大塚製薬株式会社

医療関連事業
2025年5月8日

大塚製薬 学校法人慶應義塾と共同研究契約を締結
‐精神展開剤の社会実装に向けた基盤整備のための産学連携-

大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:井上眞、以下「大塚製薬」)は、5月7日、学校法人慶應義塾(所在地:東京都港区、塾長:伊藤公平)と、精神展開剤の社会実装に向けた基盤整備のための共同基礎研究(非臨床研究)契約を締結しましたので、お知らせします。

うつ病、不安症、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対する従来の標準治療(抗うつ薬、増強療法、認知行動療法など)は、治療効果と再燃予防効果が十分ではなく、多くの患者さんとご家族が、病状とそれに付随する社会機能の低下に苦しんでいます。経済的かつ社会的な損失も甚大であり、難治性精神疾患に対する新たな治療法の開発が強く望まれている中、新たな作用機序を持つ治療法として注目されているのが精神展開剤です。その一つであるシロシビンはセロトニン5-HT2A受容体アゴニスト作用を有し、強力かつ即効性のある抗うつ効果が確認され、さらに1-2回の投与により長期的な効果持続(約6~12カ月)が海外で実施された臨床試験結果で報告されています*1,2

精神展開剤による治療法は、現在、米国ではブレークスルーセラピーの指定を受けて複数の製薬企業でフェーズ3試験が実施中であり、欧州においてもフェーズ2試験が行われています。一方、日本では、精神展開剤の臨床試験は実施されておらず、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の内田裕之教授を中心に、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の障害者対策総合研究事業(精神障害分野)における研究助成金を受けた小規模な特定臨床研究が実施されているに留まります。日本国内で精神展開剤を患者さんに安全かつ適切に届けるためには、下記に掲げるような社会実装に向けた多くの課題を解決しなくてはなりません。

<精神展開剤の社会実装に向けた主な課題>

・ 精神展開剤が持つ治療効果を最大化するための最適な臨床試験の設計

・ 精神科医・心理士の専門家育成システムの構築および実施医療機関の体制整備

・ 精神展開剤を使用することに関する法的・倫理的課題および薬事規制への対応

・ 精神展開剤に対する社会的な偏見や誤解を是正するための公共啓発を通じた知識の普及

大塚製薬と慶應義塾大学では、海外先行で開発されている精神展開剤を日本の患者さんに将来届けるため、精神展開剤の開発方針の検討、治療マニュアルとガイドラインの策定、専門家育成プログラムの開発、法的・倫理的課題への対応、広報活動と公共啓発の展開、企業連携と知的財産戦略の推進をこのたびの共同基礎研究の開発項目に掲げました。両者は、精神展開剤の臨床応用を目指し、国内の精神疾患治療の新たなスタンダードを確立するために、解決すべき課題に取り組んでまいります。

  • *1Gukasyan N et al. J Psychopharmacol. 2022;36:151-158
  • *2Carhart-Harris RL et al. Lancet Psychiatry. 2016;3:619-627; Goodwin G et al. N Engl J Med. 2022;387:1637-1648)