大塚製薬株式会社

医療関連事業
2025年12月19日

フェニルケトン尿症(PKU)治療薬「JNT-517」のフェーズ3試験を開始

  • 「JNT-517(一般名:repinatrabit)」は、大塚製薬が開発中の経口低分子化合物であり、米国食品医薬品局(FDA)から、フェニルケトン尿症(PKU)の治療薬候補化合物として、オーファンドラッグ指定および小児希少疾患医薬品指定を取得している。
  • PKUは遺伝性疾患であり、約24,000人に1人の割合で発症すると推定されている。現在の標準治療では本疾患に対する未だ満たされないニーズがあり、新しい治療選択肢が求められている。

大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:井上 眞、以下「大塚製薬」)およびその米国子会社のOtsuka Pharmaceutical Development & Commercialization, Inc.(所在地:米国ニュージャージー州・プリンストン、以下「OPDC」)は、フェニルケトン尿症(PKU)の治療薬候補化合物である「JNT-517(一般名:repinatrabit)」のグローバルフェーズ3(PheORD)試験を開始したことをお知らせします。本試験では、PKU患者さんを対象に、repinatrabitを 1日2回経口投与し、その有効性、安全性および忍容性を評価します1。米国では最初の患者登録が開始されており、今後、日本を含む複数の国で実施される予定です。(https://www.clinicaltrials.gov/study/NCT06971731

本化合物はPKUに対して、米国食品医薬品局(FDA)からオーファンドラッグ指定および小児希少疾患医薬品指定を、欧州医薬品庁(EMA)からもオーファンドラッグ指定を受けています。また、EMAからは高フェニルアラニン血症に対する優先医薬品指定(PRIME:PRIority MEdicines)を受けています。

フェニルケトン尿症(Phenylketonuria:PKU)は、常染色体劣性遺伝形式を示す遺伝性疾患です。先天性のアミノ酸代謝異常症で、フェニルアラニンという必須アミノ酸をチロシンに変換する酵素(フェニルアラニン水酸化酵素:PAH)の働きが生まれつき弱い、または補酵素(テトラヒドロビオプテリン:BH4)の生合成に関わる酵素に異常があるために発症します。この結果、血液中にフェニルアラニンが蓄積し、脳の発達や機能に悪影響を及ぼす疾患です。発生頻度は世界で年間約24,000人に1人、米国では約10,000人に1人と推定されています2。食事中のタンパク質を制限してフェニルアラニン摂取を抑え、不足するタンパク質やビタミン、ミネラルを治療用ミルクで補う食事療法や、PAHやBH4を補う薬物療法が行われています。しかし、これらの治療を行っても血中フェニルアラニン濃度を十分に管理できない場合があり、PKUに対するより有効な治療法の確立が望まれています3

JNT-517(repinatrabit)は、2024年9月に大塚製薬の完全子会社となったジュナナ社が、独自の革新的な創薬アプローチであるRAPIDプラットフォームを利用して創製した開発中の経口低分子化合物で、腎臓におけるアミノ酸の再吸収を制御するタンパク質の機能を阻害します。フェーズ1b/2試験の中間解析データでは、疾患の重症度、既存治療への反応性に関わらず、少なくとも投薬後1週間から血中フェニルアラニン低下効果が観察されています。150mg群(1日2回、経口投与)では、投与2~4週間後の血中フェニルアラニンの平均値は投与前から約60%低下しました(p=<0.0002 vs. placebo)。重篤な有害事象は観察されず、忍容性と安全性が確認されており、PKUに対するファースト・イン・クラスの薬剤になる可能性があります4,5

OPDCの上級副社長兼医学責任者John Krausは、「タンパク質摂取量を厳格に制限する食事療法や薬物治療を行っても、多くのPKU患者さんはフェニルアラニンの管理に課題を抱え続けており、実行機能障害、気分調節障害、その他の精神健康上の問題といった症状に直面しています。また、食事制限に関する社会的孤立感や偏見など、社会的・情緒的な課題もあります。私たちは、世界中のPKU患者さんの未解決なニーズに取り組み、治療の画期的な進展に貢献すべく尽力してまいります」と述べています。

大塚製薬株式会社について

大塚製薬は、一人ひとりの可能性に向き合うトータルヘルスケアカンパニーです。"Otsuka-people creating new products for better health worldwide"の企業理念のもと、未充足の医療ニーズに新たな価値を提供する医療関連事業と、科学的根拠をもった独創的な製品やサービスにより日々の健康維持・増進をサポートするニュートラシューティカルズ関連事業を通じて、人々のウェルビーイングの実現に向けて取り組んでいます。 詳細はコーポレートサイトwww.otsuka.co.jp をご覧ください。

  1. 1Otsuka Pharmaceutical Development & Commercialization, Inc. "A Study to Evaluate the Safety and Efficacy of JNT-517 in Participants With Phenylketonuria (PKU)." Clinicaltrials.Gov, clinicaltrials.gov/study/NCT06971731.
  2. 2Rocha JC, MacDonald A. Dietary intervention in the management of phenylketonuria: current perspectives. Pediatric Health Med Ther. 2016 Dec 1;7:155-163. doi: 10.2147/PHMT.S49329. PMID: 29388626; PMCID: PMC5683291
  3. 3Hillert A, Anikster Y, Belanger-Quintana A, Burlina A, Burton BK, Carducci C, Chiesa AE, Christodoulou J, Đorđević M, Desviat LR, Eliyahu A, Evers RAF, Fajkusova L, Feillet F, Bonfim-Freitas PE, Giżewska M, Gundorova P, Karall D, Kneller K, Kutsev SI, Leuzzi V, Levy HL, Lichter-Konecki U, Muntau AC, Namour F, Oltarzewski M, Paras A, Perez B, Polak E, Polyakov AV, Porta F, Rohrbach M, Scholl-Bürgi S, Spécola N, Stojiljković M, Shen N, Santana-da Silva LC, Skouma A, van Spronsen F, Stoppioni V, Thöny B, Trefz FK, Vockley J, Yu Y, Zschocke J, Hoffmann GF, Garbade SF, Blau N. The Genetic Landscape and Epidemiology of Phenylketonuria. Am J Hum Genet. 2020 Aug 6;107(2):234-250. doi: 10.1016/j.ajhg.2020.06.006. Epub 2020 Jul 14. PMID: 32668217; PMCID: PMC7413859.
  4. 4Jnana Therapeutics. Efficacy and safety outcomes of JNT-517, a first-in-class SLC6A19 inhibitor for phenylketonuria (PKU): Phase 1/2 study results presented at the Society for the Study of Inborn Errors of Metabolism (SSIEM) 2024 Annual Symposium, Porto, Portugal. Data demonstrated statistically significant mean blood phenylalanine reduction and favorable safety profile with JNT-517 treatment.
  5. 5Cary Harding, Nicola Longo, Andreu Viader, Toby Vaughn, Fernanda Leal-Pardinas, Elaina Jurecki, Markey McNutt, Ania Muntau, Rani Singh, Joel Barrish, George Vratsanos, Haoling Weng, John Throup, O01: Efficacy and safety outcomes of JNT-517, a first-in-class SLC6A19 inhibitor, in adults with phenylketonuria: A randomized study, Genetics in Medicine Open, Volume 3, Supplement 2, 2025, 101964, ISSN 2949-7744, https://doi.org/10.1016/j.gimo.2025.101964.