齋藤薫のエクエルダイアリー
Equelle Diary

Vol.4 
行ったり来たり、なかなか歳をとらない人

40代の頃、街でばったり同年代の女性に再会し、ひどくショックを受けたことがある。自分は明らかに下り坂にあったのに、その人は昔より、むしろ20代の頃よりも美しくなっていたからだ。今でこそ、20代よりも美しい40代はたくさんいるけれど、かつてはやっぱりそれって常識では考えられないことだった。でも実際そういう人がいただけで衝撃だったと同時に、同年代だけに感動もした。こんなことも起こり得るのだと。

その日のうちに、私はいきなりスキンケアの方法を変えた。と言うよりも、衝動的にこれまでの3倍のお手入れをしてみたのだ。恥ずかしいほど単純だけれど、お手入れの手間も化粧品の量も気がつくと3倍になっていた。
当時の自分を振り返ると、自分にもいよいよ衰えがやってきたと思った途端、なんだか諦めが押し寄せてきて、知らないうちにお手入れがおざなりになっていたのだ。それをどこかで感じていたから、目が覚めたようにお手入れの量を増やしたのかもしれない。

するとどうだろう。たちまち肌の若さが蘇ってくる。自分でもちょっとびっくりした。肌はひたすら順当に衰えていく運命にあるのだと決めつけていたから。でも人間は、そう簡単には衰えないのだと、このとき初めて知った。もちろん老化は、人間の宿命。だけれども、おそらくは"猶予期間”と言うものが長くあるのだろう。つまり完全な衰えではなく、仮の老化とも言うべき変化が断続的に訪れるのに対し、それに歯止めをかける事は全く可能。きちんとブレーキをかければ簡単に止められるし、元に戻ることすら可能。

言い換えれば、衰えは行ったり来たり、その気になれば後戻りだっていくらでもできるものなのだ。にもかかわらず、いきなり諦めてしまうと、それこそ坂を転げ落ちるように衰えが進んでいってしまう。全く自分次第なのだ。意識の持ちよう次第。逆に言えば、必死で足を踏ん張るより、ちょっと行っては戻り、行っては戻り、となかなか歳をとらない生き方をする方が実りは大きいかもしれない。なぜならば戻るときに勢いよく、大きく戻ればいいんだから。

そういう意味で、より大きく戻れる40代はまだ全く猶予期間。だから衰えない人は全く衰えない。でもうっかりすると、後戻りせずに自分で老化に向かっていってしまう人もいるのが40代。大きな個人差が出てしまうのは、そのせいなのだろう。

そしていくらでも歯止めが効き、その気になればいくらでも後戻りできる猶予期間にこそ、様々な方法で自分自身に働きかけてみて欲しい。それらは全て、パワーダウンしがちな細胞の扉を叩く行為に他ならないからだ。年齢的に少し緩んできたその働きに対し、改めてネジを締めるようなアプローチ。それがいかに仮の衰えであったとしても、衰えが始まるこの年代には不可欠なのだ。

私自身にこの重要なことを教えてくれた同年代の女性との久しぶりの再会、彼女の驚くべき若さも、これまた休みかけた細胞を目覚めさせ、即座に沸き立たせてくれるショック療法となった。そうしたエイジングケアも猶予期間には絶対必要なのだ。

お手入れの方法を変えてみるのもいいかもしれない。塗る美容のみならず、飲む美容を加えたり、私のように3倍の手間をかけてお手入れをし直してみたり、同年代の美しい人に驚いてみたり、そうした揺さぶりがこの年代には必要なのだ。

でも逆にそれだけで細胞が蘇るなんて、それは本来の底力が十二分に備わっている証。まだまだあなたはキレイになれる。そういうふうに自分に言いきかせて。そういう気づきだけで、人は若く美しいままいられる。それこそ、20代の時よりも若々しい40代ができあがるのだ。

美容ジャーナリスト/エッセイスト
齋藤薫

女性誌編集者を経て独立。女性誌において多数の連載エッセイを持つ他、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。新刊『大人の女よ!もっと攻めなさい』(集英社インターナショナル)他、『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。

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