大塚製薬株式会社
世界初のAPRIL抗体 「VOYXACT®(シベプレンリマブ)」が 成人のIgA腎症治療薬として米国FDAより迅速承認を取得
- VOYXACTは、フェーズ3(VISIONARY)試験の中間解析において、投与9ヵ月後時点で、タンパク尿改善の指標であるuPCR(尿蛋白/クレアチニン比)をプラセボ群と比較して、51.2%有意に減少させた(P<0.0001)。安全性はプラセボと同等であり、良好な忍容性が確認されている。
- 本剤は、APRIL(A-Proliferation-Inducing Ligand)を標的とすることで、病原性ガラクトース欠損IgA1(Gd-IgA1)を低下させる。Gd-IgA1の低下はタンパク尿の改善と直接関連している。
- タンパク尿の減少は腎機能悪化遅延と相関する代替マーカーであり、本剤の臨床試験において迅速承認を支持する主要なエンドポイントとして用いられた。
- VOYXACTは自己投与が可能な皮下投与のプレフィルドシリンジ製剤で、患者さんが4週間ごとに在宅投与できる利便性を提供。
- IgA腎症は、進行性の自己免疫性慢性腎臓病であり、20~40歳の成人に発症する場合が多い。現在の標準治療では多くの患者さんが生涯のうちに末期腎不全に至る可能性がある。
大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:井上 眞、以下「大塚製薬」)と米国子会社であるOtsuka Pharmaceutical Development & Commercialization, Inc.(所在地:米国ニュージャージー州・プリンストン、以下「OPDC」)は、11月25日(米国時間)、「VOYXACT®(一般名:シベプレンリマブ)」が、"進行リスクのある成人のIgA腎症におけるタンパク尿の減少"の効能で、米国食品医薬品局(FDA)より迅速承認を取得しましたので、お知らせします。なお、本剤については処方薬ユーザーフィー法(PDUFA)による優先審査が認められていました。
VOYXACTは、APRIL(A-Proliferation-Inducing Ligand)を標的とする世界初かつ唯一の治療薬であり、IgA腎症の発症と進行において重要な役割を果たしているAPRILの作用を選択的に阻害することで、病原性ガラクトース欠損IgA1(Gd-IgA1)の産生を抑制します。自己投与が可能な皮下投与のプレフィルドシリンジ(薬剤充てん済み注射器)製剤で、患者さんが4週ごとに在宅投与できる利便性を提供します1,2,3,4。
本承認は、フェーズ3(VISIONARY)試験の中間解析に基づいています。シベプレンリマブ投与9ヵ月後(n=320)の24時間尿におけるuPCR(尿蛋白/クレアチニン比)のプラセボ群と比較した変化率は、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある51.2%(P<0.0001)の減少を示しました。タンパク尿の減少は腎機能悪化遅延と相関する代替マーカーであり、IgA腎症の臨床試験において迅速承認を支持するエンドポイントとして使用されています5。
本適応は、タンパク尿の改善に基づき、迅速承認制度により承認されています。VOYXACTがIgA腎症の患者さんにおいて、長期的に腎機能の低下を抑制するかどうかは、まだ確立されていません。進行中のフェーズ3(VISIONARY)試験では、VOYXACTが疾患の進行を抑制するかどうかを、eGFR(推算糸球体濾過率)の24ヵ月時点での低下を指標として評価します。VISIONARY試験において臨床的有益性が検証されることが、本適応症に対する継続的な承認の条件となる可能性があります。eGFRのデータは2026年初頭に得られる予定であり、FDA承認を裏付けるために使用される見込みです。
OPDCの上級副社長兼医学責任者John Krausは、「VOYXACTは、IgA腎症の患者さんが直面する進行性で治療が困難な疾患に対する新たな標的療法です。本剤は、標的メカニズムに基づく高い有効性と安全性プロファイル、さらに4週に1回の投与という利便性を兼ね備えており、患者さんに新たな治療選択肢を提供します。私たちは、IgA腎症治療における新たな選択肢の必要性を強く認識しています。臨床試験に継続的にご参加いただいている患者さんおよび医療関係者の皆様に、心より感謝申し上げます」と述べています。
アラバマ大学バーミンガム校腎臓内科教授であり、VOYXACT VISIONARY試験の治験責任医師兼運営委員会共同議長を務めるDana Rizk博士は、「VOYXACTは、APRILの活性を阻害し疾患進行リスクを有する原発性IgA腎症の成人患者さんに対する初の治療薬です。本剤がIgA腎症患者さんの予後改善に寄与することを期待しています」と述べています。
IgA腎症基金(IgA Nephropathy Foundation)の共同創設者であるBonnie氏とEd Schneider氏は、「VOYXACTの迅速承認の知らせを聞き、大変嬉しく思います。IgA腎症を抱える患者さんにとって新しい治療選択肢があることは重要です。理事会、運営陣、そして私たちが支援するコミュニティを代表して、この新たな治療選択肢の市場導入に尽力された患者さんおよび専門家の皆様に心より感謝申し上げます」と述べています。
【フェーズ3(VISIONARY)試験について】
VISIONARY(NCT05248646)試験は、これまで最大規模の成人IgA腎症患者さんを対象とした多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験です。標準治療(最大耐用量のACE阻害薬またはARB に、必要に応じてSGLT2阻害薬を投与)を受けている成人のIgA腎症患者さん510名を対象に、シベプレンリマブ400mgを4週ごとに皮下投与し、プラセボ群と比較して評価することを目的としています6。
生検でIgA腎症と診断され、uPCR(尿蛋白/クレアチニン比)≥0.75g/gまたは尿中タンパク質≥1.0g/日、eGFR≥30 mL/min/1.73 m²、さらにスクリーニング前3ヶ月以上安定用量の支持療法(ACE阻害薬またはARB、SGLT2阻害薬併用可)を受けている患者さんが、4週間ごとのシベプレンリマブ投与群またはプラセボ群に無作為に割り付けられ、試験期間中も支持療法を継続しました6。
