」(エビリファイ メンテナ)の販売承認を取得しました。
「Abilify Maintena」(エビリファイ メンテナ)は、経口の「エビリファイ」と同様の安全性プロファイルを持ち、医療従事者による月1回の投与で血中濃度が持続する筋注用デポ製剤です。薬剤投与が確実であり、医療従事者と患者さんの双方にとって新たな治療選択肢となります。
カナダでは、欧州と同様に2本の試験結果をもとに承認されました。1本目の臨床試験では「Abilify Maintena」(エビリファイ メンテナ)とプラセボを比較して統合失調症の再発までの期間を有意に延長し※1、2本目の試験では経口の「エビリファイ」と同等の効果を確認しています※2。試験中に行われた薬の切り替えの満足度の調査において「Abilify Maintena」(エビリファイ メンテナ)による治療を受けた93%の統合失調症患者さんが、前治療の経口抗精神病薬から月1回投与の持続性注射剤に切り替えても治療に「非常に満足」、「大いに満足」、あるいは「満足」であると回答しました※3。
「Abilify Maintena」(エビリファイ メンテナ)は、唯一の月1回投与のドパミンD2受容体パーシャルアゴニスト製剤です。統合失調症の患者さんは、再発を回避するために治療を受けますが、抗精神病薬を指示通りに服用しなかったり、服用そのものを中断してしまったりすることで再発することも少なくありません。服薬を中断する原因として、病識の欠落や現在の治療薬の副作用などの報告もありますが、治療薬の複雑な投与方法や家族からの支援が困難なことなどがあげられます※4。経口の「エビリファイ」と同様の忍容性プロファイルを持つ月1回製剤の「Abilify Maintena」(エビリファイ メンテナ)は、医療従事者と患者さんの双方にとっての新たな治療選択肢となり、統合失調症の再発リスクの低減に寄与します。
「Abilify Maintena」(エビリファイ メンテナ)は、米国では2013年3月より販売し、欧州では2013 年11月に欧州委員会(EC)から承認を得て2014年1月より英国で販売を開始しました。現在日本では製造販売承認を申請中です。また、日本・米国・欧州で双極性障害躁状態の臨床開発試験(フェーズⅢ)を開始しています。
- ※1 Kane, JM et al. Aripiprazole intramuscular depot as maintenance treatment in patients with schizophrenia: a 52-week, multicenter, randomized, double-blind, placebo-controlled study. J Clin Psychiatry 2012; 73(5):617-62
- ※2 Fleischhacker WW, Sanchez R, Perry PP, et al. Aripiprazole once-monthly for the treatment of schizophrenia: a double-blind, randomized, non-inferiority study vs. oral aripiprazole. Annual Meeting of the American Psychiatric Association, 18-22 May, 2013 (Poster)
- ※3 Sanchez R, et al. Patient-reported Outcomes with Aripiprazole-Intramuscular-Depot for Long-term Maintenance Treatment in Schizophrenia. NR6-42 2012 (poster)
- ※4 Baloush-Kleinman V, et al. Adherence to antipsychotic drug treatment in early-episode schizophrenia: a six-month naturalistic follow-up study. Schizophr Res. 2011;130(1-3):176-81
参考
大塚製薬とルンドベック社のグローバル・アライアンスについて
大塚製薬とルンドベック社は、2011年11月に開発の早期段階および後期段階にある最大で5つの化合物の共同開発と商業化におけるグローバル・アライアンスを締結しました。世界の中枢神経領域の治療発展を重視した両社は、「Abilify Maintena」(エビリファイ メンテナ)を2013年3月に米国で発売、同年11月に欧州で承認を得て、2014年1月から英国で発売しています。今回、カナダでも承認となり両社がカナダで共同販促する初の製品となり2014年4月から発売予定です。 現在、両社が展開するグローバル・アライアンスは、「Abilify Maintena」(エビリファイ メンテナ)の他、次世代のD2受容体パーシャルアゴニスト「ブレクスピプラゾール」、アルツハイマー病治療薬「Lu AE58054」の臨床開発が進行中であり、残りの2化合物においても協議が進んでいます。また、新たにアルツハイマー病ワクチン候補薬「Lu AF20513」、減酒薬「ナルメフェン」についても契約して共同開発・商業化を目指しています。
