大塚製薬株式会社

医療関連事業
2022年4月26日

アイトラッキング(視線追跡)技術を用いた
新規認知機能評価アプリの販売提携契約について

大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:井上眞、以下「大塚製薬」)と株式会社アイ・ブレインサイエンス(本社:大阪府、代表取締役社長:髙村健太郎、以下「アイ・ブレインサイエンス」)は、アイトラッキング(視線追跡)技術を用いた認知機能評価アプリ(開発コード:AiBS-01)について、日本国内における独占販売契約を締結しました。本製品は、薬事承認を取得した認知症スクリーニング検査として日本初のアプリとなる可能性があります。

日本における認知症有病者数は2025年に730万人、2040年には953万人とさらなる増加が予測され*1、認知症施策推進大綱においても早期診断がますます重要になっています。認知症診断の必須検査である神経心理学的検査は、有用性や信頼性も十分確立されており、特にMMSE*2は日本だけでなく、国際的にも広く使用されています。一方で、問診式の検査であるMMSEの実施には約20分の時間を要する*3ことや検査者に専門的な知識や経験が必要とされること、さらには心理的負担が強く、約70%の患者さんが検査に苦痛を感じたという報告*4もあり、より簡便かつ客観性のある検査法が望まれています。

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アイ・ブレインサイエンスが開発を進めている「アイトラッキング式認知機能評価法」はiPadなどのタブレットにインストールした認知機能評価アプリ(AiBS-01)を使用し、画像や映像等に対する視線動向の生体的動作から得られるデータにより、認知機能を非侵襲、簡便、客観的、定量的に判定する新しい手法です。モニター画面に表示される内容に沿って画面を眺めることで、MMSEの評価項目に沿って認知機能を評価します。これにより約3分間で簡便に、ストレスを感じることなく認知機能評価を行うことが可能です。

アイ・ブレインサイエンスは、当該技術を医療機器プログラムとして実用化する取り組みを進めており、2021年12月、厚生労働省に対して医療機器製造販売承認申請を行っています。このたびの契約締結により、大塚製薬は独占的に本アプリの販売を実施し、アイ・ブレインサイエンスに対して契約一時金および薬事・販売マイルストンと売上高に応じたロイヤルティを支払います。

大塚製薬 診断事業部長 大橋達朗は、「大塚製薬は、最重点領域の一つに精神・神経領域をかかげ、新規作用を持つ抗精神病薬などをグローバルに展開しています。本契約により、認知症診断における患者さんや医療従事者などの負担軽減に貢献できると信じております。今後も、デジタル技術の利活用により、大塚製薬の独自のトータルヘルスケアをさらに発展させ、未だ解決されていない医療課題に取り組んでまいります」と述べています。

アイ・ブレインサイエンス 代表取締役社長 髙村健太郎は、「当社は、臨床現場から生まれたアイディアを実現するため、医療機器開発のノウハウを活かし、外部との積極的なアライアンスにより、アイトラッキング式認知機能評価技術の実用化を推進しています。精神・神経疾患領域に強みを持つ大塚製薬と提携することで、本アプリを用いた認知機能評価の裾野を広げ、幅広い医療機関で認知症の早期発見に役立てていただくことを期待しています」と述べています。

【参考】

当該技術は、平成30年度科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業大学発新産業創出プログラム(START)の「視線検出技術を利用した簡易認知機能スクリーニングシステムの開発による社会システムの負荷軽減」(研究代表者:大阪大学武田朱公准教授)プロジェクトの成果を基に、アイ・ブレインサイエンスが医療機器プログラムとしての開発を進めています。

  1. *1「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業)より引用
  2. *2Mini Mental State Examination(認知症のスクリーニングとして使用される神経心理検査)
  3. *3Haubois et al. BMC Geriatrics 2011, 11:59
  4. *4Self-Reported Distress After Cognitive Testing In Patients With Alzheimer's Disease, August 2008

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