大塚製薬株式会社

医療関連事業
2018年4月25日

大塚製薬創製「JYNARQUE™」 米国初となるADPKD治療薬として販売承認を取得

  • 常染色体優性多発性のう胞腎(ADPKD)は遺伝性疾患で、米国における末期腎不全の原因の第4位。
    「米国製品名:JYNARQUE(ジンアーク、一般名:トルバプタン)」は、ADPKDの成人における腎機能の低下を遅らせる米国での初の治療薬

  • 2つの大規模臨床試験の結果、トルバプタンは病態の進行の速いADPKD患者さんの腎機能低下を遅らせることが示唆された

  • 肝障害のリスクを軽減するため、全ての患者さんにおいて肝機能のモニタリングを実施する

 大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:樋口達夫、以下「大塚製薬」)は、「トルバプタン(米国製品名:JYNARQUE)」が、米国における初めての常染色体優性多発性のう胞腎(ADPKD)の治療薬として米国FDAより、販売承認を取得しました(米国時間4月23日)のでお知らせします。

 トルバプタンの有効性は、2つの重要な大規模臨床試験で検証されました。1年間のREPRISE試験では、主要評価項目である腎機能の指標となる「eGFR(推算糸球体濾過量)」のベースラインから投与終了後フォローアップまでの変化量において、トルバプタン投与群はプラセボ投与群に比べて約35%低下を抑制しました。また、3年間のTEMPO 3:4試験において、トルバプタン投与群は、プラセボ投与群と比較して腎臓の容積の増加率を約50%抑制することが示されました。

 トルバプタンの安全性においては、一部の患者さんで肝臓の状態を示す酵素(ALTおよびAST)が上昇するなどの肝障害のリスクが認められました。この異常値は、トルバプタンを速やかに中断することで回復しましたが、投薬により重篤な肝障害を発症させる可能性があることを示しています。このリスクを軽減する目的でトルバプタン服用にあたっては、最初の1カ月は2週毎に、2~18カ月までは月に1回、その後は3カ月に1回の血液検査をする必要があります。大塚製薬は、米国FDAが承認したリスク評価および軽減戦略(Risk Evaluation and Mitigation Strategies : REMS)を通じてのみトルバプタンを供給し、適切な安全性情報の提供と肝機能に対するモニタリングを全ての患者さんにおいて実施してまいります。
(参照:www.JYNARQUE.com

 大塚製薬代表取締役社長 樋口達夫は、「米国で初となるADPKD治療薬『ジンアーク』の承認により、この難病で悩む患者さんに病気の進行を遅らせる治療が提供できることをたいへん嬉しく思います。本剤の創製と臨床開発に関わった研究者、医師そして患者さんのご協力と努力の賜物と心より感謝申し上げます」と述べています。

 米国の患者団体であるPKD財団CEOのアンディ・ベッツ氏は、「全米のADPKD患者さんに希望を与える歴史的な日となりました。これまで米国で承認されている治療法がなかったこの疾患の最初のマイルストンに加わることができることを喜んでいます。35年間にわたって私たちは一歩ずつこの目標に向かって歩んできました。本日から新たな一歩がスタートします」と述べています。

 大塚製薬は、今後も世界中の未解決の医療ニーズを満たすため、患者さんやご家族に貢献できる研究開発を進めてまいります。

【参考】

常染色体優性多発性のう胞腎(ADPKD)について

ADPKDは遺伝子の変異により両方の腎臓にのう胞(液体が詰まった袋)が無数にできて腎臓が何倍にも大きくなり、腎機能が徐々に低下していく遺伝性の病気です。多くの場合は30~40歳代以降に症状が現れ、血尿、腹痛・腰背部痛、腹部膨満などが見られます。また、腎機能が低下する前から高血圧を合併することが多く、脳動脈瘤や肝のう胞なども高い頻度で合併します。腎機能が低下してくると腎移植または透析が必要となり、60歳までに半数近くの患者さんが末期腎不全にいたると言われています。遺伝性の疾患のなかでも発症頻度が高く約4,000人に1人が患っているとされています(米国では約14万人と推定)。

トルバプタンの国内展開

トルバプタンは、「水だけを出す利尿薬が欲しい」という医療現場の声を受けて、当社が創製した選択的バソプレシンV2-受容体阻害剤です。ナトリウムなどの電解質の排泄に影響を与えず体内の余分な水のみを出すメカニズムを持つ水利尿薬として「サムスカ」の製品名で、2010年10月に「他の利尿薬で効果不十分な心不全における体液貯留」、2013年9月に「他の利尿薬で効果不十分な肝硬変における体液貯留」の効能・効果で承認を取得しました。

また水利尿作用とは別に、バソプレシンV2-受容体を介したcAMP産生の抑制によりADPKDの腎のう胞の増殖・増大を抑制することから、2014年3月に世界で初めて、難病である「ADPKDの進行抑制」の効能・効果で承認を取得しました。

トルバプタンの海外展開

トルバプタンは2009年に、米国および欧州で低ナトリウム血症の適応症で承認を取得しました。2015年にはADPKD治療薬として欧州、カナダ、韓国等で承認されています。現在、「サムスカ/ジンアーク*」の承認国は世界40カ国以上に拡大しています。

*ADPKD治療薬としての海外製品名