「Abilify Maintena」(エビリファイ メンテナ)について
「Abilify Maintena」(エビリファイ メンテナ)(一般名:アリピプラゾール持続性懸濁注射剤)は、アリピプラゾールの筋注用デポ製剤で、注射用水で用時調製することで、注射可能な懸濁液となる月1回投与の無菌の凍結乾燥製剤です。カナダにおいて「Abilify Maintena」(エビリファイ メンテナ)は、経口のエビリファイを服用し統合失調症の維持療法で症状が安定している成人患者さんを対象としての効能が承認されました。
「Abilify Maintena」(エビリファイ メンテナ)の初回投与時には、約2週間を目処に経口の抗精神病薬との併用期間を設けますが、その後は月1回の「Abilify Maintena」(エビリファイ メンテナ)の単剤投与により1ヵ月間の安定した薬効を示します。持効性の抗精神病薬は、1回の投与である程度長い期間の治療を可能にし、また医療従事者に対し患者の再診時期を意識付けに寄与します。
統合失調症および疾患の再発について
統合失調症は、思考プロセスや感情表現への歪みを特徴とする慢性疾患です。幻聴、妄想、まとまらない発言や思考などの症状が現れ、結果として重大な社会生活および就業への障害となります。成人期初期に発病(発現)することが多く、症状の緩和のために一生涯にわたる治療が必要になることがあります。
欧米では、成人人口の約1%が統合失調症を抱え、世界では約2,400万人の成人患者さんがいると推計されています※5、6。カナダには性差なく同様に1%の発症率で約30万人の成人統合失調症患者さんがおり、医療コストは約20億カナダドル(約1,900億円)になっています。統合失調症の根本的な治療法は、いまだ確立しておりませんが、症状や再発リスクを管理するために、多くの患者さんに適切と考えられる抗精神病薬による薬物治療が行われています。しかし、疾患が十分に管理されない場合、疾患の再発リスクが高まることが分かっています。
統合失調症は社会的にも大きな負担となっており、WHOによるとDALY(障害調整生存年数:寿命・健康ロス)の主要因として男性では第5位、女性では第6位に挙げられており、治療費負担の大きな疾病の1つでもあります※7。患者さんの50%は適切な治療を受けておらず、80%は発症から5年以内に再発するため統合失調症の分野では未解決の課題が多いといえます※8。
抗精神病薬が効かなくなった、または薬の服用を中止した患者さんは、統合失調症の再発の可能性があります。薬の服用を中止する理由は様々で、疾病に関する理解不足、現行の治療法による副作用、複雑な投薬計画、または家族のサポート不足などがあげられます。
臨床試験成績について
「Abilify Maintena」(エビリファイ メンテナ)の有効性は、2つの二重盲検ランダム化臨床第III相試験(52週および38週の試験)で検証されました。
1つめの臨床試験において、「Abilify Maintena」(エビリファイ メンテナ)投与群はプラセボ投与群に対して、主要評価である統合失調症の再発までの期間を有意に延長しました。副次評価では、試験終了時において「Abilify Maintena」(エビリファイ メンテナ)投与群はプラセボ投与群と比較して、再発した患者の割合を有意に低下しました。
2つめの臨床試験において、主要評価である26週目の時点での再発率は、「Abilify Maintena」(エビリファイ メンテナ)投与群と経口アリピプラゾール投与群で同等でした。また、「Abilify Maintena」(エビリファイ メンテナ)投与群は、月1回投与の偽プラセボ投与群よりも効果が優れていることも示されました(APA2013の国際会議で発表)。また、副次評価である再発までの期間についても、維持療法の有効性が示されました。
2つの臨床試験において「Abilify Maintena」(エビリファイ メンテナ)投与群で5%以上の頻度でみられた有害事象は、体重の増加(9.0%)、アカシジア(7.9%)、不眠(5.8%)、注射部位の痛み(5.1%)でした。
- ※5 National Institute of Mental Health (NIMH)、Health Topics: Statisticsより
- ※6 世界保健機構(WHO)、統合失調症ファクトシート2010より
- ※7 National Institute of Mental Health (NIMH) 、The Numbers Count: Mental Disorders in America 2010より
- ※8 Robinson D, et al. Predictors of relapse following response from a first episode of schizophrenia or schizoaffective disorder. Arch gen Psychiatry.1999;56(3):241-247