大塚製薬株式会社
眼科遺伝子治療薬「4D-150(抗VEGF薬)」に関するライセンス契約を締結
大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:井上 眞、以下「大塚製薬」)は、4D Molecular Therapeutics, Inc.(本社:米国カリフォルニア州、CEO:David Kirn, MD、以下「4DMT社」)が新生血管型加齢黄斑変性(nAMD)*1および糖尿病黄斑浮腫(DME)の治療薬として開発中の「4D-150」について、日本を含むアジア・オセアニア地域における独占的開発販売権を4DMT社から取得するライセンス契約を締結しましたので、お知らせします。
加齢黄斑変性は、高齢者における視力障害の主要な原因の一つです。日本人では、50歳以上の人口の約1.3%が罹患しているとされ、そのうち大部分を占める新生血管型は約1.2%に達します。国内の推定患者数は約69万人に上ると報告されています*2。特に新生血管型では、網膜の中心部である黄斑に脆弱な新生血管が形成され、そこから血液や血漿成分が漏出することで出血や浮腫を引き起こします。治療が遅れると、網膜に深刻な障害をもたらす可能性があります。近年では、この新生血管の形成に関与する血管内皮増殖因子(VEGF:vascular endothelial growth factor)の働きを抑制する抗VEGF薬を、患者さんの硝子体内に約4〜16週間ごとに投与する方法が、標準的な治療法として確立されています。しかしながら、この治療は長期間にわたり継続することが困難であり、その結果、病態の進行を十分に抑制できないという課題が指摘されています。そのため、より長期的に効果が持続する抗VEGF薬の開発が求められてきました。
4DMT社が創製した4D-150は、新規のアデノ随伴ウイルス(AAV: Adeno-associated viruses)ベクターを用いることで網膜細胞に複数の治療用遺伝子を導入し、より広範に4種類のVEGFファミリーを抑制するとともに、一度の硝子体内投与により長期にわたってその効果を持続させることを目的とした遺伝子治療薬です。現在までの臨床試験では最長で130週間の効果の持続が確認されています。
今回の契約に基づき、大塚製薬は4DMT社から、nAMDおよびDMEを含む網膜血管疾患に対する4D-150の独占的な開発・販売権を、日本を含むアジア・オセアニア(APAC)地域において取得します。大塚製薬は、ライセンス対象地域におけるすべての承認申請および商業化活動を主導します。一方、4DMT社は、APAC地域を含む全世界におけるすべてのフェーズ3試験を引き続き主導します。nAMDを対象としたグローバルフェーズ3試験「4FRONT-2」は、年内にAPACで、2026年1月には日本でも臨床試験施設の追加が行われる予定です。
大塚製薬は4DMT社に対して契約一時金85百万米ドルに加え、それぞれの開発目標達成および売上高の達成目標に応じたマイルストーンを支払うとともに、売上高に応じた段階的ロイヤルティを4DMT社に支払います。なお、今後の特定の研究開発費については大塚製薬が負担します。
大塚製薬 代表取締役社長 井上眞は、「大塚製薬は、自社研究、外部研究を問わず、日本を含む世界の患者様のWell beingにつながる新たな価値創造を行ってきました。今回取り組むnAMDおよびDMEは、視野の欠損や視力の低下を来すことで、日常生活に深刻な影響を及ぼす疾患であり、依然としてアンメット・メディカル・ニーズの高い領域です。現在の標準療法は長期的な治療継続が難しく、今回4D-150を日本・アジア・オセアニア市場に導入することで、生涯に一度の投薬により視力低下を防ぐことを目指します」と述べています。
4DMT社CEOのDavid Kirnは、「網膜血管疾患の治療を前進させるうえで、世界的なリーダーシップと専門知識を持つ大塚製薬と提携できることを大変嬉しく思います。この協業は、当社のグローバル戦略を強化するだけでなく、nAMDやDMEの有病率が非常に高いAPAC地域における大きな未充足ニーズにも対応するものです。大塚製薬が有する地域に根ざした知見を活用することで、4D-150の開発とアクセスを加速させ、治療負担の軽減や視力の維持を目指す革新的で持続的な治療法を必要とする患者さんのもとへ、より広く届けていきたいと考えています」と述べています。
- 新生血管型加齢黄斑変性の診療ガイドライン nvAMD.pdf
- 難病情報センター 加齢黄斑変性(平成23年度) https://www.nanbyou.or.jp/entry/2434
新生血管型加齢黄斑変性(nAMD)および糖尿病黄斑浮腫(DME)について
新生血管型加齢黄斑変性(neovascular AMD:nAMD)は、これまで滲出型加齢黄斑変性(wet AMD)と分類されていました。新生血管型加齢黄斑変性は、脈絡膜新生血管が網膜色素上皮の下、あるいは網膜と網膜色素上皮の間に侵入することで、網膜に障害を引き起こす疾患です。これらの異常な血管は、正常な血管とは異なり、血液成分を漏出させたり、破裂したりすることがあります。血液成分の漏出は、網膜浮腫や網膜下液の原因となります。
糖尿病黄斑浮腫は、糖尿病網膜症の合併症として発症するもので、黄斑部付近における毛細血管瘤の多発や、血液成分が漏出することにより、網膜浮腫を引き起こします。この疾患は、糖尿病網膜症の進行度にかかわらず発症し、視力の低下を招くことがあります。
糖尿病網膜症および新生血管型加齢黄斑変性は、日本において視覚障害の原因疾患として、それぞれ第3位および第4位に位置づけられています。
4D Molecular Therapeuticsについて
4DMTは、眼科および呼吸器疾患などの大規模疾患を対象に、革新的な遺伝子治療薬の開発に取り組む後期臨床段階のバイオテクノロジー企業です。独自の「Therapeutic Vector Evolution」技術により、指向性進化を活用したカスタマイズAAVベクターを創出し、疾患ごとに最適化された治療薬の設計・開発を行っています。主力製品候補の4D-150は、1回の硝子体内注射で抗VEGF薬を長期間産生するよう設計された治療薬です。
詳細はコーポレートサイトhttps://4dmoleculartherapeutics.com/をご覧ください。
大塚製薬について
大塚製薬は、一人ひとりの可能性に向き合うトータルヘルスケアカンパニーです。"Otsuka-people creating new products for better health worldwide"の企業理念のもと、未充足の医療ニーズに新たな価値を提供する医療関連事業と、科学的根拠をもった独創的な製品やサービスにより日々の健康維持・増進をサポートするニュートラシューティカルズ関連事業を通じて、人々のウェルビーイングの実現に向けて取り組んでいます。 詳細はコーポレートサイトwww.otsuka.co.jp をご覧ください。