主要評価項目は、ベースラインと比較したシベプレンリマブ投与9ヵ月後の24時間尿におけるuPCR(尿蛋白/クレアチニン比)です。中間解析(n=320)では、シベプレンリマブ投与9ヵ月後の24時間尿におけるuPCR(尿蛋白/クレアチニン比)のプラセボ群と比較した変化率は、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある51.2%(P<0.0001)の減少を示しました。タンパク尿の減少は腎機能悪化遅延と相関する代替マーカーであり、IgA腎症の臨床試験において迅速承認を支持するエンドポイントとして使用されています。
本試験は現在も進行中であり、主要な副次評価項目は、24ヵ月間eGFR(推算糸球体濾過量)slopeの年間変化率は2026年に得られる予定です。有害事象については、シベプレンリマブ投与群とプラセボ投与群で報告されたうち、シベプレンリマブ投与群の10%以上で発生し、プラセボ投与群より頻度が高かったものは感染症(49% vs. 45%)および注射部位反応(24% vs. 23%)でした。最も頻度の高い感染症は上気道感染症(15% vs. 14%)で、最も頻度の高い注射部位反応は注射部位紅斑(13% vs. 12%)でした。
【VOYXACT(一般名:シベプレンリマブ)について】
シベプレンリマブは、大塚製薬の子会社であるビステラ社が創製し、APRILに選択的に結合することでその活性を阻害するモノクローナル抗体です。シベプレンリマブは、APRILを阻害することで、Gd-IgA1の産生を抑え、IgA腎症における腎障害の進行や末期腎不全への進行を遅らせることが期待されます3,4,5,6。
【IgA(免疫グロブリンA)腎症とAPRILについて】
IgA(アイ・ジー・エー)腎症は、通常は20〜40歳代の成人に比較的多く発症します。免疫複合体が腎臓に沈着し、進行性の腎機能低下を引き起こし、最終的には末期腎不全にいたる可能性があることから、患者さんに大きな負担をもたらします。腎機能障害の進行を抑制する各種の治療が行われているものの、この疾患の根本原因に対処する治療法には未充足の医療ニーズが存在します。
APRILは、腫瘍壊死因子(TNF:tumor necrosis factor)13番目のファミリーに属するサイトカインで、IgA腎症の発症と進行に深く関与しています。APRILは、B細胞のIgA産生細胞へのクラススイッチを促進し、IgA腎症においては腎臓で免疫複合体を形成する病原性の高いGd-IgA1の産生を誘導します7,8,9。
大塚製薬について
大塚製薬は、一人ひとりの可能性に向き合うトータルヘルスケアカンパニーです。"Otsuka-people creating new products for better health worldwide"の企業理念のもと、未充足の医療ニーズに新たな価値を提供する医療関連事業と、科学的根拠をもった独創的な製品やサービスにより日々の健康維持・増進をサポートするニュートラシューティカルズ関連事業を通じて、人々のウェルビーイングの実現に向けて取り組んでいます。 詳細はコーポレートサイトwww.otsuka.co.jp をご覧ください。
- Mathur M, Barratt J, Suzuki Y, et al. Safety, Tolerability, Pharmacokinetics, and Pharmacodynamics of VIS649 (Sibeprenlimab), an APRIL-Neutralizing IgG2 Monoclonal Antibody, in Healthy Volunteers. Kidney Int Rep. 2022;7(5):993-1003.
- Chang S, Li XK. The Role of Immune Modulation in Pathogenesis of IgA Nephropathy (nih.gov)
- Cheung CK, Barratt J, Liew A, Zhang H, Tesar V, Lafayette R. The role of BAFF and April in IGA nephropathy: Pathogenic mechanisms and targeted therapies. Frontiers in nephrology. February 1, 2024.
- Mathur M, Barratt J, Chacko B, et al. A Phase 2 Trial of Sibeprenlimab in Immunoglobulin A Nephropathy Patients. NEJM. 2023 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2305635
- Thompson A, Carroll K, Inker LA, et al. Proteinuria Reduction as a Surrogate End Point in Trials of IgA Nephropathy. Clin J Am Soc Nephrol. 2019;14(3):469-481.doi:10.2215/CJN.08600718
- Perkovic, et al. Evaluating Sibeprenlimab in IgA Nephropathy - Rationale and Baseline Data from the VISIONARY Trial. Kidney International Reports. https://doi.org/10.1016/j.ekir.2025.09.031
- Pitcher, D. Braddon, et. al Long-term outcomes in IGA nephropathy. Clinical journal of the American Society of Nephrology: CJASN. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37055195/.
- Lai K. Iga nephropathy. Nature reviews. Disease primers. 2016
- Cheung, Chee Kay & Boyd, JKF & Feehally, J. (2012). Evaluation and management of IgA nephropathy. Clinical Medicine. 12. s27-s30. 10.7861/clinmedicine.12-6-s27.