大塚製薬株式会社
「トルバプタン」常染色体優性多発性のう胞腎(ADPKD)の
追加フェーズ3試験結果を発表、米国FDAに承認申請
- 米国腎臓学会にて、常染色体優性多発性のう胞腎(ADPKD)を対象としたトルバプタンの有効性・安全性を検証したフェーズ3試験結果を発表
- 本試験は米国でのトルバプタンのADPKD治療薬としての新薬承認再申請を目的とした追加試験。主要・副次的評価項目ともに達成したため、米国食品医薬品局(FDA)に再申請した
大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:樋口達夫、以下「大塚製薬」)は、11月4日、米国腎臓学会(American Society of Nephrology)にて「トルバプタン」の常染色体優性多発性のう胞腎(ADPKD)の患者さんを対象にした追加フェーズ3試験(REPRISE試験)結果について発表しました。本試験結果は、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌に掲載されました※。また、本剤をADPKD治療薬として米国FDAに再申請を行いましたので、お知らせします。
大塚製薬は、トルバプタンの同適応について、2013年8月にFDAから審査完了通知(CRL)を受理後、再申請のための追加フェーズ3試験を実施しました。本試験は、トルバプタン未治療のADPKD患者さん1,370名を対象とした多施設、二重盲検、ランダム化プラセボ対照、国際共同試験です。トルバプタン投与に忍容性を示した患者さんを、トルバプタンまたはプラセボ投与群に割り付け、12カ月間投与したときの本剤の有効性と安全性について検討しました。
主要評価項目である腎機能の指標となる「eGFR(推算糸球体濾過量)」のベースラインから投与終了後フォローアップまでの変化量において、トルバプタン投与群はプラセボ投与群に比べて約35%低下を抑制しました(p<0.0001)。また、副次的評価項目である投与期間中の「eGFR変化(スロープの傾き)」においてもプラセボ投与群に比べて約24%の抑制が認められました(p<0.0001)。副作用として、下痢、疲労感、多尿、肝機能異常等がみられましたが、本試験で新たに確認された安全性上の問題はありませんでした。
米国メイヨー・クリニックのヴィセンテ・E・トーレス教授は「トルバプタンはADPKD患者さんの腎機能低下を抑制することで、腎臓移植や透析が必要になる時期を遅らせる可能性があります。今回の試験結果は、米国で承認されている治療法がないこの疾患において重要なマイルストーンです」と述べています。
大塚ファーマシューティカルD&C上級副社長のロバート・マッケードは「ADPKDにおけるトルバプタンの有用性が確認されました。本剤が米国で承認されれば、この進行性の疾患で悩む患者さんにとって新しい治療選択肢となり得ます。試験結果についてFDAと協議してまいります」と述べています。
大塚製薬は、今後も世界中の未解決の医療ニーズを満たすため、患者さんやご家族に貢献できる研究開発を進めてまいります。
参考
トルバプタンの国内展開
トルバプタンは、「水だけを出す利尿薬が欲しい」という医療現場の声を受けて、当社が創製した選択的バソプレシンV2-受容体阻害剤です。ナトリウムなどの電解質の排泄に影響を与えず体内の余分な水のみを出すメカニズムを持つ水利尿薬として「サムスカ」の製品名で、2010年10月に「他の利尿薬で効果不十分な心不全における体液貯留」、2013年9月に「他の利尿薬で効果不十分な肝硬変における体液貯留」の効能・効果で承認を取得しました。
また水利尿作用とは別に、バソプレシンV2-受容体を介したcAMP産生の抑制によりADPKDの腎のう胞の増殖・増大を抑制することから、2014年3月に世界で初めて、難病である「ADPKDの進行抑制」の効能・効果で承認を取得しました。
トルバプタンの海外展開
トルバプタンは2009年に、米国および欧州で低ナトリウム血症の適応症で承認を取得しました。2015年にはADPKD治療薬として欧州、カナダ、韓国等で承認されています。現在、「サムスカ/ジンアーク※」の承認国は世界40カ国以上に拡大しています。
- ADPKD治療薬としての海外製品名