大塚製薬株式会社
H. ルンドベックA/S

医療関連事業
2023年9月7日

抗精神病薬「ブレクスピプラゾール」
成人の心的外傷後ストレス障害(PTSD)を対象とした
2つのフェーズ3試験結果速報について

  • 2本のフェーズ3試験のうち、可変用量試験は主要評価項目を達成しましたが、固定用量試験では主要評価項目を達成しませんでした
  • 大塚製薬とルンドベックは今回の結果をさらに解析し、FDAと協議して次のステップを決定します

 大塚製薬株式会社(本社:東京都、以下「大塚製薬」)とH.ルンドベックA/S(本社:デンマーク、コペンハーゲン、以下「ルンドベック」)は、成人の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の効能追加を目的としたブレクスピプラゾールとセルトラリンの併用療法に関する2つのフェーズ3試験の結果速報が得られましたので、お知らせします。

 1つ目の試験(NCT04124614)は、成人のPTSD患者さん416人を対象とした、ブレクスピプラゾール(2~3mg/日の可変用量)とセルトラリン併用療法の有効性、安全性、忍容性を評価する、無作為化二重盲検比較、2群間比較可変用量試験です。2つ目の試験(NCT04174170)は、成人のPTSD患者さん553人を対象とした、ブレクスピプラゾール(2mgまたは3mg/日の固定用量)とセルトラリン併用療法の有効性、安全性、忍容性を評価する、無作為化二重盲検比較、3群間比較固定用量試験です。 

 両試験における主要評価項目は、投与10週目におけるセルトラリン単剤療法に対するブレクスピプラゾールとセルトラリン併用療法のCAPS-5(Clinician-Administered PTSD Scale for DSM-5)総スコアの変化量でした。

 1つ目の可変用量試験では、主要評価項目であるCAPS-5のベースラインからの変化量において、ブレクスピプラゾール2~3mg/日+セルトラリン併用群はセルトラリン単剤群と比較して統計学的な有意差を示しました(p<0.05)。2つ目の固定用量試験ではブレクスピプラゾール2mg/日投与群および3mg/日投与群ともに主要評価項目を達成することができませんでした(p>0.05)。

  全体を通じて安全性、忍容性はこれまで統合失調症や、アルツハイマー型認知症に伴うアジテーション、大うつ病補助療法の臨床試験で得られた結果と一貫性のあるものでした。

 大塚製薬とルンドベックは今後試験結果の解析を進め、PTSD治療におけるセルトラリンとの併用療法としての本剤の有効性および安全性を評価します。本試験の結果は、後日、学術論文として発表される予定です。

 大塚ファーマシューティカルD&Cの上級副社長兼医学責任者 ジョン・クラウスは、「このたびのフェーズ3試験の結果から、ブレクスピプラゾールとセルトラリンの併用療法により、PTSD患者さんに1つ目の試験では明らかな治療効果が示されました。今回の結果をさらに解析し、次のステップに向けてFDAと協議していきます」と述べています。

 ルンドベックの上級副社長兼研究開発責任者 ヨハン・ルスマンは、「PTSDは様々な症状を呈する深刻な精神疾患であり、20年以上にわたりFDAが承認した新しい治療法はありませんでした。今回の開発プログラムは、成人のPTSD患者さんを対象に実施した最大規模の臨床試験です。今後、引き続きデータを分析し、セルトラリンとの併用療法としてのブレクスピプラゾールの可能性を明らかにしていきます」と述べています。

CAPS-5について

 CAPS-5は、DSM-5( Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th Edition )で定義されているPTSDの診断および症状の重症度を評価するためにデザインされた臨床診断面接尺度です。面接は30項目からなり、スコアが高いほど予後が悪いことを示します。

PTSDについて

 PTSDは、心的外傷となる出来事や状況を経験または目にしたことで起こりうる精神疾患です。要因となる出来事の例として、自然災害や重大事故、テロ行為、戦争、暴力、いじめなどがあります。米国では1300万人以上が罹患しており、100人に6人近くが一生のうちにPTSDと診断されるといわれています1。PTSDの症状は一般的に、再体験症状、回避症状、考えや感情の否定的な変化、過覚醒症状に分類され、症状は時間の経過とともに変化し、人によっても異なります。

ブレクスピプラゾールについて

 新規抗精神病薬「レキサルティ®(一般名:ブレクスピプラゾール)」は、大塚製薬が創製した独自の薬理作用を有する化合物で、ルンドベック社と共同開発しました。2015年に米国で「成人の大うつ病補助療法」および「成人の統合失調症」の2つの効能で承認され、2023年には「アルツハイマー型認知症に伴うアジテーション」の効能が追加されました。現在、統合失調症治療薬として、約60の国・地域で展開しています。

  1. *1
  2. U.S. Department of Veteran Affairs. PTSD: National Center for PTSD. https://www.ptsd.va.gov/understand/common/common_adults.asp